<別れの風景>
友人のべんちゃんのおふくろさんが亡くなった。
枕経を読み終えたとき、べんちゃんは「おふくろの葬式は音楽葬でやりたい」と言った。
べんちゃんには手仕事きち兵衛さんやギターリスト辻幹雄さんという音楽を介した友人が多い。
その友人たちによる音楽葬をべんちゃんはイメージしたのである。ぼくは賛成した。そして、おふくろさんを見送るためのプログラムを作った。
このところ神宮寺のお葬式は大きく変化している。
10軒あれば10軒とも方法が異なるのである。
本人が生前の意思を残してある場合はもちろんその通りに行い、残されていない場合は家族と相談し、その人が「生きた軌跡」をしっかりとたどることができるオリジナルなお葬式を行うことにしているからだ。
慣習・慣例の中にからめとられているお葬式から脱皮し、個別化することは喪主家にとっても寺にとっても、とても勇気がいることであり、手間がかかる。しかし、何十年も一緒に生きた人を見送るのに手間を省いてはいけない。
きち兵衛さんが歌う「色即是空」(永六輔作詞)にぼくは「般若心経」合わせ、引導を渡した。辻さんはおふくろさんのスライド映像の前で、心に深く沁み込むギターを奏でてくれた。
泣いたところを見たことがない、べんちゃんがいっぱい泣いた。
つられてぼくも泣いた。それは悲しいけれど精一杯のお別れができた
という「納得」の涙だった。
神宮寺住職 高橋 卓志
平成20年2月19日 信濃毎日新聞「タウン情報」(展望台)より
<あるぷすの 水そばって どんなそば?>
水そばってどんなそばなんですか?・・と、
お客さんから、よく質問されます。
会津若松から山間に入ったある村では、香り高いそば粉と、
旨い水があったために、昔からそばつゆをつけずに
水に蕎麦をつけて食べていたとのこと。・・・これが水そば!
(昔は、つゆの材料になる海産物が手に入りにくかったこともあるかも?)
そばを茹で、水でそばを締め、一口つるつるっとすすって茹で加減をみる。
私がそばを味見する時は、ほとんどつゆをつけることはありません。
茹でたては、水がしたたっていて、つゆをつけなくても十分旨いんです。
当店では、「ミネラル還元水」という、天然の湧き水に限りなく近い
美味しく身体に大変良い水を使っています。
この水と天然塩を少しつけて、水そばを食べると、
そばの甘みとモチモチっとした食感を味わってもらえると思います。
感覚的なことで言うと、友人の作った「安曇野」という曲、
それを聴いてイメージした、私の中の安曇野。・・・
「こんこんと湧き出る清らかな水の流れ、そしてのどかな田園風景。」
そんな安曇野の風景をイメージして出来た水そばを、
共感していただけたら幸いです。
以前、ある書家の方から、
「こんなシャープな、水を感じさせるそばは、初めてです。・・・」
という巻き手紙をいただいたことがあります。
私はこの言葉が心に残り、「水そば」という名のそばにしました。
(手紙は表装して大切に飾ってあります。)
蛇足ではありますが、私の名前が「齊川 洋」という、
ちょっと水っぽい名前だったことも、あったかもしれません。・・・
べん