今回ご紹介するのは
年末に買いだめしていた中の一冊
『夜の真偽を』
著者:マイケル・コックス
イギリス出版史上 新人作家に対して支払われた
最高額をもって落札された「驚異のデビュー作」
だそうです
なんと構想30年
スンゴイ新人ですねえ
この物語の主人公エドワードも ものすごい執念です
突然見ず知らずの男を殺し
「自分は行える」というおっかない始まりは
ドストエフスキーか?
教会関係者が発見した書物を紹介するという
構成はエーコの流れか?
などと勝手に思いながら
読み始めると
それほど読んだ事はないんですが
前にも感じたイギリス人現代作家特有でしょうか
物語の進行が行ったり来たりと
わざと複雑にしているような印象はありますが
面白いです
くだくだしい書きっぷりにいつの間にか引き込まれます
これも前に読んだイギリスの小説と共通だったのは
高貴な生まれの主人公が
複雑ないきさつで身分を失い
それを知らずに育った本人がひょんなことからそれを知り
またその事に関連して自分を陥れたヤツに
長ーい時間をかけて復讐を遂げる
その間の重苦しい雰囲気をじっとりと読ませてくれます
時代設定は1800年代前半から中盤
著者の歴史や文学・芸術に関する博学と
豊かな表現はすごいと思うのですが
悲しいかなワタシ自身はイギリスの歴史に関して
ホトンド知識を持ち合わせていず
「も少し知っていたらもっと面白いのになあ・・」
と思いながら読んでました
読み終わって
一息つきながら物語振り返ると
理由はともあれ最終的な
殺人のきっかけがこれか?
それをここまで執念深くやるのかあ・・・
構想30年の作者の執念がそうさせたのかなあ・・・
気になる方はご一読を
このコーナーのUPも久しぶりです
今回ご紹介するのはこちら
『小説 フランス革命』(全12巻)
著者:佐藤 賢一
この前まとめ買いした広範の6冊をようやく読み終わりました
まず言えるのは
もう少し字数・行間を詰めれば
半分位の冊数で行けると思います・・・
読みやすさ優先か??
フランス革命と言えば
18世紀
バスティーユ監獄が襲撃され
ルイ16世とマリー・アントワネットがギロチンで殺されて
王政が終わりを告げた
くらいの知識しか持っていなかったワタシ(お恥ずかしい・・)
小説という読みやすい形で歴史をしることができるので
歴史小説というものも結構好きです
(当然ものにもよりますが)
ただ、こういうものの感想というか
紹介すると言う事になると
話が長い分何を書けばいいのかいつも困ります・・・
国のとんでもない財政危機
物価の高騰を招いた王族・貴族・ブルジョワに対する
反感に当時普及し始めていた啓蒙思想が輪をかける形で
きっかけが生まれて勃発した
「革命」
王政を打倒して共和制を確立しても
対外的には戦争を起こして周辺諸国を敵に回し
国内も反乱やら相次ぐ蜂起また蜂起
最初は左派とされたものがさらに左よりの一派が出てくるといつの間にか右になり
極左のジャコバン派をサン・キュロット(下層民の階級の人々)が支持し権力を掌握
ロベスピエールの
「徳の政治を行うには、恐怖が必要だ」
というわかるようなわからないような理屈で
ダントンやデムーランというもともとジャコバン派だったはずなのにいつの間にか右と見なされていた
要は意見思想のかみ合わない人たちを次々に「粛清」
ギロチン台送りです
「恐怖政治」
まともな裁判すら行う必要なしと
なんと法律で定めひたすら殺して恐怖を与え
理想の国家を目指したロベスピエール
サン・ジュストに動かされてほぼ独裁者になったロベスピエール
矛盾が多すぎるのは後から知るワタシ達の見かたなのでしょうか
それでも彼は貧しい民衆が救われる社会を
「精神の革命」を教育で実現すべく
行動してたはず
なのに
最終的にはその民衆に罵倒されながら
自殺未遂ではずれた顎をさらしながら
ギロチンの露と消えます
次々と登場する民衆の指導者
そのたびに振り子のように振れる民衆の意志
昨日までの味方は今日の敵
今日までの英雄も明日はギロチン台にかけられる
どうしたってこれを満足させるなんて無理
とは あきらめずに連綿と積み重ねて今の世界になっているんでしょうね
「革命」の精神そのもの
と本編の中で謳われたロベスピエールが殺されたところで
物語は終わっています
その後はあのナポレオンへと続き
また王政復古を迎え・・
とフランスはまだまだ平和すら得られない時代が続きます
このフランス革命はその後の民主主義・共産主義・社会主義なんかの大元には間違いないですよね
日本もそうですが
こういう血塗られた時代を踏み台にして現代に生きている
という事は時折考えてみていいと思います
平和だから幸せとは言えないかもしれませんが
いつ殺されるかわからないよりはましですよね
などと言えるのも平和な時代に生きられているからこそ・・・
「歴史とは世界精神の歩み行きである」
いつも思い出すヘーゲルの言葉です。。。
今回も世界史の本です
『世界の歴史』
著者:マンフレッド・マイ
今回の著者はドイツ人
前回の『若い読者のための世界史』
と前半部分はほぼ同じような内容なのですが
同じ出来事を書くにしても
著者によって微妙に違うのが面白いですね
今回の著者は現在も活躍中の人で
最新版は2005年出版だそうです
当然9.11やその後のアラブ・パレスチナ情勢にも
触れられています
今までワタシの歴史に対する興味は
近代までのヨーロッパに関する事にかなり集中していましたが
この本で詳しく取り上げられている
アメリカの独立前後の話
第1次大戦前後からのロシアからソビエト連邦へ
共産主義国の成り立ち
イスラエル建国やその後のパレスチナ問題
第2次大戦を経て西側諸国が勝ち
冷戦に入り自分たちの陣営に都合がいいように
世界を分割
などなど
このろくでもない西欧諸国たちが築いた
ろくでもない歴史の上に成り立っている
今の私達のこの世界
なぜこんな事になっているのだろう??
と根本的に系統立って
もっと知りたい気にさせられました
それこそざーっくりとした事は誰でも
おぼろげには知っているはずの事ばかりなのですが
こうして改めて通史で見てみると
自分の知っていると思っていたのが
ごくごく断片のそれこそおぼろげな知識ばかり
なのを自覚させられます
身近な近・現代に興味をそれほど示さなかったのはなぜか?
と自分に問いかけてみたくなります
ワタシ的にはおそらく
時代が近い分そのおぼろな知識にリアリティーがありすぎて
目を伏せながらいたように思います
何しろろくでもないですから・・・
ま、近代以前もろくでもないんですけどね・・
それでもやっぱり知らずに済ますわけにはいかない気になってきてます
ボチボチとでもこのあたりも読んでいこうと思っています。。。
こんばんは
朝夕はすっかり秋の気配ですね
秋の夜長はやっぱり読書でしょう
と思いつつも
落ち着きのない生活のせいか
集中力も興味もなかなか持続せず
1冊の本を読み切ることのできない事が
多くなっていましたが
なんとか読み終えたのがこの本
『若い読者のための世界史』
著者:エルンスト・H・ゴンブリッチ
ひと月ほど前に本屋行ってまとめ買いして
机の上に積んであったモノのなかの一冊
本屋でぷらぷらしてて
「今は歴史の気分かなあ・・」
と思いつつ
以前から歴史のある一時代や出来事を
取り上げたものではなく
どちらかというと俯瞰的というか
通史的なものが読んでみたいと思っていて
手に取ってみたのがこの本でした
決して若くはないんですけどね(笑
世界史をザーと眺めるには多分
ちょうどいいのではないかと思ったんです
確かに語り口調で語られているところや
言葉を選んで簡潔にすすめられていて
わかりやすいと言えばわかりやすいのですが
さすがに少し物足りない感じも否めません・・・
でも、もちろん要所要所は押さえられていて
それこそ若い人や少し歴史に興味を持ち始めたけど
何から読めばいいのかな?
みたいな人にはお勧めです
原子時代から始まって
各国の文明の草創期・発展期・終焉
発明・発見そしていつの時代も繰り返される戦争
そのえげつなさに何とかオブラートをかぶせて
若者が幻滅しすぎず
歴史をしっかり見つめられるようにという
配慮された語り口がいいですね
この本が面白そうだと思って手に取った
もう一つの理由は
最初に出版されたのが1935年
とうの昔に絶版されていたものを
友人に再度出版したいと言われたのが
なんと50年後の1985年
そうこの本が出版されたのは
第二次大戦以前なので
第一次大戦の記述で終わっているんです
そして最後には
「50年後のあとがき」
と題してその間の歴史認識の移り変わりや
自分の50年間を経験と反省とともに振り返り
戦争を繰り返し
さらにひどくなった世界を冷静に見つめ
そしてそれでも世界は努力するに値する
希望は持てると繰り返します
(著者はユダヤ人です)
この本が再出版されてからさらに28年
こういう本を読んで
世界の歴史自分の歴史を
足元に見ながら
どんな未来を夢見ましょうか・・・
こんばんは
とーってもご無沙汰してしまいました
飛ぶように過ぎていく日々
皆様いかがお過ごしでしょうか?
最近ワタシは例によって「寝落ち」するばかりで
なかなか本を読破出来ずにいましたが
書斎を眺めていて懐かしく手に取った本がこちら
『帰ってきたソクラテス』
著者:池田晶子
ソクラテスと言えば
対話で哲学を語った古代ギリシャの哲学者として
有名ですが
このソクラテスの思考を使ってというか
ソクラテスになりきって
著者がいろんな登場人物と
時事問題やら宗教について
はたまた家庭生活まで様々な対話
を行っていくという内容です
軽やかな語り口の中に毒もあり
優しさ、厳しさもあり
考え込んだり、爆笑させてくれたりと
楽しく哲学させてくれますよ
ジャーナリストやフェミニスト、元左翼などは
必殺の3段論法でバッサバッサと切り倒されますが
そこには対抗意識や感情などはみじんも入りません
論理 『言論(ロゴス)』で語れば
それは必然でしかない結果なのですが
これをここまでの語り口調で語れる人は
そうはいないはずです
というかワタシはほかに知りません
これは・・
よくやるよ・・・
と思うのは
登場人物に
釈迦とイエスを登場させ
ソクラテスと3人で語る章
凄まじいメンツですね
ワタシなどニヤけた顔が戻らない状態でした
「なぜ、あんたたちは宗教などというものを作ったのか?」
(本文とは違いますよ)
と釈迦とイエスに問いただすソクラテス
さてその問答の行方は・・・
「ある」 「無い」
「生とは」 「死とは」
厳然たる現実にご興味のある方は
是非ご一読を・・・