『前後裁断・私の蕎麦人生』
「早々とあきらめるな、いつまでもしがみつくな」
今から十二年前の丁度今頃の季節に、ニュージーランドへ旅行に行く機会があった。
先日、クライストチャーチで大きな地震があり、多くの人々が被災された、
日本人も何十人も被害に合われ、行方不明の方々もまだ沢山おられるとのこと。
本当に大変な被害になってしまいました。
私が行った時も多くの日本人が住んでいると聞きました。
町は緑豊かで、家々の庭には花々が咲き乱れ、きれいな川が町中を
ゆったりと流れていた。レンガ作りの古い教会など素敵な建物も多く、
飲み水もおいしくて、聞くところによると三十数万人の町の飲料水が
地下水でまかなわれているとのことです。
私は、蕎麦屋をもし外国でやれるとしたら、この町がいいな~と思いました。
実は、私はニュージーランドの旅の途中、クイーンズランドという町の
あるホテルで、アポなしでそばを打って食べてもらったことがありました。
以前、アメリカにそば打ちに行った事がありましたが、
今回はアポイント無しで、チャンスがあったら是非そば打ちをやってみたい、
一回そばが打てる分のそば粉と、トランクに入る長さに切った麺棒だけを持って・・
その時、心の中に「早々とあきらめるな・いつまでもしがみつくな」
という言葉を常に胸にきざんで行動しよう。迷惑をかけないように、
どこまでが諦めないで、どこからがしがみつかないのか・・・
クイーズランドのホテルでそば打ちができたのは、
自分のやりたいという思いの強さも当然ありますが、
運の良さと、何よりも協力してくれた出会った人々がいたからだと思う。
朝食の時に初めて合ったのに、そば打ちをやりたいと無理を承知で言う
私に戸惑いながら、レストランマネージャーのアンドリューに話してくれた武田さん。
(彼は当日からワーキングホリデーでホテルに働き出したばかり)
私の思いを受け止めてコック長のロイドンさんに掛け合ってくれたアンドリューさん
自分の子供さんが日本語を習っていて、日本の食文化にも理解のあるロイドンさん、
私の少し強引な思いを通訳してくれた旅行社の安藤さん・・・その他etc
おかげ様で何とか実現できました、「涙ぐみながら美味しい」と喜んでくれた武田さん、
「私もよい英語の勉強になりました」と言ってくれた安藤さん、皆さん本当にありがとう。
なれない場所で調理台の高さが10㎝以上も高い、包丁は両刃で上手く切れない、
そばを茹でても掬うざるがない、など普段仕事をやっているのとだいぶ条件が違うとしても、そばが考えられない程短くなってしまったり、不揃いになってしまった。
それでも、ロイドンさんが大サービスで昼食を作ってくれたので、そのごちそうを
食べた後で、茹でて一時間以上経ってからそばを食べたけど、本当に旨かった。
やってみて思ったことは、やり遂げた喜びと共に、自分の未熟さを痛感させられました。
その後、オークランドのホテルのフロントに鈴木さんという女性がいらしゃって、
クイーンズランドのホテルでそば打ちをやってきたという話をしたところ、
「ここでも是非やってください、三十人位今日中に集めますから」と言われたが、
私は、「すみません、もうそば粉がなくなってしまってできません。残念ですが!」
と言うと、鈴木さんも大変残念がっていました。
行くまでは、ニュージーランドは農業国なので、食料品の持ち込みは厳しいよ、
とても、そば打ちなど無理だ!と多くの人から聞いて行ったけど、
「成せばなる」だよな~行ってみれば喜んでもらえたりする、
まあ、運が良かったってこともありますね。
べん
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