『ゼロの迷宮』
著者:ドゥニ・ゲジ
数字の「ゼロ」の発見を題材にした小説です
アエメールと言う女性が ウルク(メソポタミア)の女神の女
大祭司、ウルの酒場の娼婦、バビロンの占い師、バグダッ
ドの奴隷の踊り子、そして現代の考古学者と転生するよう
な感じで、記数法の歴史に絡んだ5千年の物語を演じてい
ます
インドで発見されたいう「ゼロ」という概念
それまでみんないろいろな図形を使ったり
位取りするのに縦の線をひいて規則を作って表現していた
みたいですね
そして「同じ量から同じ量を引いた量」
である「ゼロ」という画期的な発見
「ない」ということを表す
とは、ほんとはありえないんでしょが
数字という便宜上のこの発見がなければ
当然今の数学・物理学・経済もありえません
古代の人々がそれまでに存在しなかった
概念を四苦八苦して積み上げてきた歴史をたどりながら
最後に現代に戻ってきて
遺物として発見される歴史
円環する今を想像しながら楽しく読める作品です
これも概念、あれも概念
自分たちの作りだした概念の価値を高め過ぎて
結局概念に食いつぶされた不幸な人間になる前の
幸せな人間の物語
とも言えるかもしれません・・・