『道は開ける』
人の気配で目を覚ました。まだ夜明け前、
外はまだ暗い。ふと振り向くと人影が、・・・
目を凝らすとそこには、
おやじとおふくろが座っていた。
そのとき初めて、両親から
『店を継いでくれ』と言われた。
その朝始発の汽車で、私は
東京のある料理店に
修業に行くことになっていた。
いずれ時期が来たら店を
継がなくてはいけないかな・・・
とは思っていたが、
とにかく今は都会に出てみたい、
という思いだけで深く考えていなかった。
その時私の頭の中に浮かんだことは・・・
そして口から出てきた言葉は
『車を買ってくれたら、店を継いでもいいよ』
その頃車の免許を取ったばっかりで
毎日車の本ばかり見ていた、
〔サターンエンジンでマフラーが
バリバリのGSハードトップ〕
そう、あの車がほしかったのです。
私は店が終わると毎日その車でドライブ、
<マフラー バリバリ イワセナガラ・・・>
後で考えると、ずい分ご近所に
迷惑をかけたみたい!
そんな生活を2年も続けていると、
さすがに自己嫌悪になってくる、
仕事は何も出来ないし、
床屋には2年も行っていないし、(学生時代は
ずっと丸坊主だった反動か?)
頭の毛はボサボサ・・・心はモヤモヤ。
『俺なんか生きていても意味無いんじゃないか』と思うこともあった。
そんな折一冊の本に出会った、
『道は開ける』(D.カーネギー著)だ。
「あなたは今どん底にいる、今より底は無いんだ!
静かに目を閉じて、そこに座ってごらんなさい、
暗闇の中で心しずかに何も考えずに・・・
さあ、目を開けて上を見てごらんなさい、
小さな光が見えるでしょ!
足元を見てごらんなさい、
今、足元にあることをやればいいんです!
あとは、光を目指して
一歩一歩登って行けばいいんです。」と
私の心のモヤモヤは
一冊の本によって晴れました。
今、俺に出来ることはなんだろう・・・
次の日から一生懸命出前配達をやりました。
若かりし頃の思い出です。
しかし、これが文鎮の始まりになろうとは・・・。
べん