やっぱり痛い遊離歯肉移植
何度か紹介している“遊離歯肉移植”です。
不幸にも4年ほど前に交通事故で頬骨弓骨折した患者さんです。初診時にはまだ固定用のプレートが入っていました。
欠損部顎堤の付着歯肉は失われており、プレート固定時の瘢痕組織が見られます。触診するとしこりのような組織が歯肉部から頬粘膜にかけて存在し、そのため左上7番の清掃性が著しく悪化し歯周病の進行が見受けられます。
患者さんと相談した結果、まずは形成外科に依頼し、固定用のプレートを除去することにしました。
その後組織の治癒を待って、付着歯肉獲得の目的で遊離歯肉移植術を行いました。
術後10日の写真です。まだ見た目は痛々しいのですが、患者さんは随分楽になったとおっしゃっていました。
やはり術後1週間は辛かったそうです。
写真だけでは分かりにくいのですが、頬側にはしっかり付着歯肉を獲得することができました。また、移植床を形成した際、頬粘膜内の瘢痕様組織を極力削ぎ落としてみましたが、その効果は???です。
遊離歯肉移植は当院で行う処置の中で最も痛みを伴う処置の一つです。もちろん術前にはその必要性とともに痛い処置であることを十分説明いたします。
患者さん曰く、ドナーサイト(歯肉を切り取った方)の痛みがつらいようです。一応コラーゲンの保護剤を縫い付けるのですが、痛みは強いようですね。
でも今回頑張ったおかげで、7番の清掃性は確実に向上するでしょうし、将来欠損部にインプラント治療も可能になるかもしれません。あと1週間もすれば歯ブラシもあてられる状態まで回復すると思います。
7番を極力失わないよう、今後も管理を続けましょう。
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これで終了ではなく、スタートです。
去年の8月から通っていただいている当時35歳の患者さんです。
主訴は歯周病を治したい、前歯を何とかしたいという事でした。
正直なところ初めて口腔内を見させていただいたときにめまいがしました。
歯周病がだいぶ進行していて、カリエス(虫歯)も多く、これは大変だと思ったことを今でもはっきりと覚えています。
しかし、患者さんにも今までいろいろな事情があったわけで、好きでここまで放っておいたわけではありません。恐らく相当の決心をして歯科医院の門をくぐったのだと思います。
プラークコントロールから始まり歯周外科まで、いろいろな治療をしました。
1年がんばって通っていただき、ようやく補綴が一段落です。
ただ、まだ治療が終わったわけではありません。これからが本当の戦いになります。今の状態をできるだけ維持し、歯周病の再発を防がなくてはいけません。
歯周病は気を抜くとすぐに後戻りをしてしまいます。
定期健診を繰り返し、問題点を徐々に解決し、より長く自分の歯で食事がとれるようにお互いに管理していきたいと思います。
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付着歯肉の必要性 その2
先週のオペから1週間が経ちました。
もちろんまだ完全治癒というわけにはいきませんが、経過は極めて良好です。
口蓋の供給側です。接触痛が多少あるそうですが、自発痛はありません。
頬側の受給側です。新生幼若組織が形成されています。
触って少し出血があると安心します。
あと1週間ですべて抜糸予定です。
ブラッシングはしばらく禁忌ですので、含嗽でケアをお願いしています。
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付着歯肉の必要性
通常歯の周りには歯肉があり、歯槽骨としっかりと付いている“付着歯肉”が存在します。
この付着歯肉によって外敵(細菌や異物など)が体内に侵入するのを防いでいます。
しかし、様々な理由でこの付着歯肉が失われると、ブラッシングがしにくくなることで歯周病やインプラント周囲炎が進行しやすくなります。
そこで清掃性を高めるために、付着歯肉を獲得する必要性があります。実際には上顎の口蓋(裏側)から歯肉を切り取り、患部に移植する“遊離歯肉移植”が行われます。
この患者さんは半年ほど前に左上56部にインプラント補綴を行った患者さんです。わかりにくいのですが点線部の付着歯肉が不足しています。
ブラッシングを熱心にしてくれる患者さんなのでしばらく様子を見ていましたが、より確実な予後を達成するために遊離歯肉移植を行いました。
補綴物を外した状態です。ブラッシングによって炎症症状は顕著に見られませんが、気が抜けない状況です。写真ではわかりにくいのですが点線部が付着歯肉が不足している部分です。
口蓋(画面下の部分)から歯肉を切り取り、頬側に移植して固定します。
当院で行う手術のうち、最も痛い処置の一つです。
経験のある患者さんの話だと、2週間ぐらいは口蓋(歯肉を切り取ったほう)が痛い(しみる?)そうです。
この患者さんも多少の痛みは伴うことは承知していただいていますが、極力丁寧に行いましたので、1日も早い回復を願っています。
2週間後には抜糸をして、1ヶ月もすればよりブラッシングのしやすい環境になることと思います。
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歯周病の健診、受けてますか?
約1年前の初診の患者さんです。
主訴は“前歯がぐらついて歯茎から血が出る”とのことでした。
この状況なら出血は当然ありますね。でも患者さんは出血すると怖くなって、歯ブラシを当てなくなってしまったそうです。するとまたそこにプラークが付着して、炎症が強くなり、より出血しやすくなるという悪循環に陥ります。
ブラッシング指導に始まって歯周外科処置まで、約1年かかりました。
残念ながら左右の1番は抜歯となりました。歯周外科を行ったため歯冠長が長くなってしまいましたが、幸いリップラインがさほど高くない患者さんなので助かりました。
初診時の状態に戻らないよう、定期健診を受けましょうね。
歯周病は自覚症状がなかなか出ず、“サイレントキラー”と呼ばれます。定期的に虫歯と歯周病の健診に歯科医院を受診しましょう。
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妊娠性歯肉炎
女性の方が妊娠されると、ホルモンバランスの変化からか歯肉が腫れることがあります。
妊娠初期のつわりなどによって、歯ブラシがうまくできないことも原因の一つでしょう。
初診時、妊娠6ヶ月でお見えになった妊婦さんです。
写真が露出オーバーですが、特に下顎前歯部の歯肉が腫れているのが分かると思います。
縁下歯石も多く見られましたが、今回は妊娠中ということで縁上のスケーリングとブラッシング指導のみ行いました。
約1ヶ月後です。
若干炎症が残っていますが、初診時に比べればだいぶ歯肉も安定してきています。
今後は定期健診を繰り返し、時間が取れるようになったら本格的に歯周治療を行う予定です。
日頃から歯のお手入れをしっかりとして、定期的に歯科医院でクリーニングをすることで歯周病の予防をしましょう。
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遊離歯肉移植 ~その3~
歯肉移植から2週間ちょっと経ちました。
経過は良好で、抜糸しました。すでにブラッシングも少しずつ始めていただいています。
若干術後の炎症が残っていますが、問題なく治癒していると思われます。
術前と比べて付着歯肉が増えているのがお分かりいただけるでしょうか?
供給側の上顎もきれいに治癒しています。
あとは歯肉が成熟するのを待って、最終補綴予定です。
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遊離歯肉移植 ~その2~
先日ご紹介した歯肉移植の術後1週です。
まだ1週間しかたっていませんので、傷は痛々しく見えますが、経過は良好です。
患者さんには思ったよりは痛みが少なかったと仰っていただきました。
上顎はこんな感じで治癒しています。
重い火傷をした感じです。こちら側もそれほど痛くはなかったそうです。
もう1週間で抜糸予定です。しばらく歯ブラシが当てられませんが、含嗽剤で頑張ってください。
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遊離歯肉移植 ~その1~
歯やインプラントの清掃性を保つには堅くて動かない歯肉(付着歯肉)が必要です。
しかし、付着歯肉が何らかの原因で少なくなると、歯やインプラントの予後にも影響してきます。
そこで付着歯肉を得るために上顎の口蓋から歯肉上皮を切り取り移植する術式が“遊離歯肉移植術”です。
写真では少しわかりにくいのですが、左下7番部のインプラントと、6番遠心根周囲の付着歯肉が足りません。音波歯ブラシやワンタフトなどを駆使してセルフケアしていただいていますが、少し炎症症状も見受けられます。
そこで口蓋の歯肉を移殖させていただきました。
レシピエントサイド(供給側)はこんな感じです。
症状緩和と治癒促進のため、コラーゲンの膜をおいて縫合します。
当院で行うオペの中でも術後の痛みが強い部類の術式です。患者さんの話では2週間ぐらいで落ち着くことが多いようです。
感染防止に抗生剤の内服と含嗽剤で消毒し、2週間後に抜糸の予定です。
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臨床的歯冠長延長
先日ご紹介した患者さんです。
早速歯冠長延長術を行わせていただきました。
術後1週間の抜糸時です。
歯肉ラインを根尖側へ約2mm程下げました。
TEK(仮歯)の長さも修正しました。
術前の歯肉ラインと比べるとその違いが良くわかると思います。
あとは歯肉が成熟するのをじっくりと待ち、補綴処置に入ります。
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ブラキシズムと知覚過敏
ここのところ知覚過敏(正確には象牙質知覚過敏症)の患者さんが多いように思います。
季節がら水も空気も冷たくなってきて、歯にとっては過酷な時期であることは確かだと思います。
知覚過敏の原因はいろいろありますが、ブラキシズムによって引き起こされる知覚過敏があります。
歯軋りやくいしばりといった悪習癖で歯と歯ぐきの境目が削られてしまいます。歯の表面が剥がれ落ちるといったほうがよいでしょうか。
知覚過敏を起こしている部位に対しては特に治療はしません。(よっぽどひどい場合は別ですが)
それよりもブラキシズムを抑制することを考えます。
具体的には咬合調整や以前もお話しました“ナイトガード”を夜寝ている間装着していただきます。
歯の型を取り、透明なプラスチックで作ります。最初は気になりますが、思ったほど違和感はないらしく、ほとんどの方に使用していただいています。
最近歯がしみるようになった人、歯軋りやくいしばりのある人は一度歯科医院で相談してみてはいかがでしょうか?
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EMD (エムドゲイン)
歯周病に罹って歯周組織の破壊が進むと、スケーリングやルートプレーニングなどの歯周初期治療だけでは歯周組織の安定化が図れず、歯周外科が必要となることが多々あります。
歯周病に限ったことではありませんが、最高の治癒形態はいわゆる“元どおりになる”ことです。歯周病で言えば吸収された歯槽骨が元あった位置まで再生することが最良です。が、なかなかそううまくいかないのが現状です。
歯槽骨再生の一手段として“エムドゲイン療法”があります。これはブタから抽出したエナメルタンパク質を歯槽骨の欠損部に塗布することで、再生を促す療法です。もちろん欠損形態の適応症があり、何でも使えば再生する魔法の薬ではありません。
この患者さんは平成16年1月に当院にいらっしゃった当時22歳の女性です。36の近心部に大きな垂直性骨欠損がありました。初期治療後、同年6月に歯周外科に伴いエムドゲインを使用しました。
術後4年経過した、平成20年5月の状態です。X線的には明らかに骨の再生が認められます。こういった症例を見るとやってよかったと思いますが、全ての症例で良好な再生が見られるわけではありません。
エムドゲインは保険適応外です。
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ブラキシズム その2
前回の続きです。
歯軋りや噛みしめといった習癖は自覚されている方も中にはいらっしゃいますが、ほとんどの方は指摘されるまで自覚していないことがほとんどです。
もちろん私たちも100%指摘することは無理ですが、口の中の状態を見るとおおよその予想がつきます。
みなさんもお口の中を確認してみてください。
・歯の先端が磨り減っていませんか?
・下の歯の裏側に骨のふくらみがありませんか?
・奥歯のほっぺに白い筋がありませんか?
・べろを出して、横にぎざぎざの痕がついていませんか?
・朝起きて、顎が疲れたりだるかったりしていませんか?
・何か集中して仕事をしているとき、噛みしめていませんか?
何か心当たりがある場合は歯医者さんで相談してみましょう。
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ブラキシズム その1
歯軋り、噛みしめなど、歯に有害な癖を“ブラキシズム”といいます。
一言に歯軋りといっても他人から指摘されるような音を発するものから音のしない歯軋りまで人それぞれです。ブラキシズムは現代社会の様々なストレスを開放する生理現象とする説もあり一概に否定はできないのですが、歯にとっては有益なものではありません。
先日もおそらくブラキサー(ブラキシズムのある人)であろう患者さんが“歯が痛い”という主訴でお見えになり、診査の結果見事に歯が破折していました。その方の場合は、珍しく歯の神経を取っていない生活歯での破折でした。
破折が歯根にまで及ぶとほとんどの場合抜歯となります。人間の咬合力は非常に強く、自分の歯や補綴物を壊してしまうことは珍しくありません。
対処法として“ナイトガード”の装着があげられます。ナイトガードは歯に個人の歯に合わせて作り、夜寝るときに歯軋り防止として装着します。
歯軋り、噛みしめの自覚のある方は一度歯科医院で相談してみてはいかがでしょうか?
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スケーリング・ルートプレーニング
歯周病の予防、治療でプラークコントロールが重要であることは前回お話しました。
プラークが上手く除去できない状態が続くと石灰化して硬くなり、歯石となってしまいます。
歯石になるともう歯ブラシでは取り除くことができません。歯医者さんで歯石を取ってもらわないと歯周病が悪化してしまいます。
さらに歯石は歯の表面のみならず、歯肉の中にもぐりこんで強固に付着します。これを縁下歯石といい、実際には黒く見えます。
この縁下歯石を除去して歯の面をつるつるにして歯と歯肉を再度くっつきやすいようにするのがルートプレーニングです。このときに使用するのが手用スケーラーで、切れ味が良くないと時間ばかりかかってしまい、歯石の取り残しも増えてしまいます。そのために日々スケーラーを切れるようにシャープニングが必要なのです。
患者さんも大変でしょうが、私たちもこの強固な歯石を取るのには一苦労です。
半年に一度は歯医者さんで定期健診を受け、歯石やプラークを徹底的に除去して歯周病の予防をしましょう。
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プラークコントロール
むし歯や歯周病の最大の原因はプラーク(歯垢)の中に無数に存在するむし歯菌、歯周病菌による感染です。
むし歯菌や歯周病菌はほとんど全ての方の口腔内に存在しますが、それが一箇所に集まってえさを食べて繁殖するとプラークを形成します。
むし歯菌や歯周病菌をゼロにすることは不可能ですが、繁殖した最近の塊であるプラークを取り除く(プラークコントロール)ことは可能です。
プラークは歯ブラシによるブラッシングで除去することができます。毎食後、特に就寝前は丁寧にブラッシングをしましょう。寝ている間は口の動きや唾液の分泌量が減り、口の中が不潔になりやすいのです。
おそらく一日歯を磨かない方はいないと思います。ただ私たちの目から見ると、大事なところがうまく磨けていないことが大半です。毎日のことなので大変でしょうが、一度歯科医院でブラッシング指導を受けて、効率良くプラークコントロールをしましょう。
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歯石
歯にプラーク(歯垢)が付着した状態が続くと、やがて石灰化が進み歯石となります。歯石になってしまうと歯ブラシでは落とすことができなくなります。
さらにその状態が放置されると歯石は歯肉の中にもぐりこみ(縁下歯石)、歯周ポケットが形成されます。
そして歯を支えている骨(歯槽骨)が吸収し、歯が動揺しだします。
横に倒れているのは智歯(親知らず)です。智歯と手前の歯の下にある黒い三角形の部分の歯槽骨が吸収しています。
歯を抜いてみると黒い歯石がびっしりと付着しています。
もっと早くに智歯を抜歯し、歯周病の治療をしていればこうはならなかったと思います。
歯石は自分で取ることはできません。
半年に一度は歯医者さんで定期健診を受け、歯周病の早期発見、早期治療に努めましょう。