こんにちは。
奥平医院医師の小手川直史です。
今までがんと検診の重要性についてお話ししてきましたが、今回が最後のシリーズとなります。
「乳がん」「子宮がん」「前立腺がん」「肝臓がん」についてお話ししたいと思います。
(乳がん)
女性に多いがんで、女性のがんの生涯罹患率では第一位になりました。現在は女性の16人に1人が乳がんになることが知られています。新しく毎年5万人を超える方々が乳がんになっています。そしてますます増加傾向です。
特徴はほかのがんに比べて若い30歳代から発症する方の割合が増えてきます。
検診は40歳以上の方に二年に一回すすめられています。若い方は超音波、年配の方はマンモグラフィ(乳房エックス線)を行います。
乳がんは自己検診できる唯一のがんといってもよく、ご自身でのチェックも大切です。閉経前の方は生理終了後1週間ほどして、閉経後の方は毎月日にちを決めて定期チェックを行う習慣を作りましょう。
(子宮がん)
子宮頚がんと子宮体がんに分かれます。
子宮頚がんは20~30歳代の若い女性のがんの罹患率で第一位となっています。
パピローマウィルスというウィルスの感染が大きな原因と言われています。現在はパピローマウィルスに対するワクチン(子宮頚がんワクチン)が2種類あります。それぞれ「サーバリックス」「ガーダシル」という名前で、希望するワクチンを中学一年生から高校一年生まで公費(無料)で受けることができます。対象の方は積極的に受けるようにしましょう。
またそれ以上の年齢の女性でもがん予防効果はありますのでご希望の方はご相談ください。ただし、ワクチンで予防できないタイプのパピローマウィルスもいますので、ワクチンを打たれた方も含めて二年に一度の定期検診が勧められています。婦人科では子宮頚がん検診にあわせて子宮体がんと卵巣がんのチェックも行ってくれることが一般的です。
(前立腺がん)
高齢化に伴い罹患率、死亡率ともに増えているがんの代表です。日本では男性の罹患率は胃、大腸、肺に次いで第4位となっていますが、全世界でみると第1位です。高齢化や生活の欧米化に伴い日本でも今後さらに増えていくことが予想されています。
前立腺がんは他のがんとことなりPSAという血液検査の検診が有効です。数値が4.0以上あれば泌尿器科で精密検査が必要となります。50歳以上の方に年に一回のPSAチェックが薦められています。当院では一般的な検診採血時や糖尿病、コレステロールなどの定期採血時に合わせてPSAをチェックすることができます。ご希望の方はいつでもご相談ください。
(肝臓がん)
主な原因はB型およびC型肝炎ウィルスとアルコールです。肝炎ウィルスが体の中にいるかどうかは血液検査で調べることができます。肝炎ウィルスに感染していても通常はなにも症状はありません。また、肝炎ウィルスは血液などを介して他の人に感染させてしまう可能性があります。今までにきちんと調べたことがない方々は一度チェックしておくことをお勧めします。当院で随時検査できますのでいつでもご相談ください。
以上、がんと検診についてのお話をしてきましたが、がんに対して検診の重要性をご理解いただけたと思います。
「自分はがんにならない」「自分はがんと関係ない」そう思っている方も多いと思いますが現実は違います。現在、検査の技術も格段に進歩し早期に発見すれば決して「不治の病」とは言えなくなっています。
このブログを読んでいただいた方には是非定期的な検診を強くお勧めいたいします。
こんにちは。
奥平医院医師の小手川直史です。
今回は胃がん以外についてのがん、「大腸がん」「肺がん」「食道がん」についてお話ししたいと思います。
(大腸がん)
罹患数第二位 男96.0人/10万人/年、女89.5人/10万人/年
死亡数第三位 男47.4人/10万人/年、女39.0人/10万人/年
生涯のうちに男性は12人に1人、女性でも14人に1人がなる頻度の高いがんです。
便潜血検査による検診、いわゆる検便の検査を毎年受けることで死亡率が30~60%減ることがわかっています。便潜血検査は病気があっても陰性(血が出ていない)となることも多く、二回以上の便での検査が勧められています。
また小さなポリープ等の有無は分かりませんので、当院では希望のある方や症状のある方には大腸カメラ検査を行っています。
大腸がんも胃がんと同様に初期の段階であれば治りやすいがんといえます。しかし大腸がんで目に見える出血や便のつまりが出た際には、すでに進行癌になっていて治りづらい状態になっている可能性が高いことは言うまでもありません。無症状でも内視鏡で切除することが可能な段階で発見するためには、定期的な検診、検査を受けることをお勧めします。
また、出血しているのは痔があるせいだと自己判断される方も多くいらっしゃいますが、痔に加えて、奥の直腸などにほかの病気が同時にあることもありますので、出血が見られる方は、一度は大腸カメラ検査で確認しておくことをお勧めします。
(肺がん)
罹患数第三位 男93.4人/10万人/年、女39.2人/10万人/年
死亡数第一位 男79.9人/10万人/年、女28.8人/10万人/年
肺がんは胃がんや大腸がんと比べて罹患数に対する死亡率が高いことがお分かりいただけると思います。治りづらく命にかかわりやすいがんといえます。そのためとくに早期発見が大切になります。
胸部レントゲン写真による検診で70%ほどの病気が発見できます。しかし逆に言えばがんがあっても30%は発見できないのです。胸部レントゲン写真は立体の肺を平面に写すので、心臓や横隔膜の裏などに重なってできた病気は発見しづらい欠点があります。一方、肺CT検査は5㎜以上の大きさがあればほぼ発見できます。松本市では40歳以上の方に3年に一度、肺CT検査の補助があります。個人負担金2000円で受けられますので該当される方は検討してみてください。また松本市の補助がない方でも当院ではCTのある施設と連携して随時紹介検査を行っていますのでご希望の方はお気軽にご相談ください。
また罹患数、死亡数が男女で大きく異なることにお気づきになられたと思います。もちろんこれは男性に喫煙者が多いためです。喫煙者は3~4倍の確率で肺がんになりやすくなります。肺がんだけでなく、全がんの3割は喫煙が原因と言われています。禁煙をしましょう。また周りに喫煙される方がいらっしゃれば、その方の健康を考えて禁煙を勧めてください。
(食道がん)
小沢征爾、岡田真澄、桑田佳祐、宮尾すすむ、藤田まこと、井上靖、赤塚不二夫、開高健、立川談志、やしきたかじん、中村勘三郎(敬称略)
ざっと食道がんをわずらった有名人を挙げてみました。イメージですが、共通点が分かりますか?
そうです、お酒です!(あくまでイメージです)
しかし、食道がんは本当にアルコールによる刺激が一番の原因です。その他にも奈良の茶がゆ、南米のマテ茶など熱いものを口にする習慣があるところにも食道がんが多いことが知られています。口から入れるものは刺激の強いものを避けることが一番の予防になるということですね。
食道がんも胃がん同様、早期であれば内視鏡的に治療ができますので、胃の検診と合わせて胃カメラでの定期検査をお勧めいたします。お酒がお好きな方はとくに!
こんにちは。
奥平医院医師の小手川直史です。
今回は前回お話した胃がんで、その原因となるピロリ菌についてお話ししたいと思います。
ピロリ菌は胃の中に生息している細菌で、いろいろな疾患の原因となることがわかっています。日本人には多く、50歳台の方の60%、70歳台の80%が感染しているといわれています。
◎ 胃潰瘍、十二指腸潰瘍
ピロリ菌感染者の3~5%に潰瘍の発症がみられます。
逆に胃潰瘍の60~95%、十二指腸潰瘍の95~100%にピロリ菌の感染があります。
胃薬をやめると二人に一人で潰瘍が再発してしまいます。しかし、ピロリ菌を除菌することで潰瘍の再発率を1/10程度まで低下させることができます。
◎ 胃がん
ピロリ菌の感染があると3~6倍の確率で胃癌になりやすくなります。
ピロリ菌が感染している方は、「萎縮性胃炎」という「慢性胃炎」がおきています。今までの胃カメラで慢性胃炎がありますと説明を受けたことがある方は、ピロリ菌がいる可能性が高いと考えられますので、年に一度の胃カメラでの定期検診をお勧めします。
◎ ピロリ菌の検査方法
当院では吐いた息で感染の有無を調べる尿素呼気試験という検査を行っています。
検査の方法は、まず食事を食べずに来院していただき専用の袋に息を吐いてもらいます。その後、ユービットという検査薬を1錠水と一緒に飲んでもらいます。その後しばらくしてからもう一度専用の袋に息を吐いていただき、その吐いた息で感染を調べる検査法です。苦痛もなく体に負担のないのが特徴です。
また、実際に胃カメラで胃の組織をとり感染の有無を調べる方法や、血液から感染を調べる方法も行っています。
◎ ピロリ菌の除菌
三種類の薬を一週間連続して内服してもらいます。
除菌成功率は80%程度と高い確率です。もし失敗しても、別の薬の組み合わせでも同様に80%程度の除菌率が得られます。途中で中断したり、内腹を忘れたりすると、ピロリ菌に抵抗力ができ、再度トライしても除菌率は大きく低下します。副作用は薬へのアレルギー、抗生剤による下痢、一時的な味覚障害等です。
除菌については胃カメラを行ったうえで「胃潰瘍」「十二指腸潰瘍」の診断がつき、実際にピロリ菌に感染していた場合に保険で治療が出来ます。それ以外は残念ながら保険での治療が認められていません(自費診療になります)。
だいたいの費用ですが、初診で胃カメラと尿素呼気試験を行い、再診後に除菌治療、その後もう一度尿素呼気試験で除菌が出来たか確認するという流れで、ざっくり計算すると1割負担の方で4,000円弱、3割負担の方で11,000円程度、全額自費での方が40,000円程度かかると思われます。
がん細胞は一個⇒二個⇒四個⇒八個と倍々でと増えていくのですが、胃カメラで見えるようになるにはおよそ10億個の細胞が必要です。そうなるには5年から10年以上の期間がかかりますので、ピロリ菌の除菌が成功した時点ですでに目に見えないがん細胞ができている可能性がありますので、その後も定期的な胃カメラでの検診が大切です。
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診療科目
内科・小児科
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