『うえたさん と あきたまさん』 | Home | 『前後裁断・私の蕎麦人生』 (2)「幻の蕎麦・普通の蕎麦」
2010/10/29 18:44 | 印刷


(1) 『声が聞こえる・・・』

朝一番にそばを打つとき、木鉢にそば粉を入れ手を合わせる。

「今日一日よろしくおつき合いください」

このようにして一日が始まるのも二十数年になるだろうか。

私が若かった頃、「日本一のそば屋になりたい・・・」と
肩に力が入り、思いばかりが空回りしていた時期がありました。

 長女がまだ小学校に上がる前だった頃、娘にそばを食べさせた、
丁度その日、私の親父さんが年に数度しかそばを打たない、そばを打った、

 いい機会なので親父の打ったそばと、私の打ったそばを
娘に食べさせてみよう・・・

すると、娘が言うには・・・

 「お父さんの打ったそばもおいしいけど・・・

おじいちゃんの打ったそばのほうが、もっともっとおいしい。」

 子供は正直です・・・ね!

 私は毎日何度も一生懸命やっているのに、形も揃っていて腰もあるはずなのに、
親父さん年に数度しか打たないのに、そばを打つ時間も短いし、
そばも太いもの細いもの・・・不揃い! おかしいな~

私も親父さんのそばを食べてみました・・・

娘が言うように、私の打ったそばより、味わいがあるんです、
中身があるんです。そして何か、やさしい味がするんです。

 私の打ったそばは、形ばかりで中身がなかったのです・・・

娘や親父さんのおかげで、私は自分の未熟さを知りました。

 それから1~2年後、いつものようにラジオを聞きながらそばを打っていると、
ラジオから「これからはベストワンよりオンリーワン」の時代だよね・・・
という言葉が心に入って来ました。

 そうなんだ、ベストワンじゃなくてオンリーワンでいいんだ!
今まで、どこか「ベストワンになりたい」と、肩に力ばかり入っていて、
自分が主役になって、材料(そば粉)が脇役になっていたんじゃなかったのか・・・

 「ベストワンじゃなくていいんだ、オンリーワンでいいんだ」
と思った時から、肩の力が抜け楽な気持ちになった。

「主役はそば粉で私はお手伝いする人」なのだ・・・

 その時から、木鉢に入れたそば粉に自然と手を合わせるようになり、

そして、声が聞こえた・・・

そば粉が私に・・・

 『お前もようやく職人の入り口に来たな』・・・と

                               べん


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