甲状腺眼症(バセドウ病眼症)の症状は年齢によって異なった傾向を示します。
40歳以下の方には眼球突出と眼瞼後退といった外見に影響する症状が出やすいものの、複視や視力障害を生じにくい傾向があります。
眼球突出は眼窩内の脂肪の増加により、眼球が前に押し出されます。
眼瞼後退は瞼を上下する筋が収縮し、特に上瞼が上方に引っ張られることにより、上瞼と黒目の間から白目が露出してしまう症状がでます。(下図参照)
眼瞼後退は外見の変化やドライアイに影響する症状ですが、視機能に影響がないので積極的な治療の対象になりにくい症状でした。
この症状に対し、近年試みられている治療法をいくつかご紹介いたします。但し、これらの治療は健康保険で認められているものではありません。
①ルミガン点眼液による眼瞼後退に対する治療法
以前はグアネチジン点眼液が眼瞼後退に用いられていた時期がありましたが、現在は製造中止になっており、ルミガン点眼液の有効性が示唆されております。
もともとは緑内障治療薬ですが、この点眼液の使用により眼窩内の脂肪の減少が発現します。正常な方でも点眼を行うと、眼瞼の脂肪減少によりくっきりした深い二重瞼になることがあります。
②ボトックスによる治療法
通常、ボトックス(ボツリヌス毒素製剤)の眼瞼注射は眼瞼痙攣の症状に行われ、保険も眼科領域では眼瞼痙攣、片側顔面痙攣に適応があります。近年、一部の甲状腺専門施設では、眼瞼後退に対してもボトックスの注射が試みられるようになってきました。
眼瞼(まぶた)を挙上する上眼瞼挙筋の作用を薬剤で減弱させる治療法です。
但し、発症初期でないと有効性は少なく、効果が強すぎると眼瞼下垂が現れる場合があります。
以上はまだ普及した治療法ではありませんが、有効性を示唆する報告があります。