カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
さて、時間を少し戻しますが、何と言っても金宇館での一番の楽しみは、今回も信州の旬の食材を使った季節の懐石コースです。毎回、素敵な器に盛られた、一手間も二手間も工夫された料理を目でも味わいながら頂きます。
しかも今回はコースの一品ずつを都度厨房から運んでいただいて、「離れ」のリビングダイニングで気兼ね無く我が家だけでの部屋食です。顔馴染みのスタッフの方や女将さんが都度運んで来られ、一品一品料理の説明をしながらサーブしてくれます。
我が家では会食だけでも可能だった10年以上前から金宇館を利用させていただいており、現在の四代目の女将さんが先代の女将さんと当時は二人だけで配膳など切り盛りされていた若女将の頃からです。またその後、姪が地元の保育園で先生として以前金宇館のお子さんを担任していたこともあって、毎年お世話になっている娘たちや最近では孫たちとも顔馴染み。加えて次女同様に結婚される前の航空会社での勤務経験もあってか、次女とはお互い親近感もあるようです。
「随分大きくなりましたね・・・」
「この前、中一の長男に遂に身長を抜かれたんですヨ・・・」
そんなお互いの世間話が何ともアットホームで暖かな感じがします。
続いて栗に見立てたシイタケの利休揚げ。ホタテのしんじょに三つ葉がまぶされていて、素材を活かした薄味ながら何とも言えぬ味わいでした。
八寸が(上から時計回りに)、みぞれ和え、菊花を添えた春菊のおひたし、生姜の効いた牡蠣のしぐれ煮、シャインマスカットの白和え、オオマサリという大粒品種の塩茹で落花生、栗の渋皮煮。
牡蠣以外はどれも松本や安曇野産という地場の食材での地産地消でした。器にそっと添えられた赤く紅葉した庭の百日紅の葉が、更に季節の彩を演出してくれています。
続いて、創業時から受け継がれて来た漆器を4年前のリニューアルに合わせて塗り直したという漆器での椀物が、今回はジャガイモの素揚げが載せられた銀杏のすり流しでしたが、それにしても一体何個の銀杏を使ったのでしょうか・・・。
お造りは、バラの花の様に盛られたいつもの赤身のヒレの馬刺しを、ニンニク唐辛子味噌で頂きます。
焼き物の魚は、カマスがコショウと生姜を効かせたゴボウのすり流しの上に載せられていて、そのすり流しと和えて頂くのですが、何とも言えぬ味わい。
揚げ物は、ナメコの餡かけでの海老入りのレンコン饅頭。餡の塩梅が濃くも無く薄くも無く・・・絶妙でした。そして焼き物の肉は、信州牛のイチボにボタン胡椒の味噌を付けて頂きます。
最後の〆は、栗おこわ。栗は勿論ですが、おこわもほのかに甘味を感じます。
因みに11月になると新そばになって、〆はざるそばになるのだとか。
最後に、デザートで洋ナシのジェラート(こちらは奥さまへ)。
どれもこれも季節の旬の素材本来を活かしながらの、一手間も二手間も加えたこの日の料理の中で、個人的には栗に見立てたシイタケの利休揚げが一番でした。
娘は銀杏のすり流し、奥さまは焼き魚のカマスに添えられたゴボウのすり流しがが一番印象深かったとか。
またどれもこれも、取り分け八寸は酒の肴に実に相応しいのですが、残念ながらこの日もコユキと一緒に寝るために泊まらずに帰らないといけないので、ノンアルビールのみだったのですが、でも合わないなぁ・・・と、結局一杯だけで追加せず・・・何とも残念でした。
続いて金宇館の食で楽しみなのが、翌日の朝食です。
京都のおばんざい風に、一人ずつのお膳に小鉢に盛られて並べらえた品々。
奥の左側から、ナスの揚げびたしと自家製がんもどきの煮物、お馴染みのニシンの煮付け、とろろ汁、続いて手前に白菜の煮浸し、これまたお馴染みのレンコンの炒め煮。歯ざわりが絶妙です。そして自家製のこの時期の香の物として、松本らしい“本瓜”の粕漬けとカリカリの梅漬け。どちらも懐かしい“我が家の味”に似ていて、“お祖母ちゃん”を思い出させてくれます。
それと、茶碗蒸し風の自家製の豆腐の餡掛けと、大久保醸造のお味噌汁と安曇野産コシヒカリのご飯が二つのお櫃に入って・・・。
おばんざい風の中では、毎度感じるのですがニシンの柔らかいこと。どうやったらこんなに柔らかく煮られるのでしょうか。圧力鍋かと思ったら、そうではなく、半日掛けてことこと煮込むのだとか・・・。
「毎度、代わり映えしなくてスイマセン」
「いえ、これを食べるのが毎回楽しみで・・・」
また炊き方もあるのでしょうが、安曇野産コシヒカリのご飯が美味しくて、ついつい食べ過ぎてしまい、今回もとろろ汁だけでの一杯も含め、三杯頂いてしまいました。
一人でお櫃一つを担当した健啖家の婿殿を筆頭に皆同様で、最終的に二つのお櫃は全部空・・・。
「今日はもうお昼は要らないよね・・・!?」
昨晩の夕食、朝食、金宇館の食事はどれもこれも本当に素晴らしい。
しかも三歳児の孫には、夕食も朝食もですが、大人用の献立の中から子供でも食べられそうな料理と一緒に、子供向けにわざわざエビフライなどの別の料理も作って出してくれました(孫の残したエビフライを食べた娘と家内曰く、衣も含めて街の洋食レストランでもお目に掛かれない様な絶品のエビフライだったとか・・・)
今回も十二分に堪能した料理の数々でした。しかも、以前食べた料理とどこか同じ様であっても(例えばレンコン饅頭や、椀物のすり流しなど)似ている様で決して似ていない・・・。毎回食しながら、必ずそんな驚きと発見がありますす。
金宇館の食事付きの宿泊料金は決してお安くありません。正直、年金生活者の我々にとっては尚更です。会食だけでも受け入れていた昔と比べれば、ご時世とはいえ本館の宿泊料金でも昔に比べれば何倍にもなっています。でも、それだけの料金を払っても、滞在から感じるその料金以上の満足感・・・。
それは決して“コスパ”や“タイパ”という単純な言葉や数値だけでは表すことの出来ない、これまで金宇館が積み重ねて来た三代に亘る百年という時間の上に、更に現在の四代目のご主人や女将さん始めスタッフの皆さんが努力して更に創り上げたであろう、癒しにも似た静謐な空気感とも云える様な、館内に漂う決して飾らない自然な雰囲気の“おもてなし”から受ける満足感・・・とでも言ったら良いのでしょうか。
今回も大いに満足することが出来た、そんな金宇館の料理でした。そんな想いを溜息にも込めて、
「ふぅ~、ごちそうさまでした。」
以前の先代の頃の会食だけでも受け入れていた頃から、我が家では10年以上贔屓にしてきた美ケ原温泉の料理旅館『“鄙の宿”金宇館』。
2019年の3月から一年間掛けて“次の百年に向けて”という大幅な改装工事を行い、2020年の4月にリニューアルオープン。
改装前に父の法要後の会食も何度かお願いしたのですが、改装後は数か月先まで予約で埋まっているという人気の高さも手伝い、松本在住者としては誠に残念ではあるのですが、会食だけでの受け入れはもう不可能で、食事は宿泊客のみへの提供となってしまいました。
今回の改装工事は、今までの別館3部屋を一棟に纏め、二階建てに2洋室1和室の三つの寝室、そしてリビング部分と今までは無かった別館専用の内風呂を設け、更に別館だけは食事も部屋食にして、これまで要望があっても受け入れ出来なかった8人までのグループも受け入れ可能にするのが目的とのことでした。
H/Pに依ると、
『この離れは1日1組様限定の貸し切りでご利用いただける建物です。
暖炉のあるリビングダイニングを設け、お食事は朝夕共にお運びさせていただきます。庭を眺める半露天風呂を備え、洋室2室と和室1室の寝室を設けて最大8名様までご利用いただけます。
一階は暖炉のあるリビングダイニングと庭を眺める半露天⾵呂を備え、昭和七年建築当時の意匠をそのまま残し、板張りのリビングと寝室。そして、建築当時の急な階段を上った二階に、和洋の寝室が二部屋。四畳半だった⼆部屋を繋げ、それぞれにゆったりとお休みいただけるダブルベッドの洋室と最大4組の布団が敷ける数寄屋風の和室にしました。』
とのこと。
因みに各寝室は洋室が2名ずつで和室が最大4名の合計8名ですが、それより人数が少なくても、勿論料金は高くなりますが、例えば二人だけで「離れ」を独占しての利用も可能とのこと。
そして家族での利用も出来ますので、これまで本館の5部屋の内「湯ノ原」一室だけだった子供の宿泊も、改装後は別館の「離れ」もOKになりました。こちらなら部屋食ですので、どんなに孫たちが騒ごうが泣こうが、他のお客様に気兼ねなく過ごすことが出来ます。
そこで今回は少し贅沢をして、その「離れ」に我が家で泊ることにしました。但し、本館よりも宿泊料金がかなり上がるので、今回は一泊だけですが(但し、私メは今回もコユキを独りにしておけないので、泊まらずに自宅に戻ります)。
午後3時のチェックインの少し前に着いてしまったのですが、「もう準備は終わっていますから」と、時間前に受け入れて頂きました。そしてラウンジでのチェックイン後、「まだ他のお客様は一人も来られていませんから」と、離れ利用の説明していただきながら、今回は使わぬ一室も含めて「離れ」全部をじっくりと館内見学をさせていただきました。
本館同様に、この「離れ」も館内のあちこちに置かれた生け花と、ご主人がファンで集められたという沢田英男の小さな木彫りの像が“鄙の宿”の静謐な雰囲気を醸し出しています。
そして改装後の本館同様、「離れ」の家具も全て、明治から100年続く木芸工房で江戸指物の技術を受け継ぐ松本の前田木藝工房「アトリエm4」の四代目、前田大作氏の作品とのこと。リビングダイニングに置かれていた椅子の、背もたれの削り出されたカーブが何とも快適そうで、また意匠としてもとても印象的でした(ダイニングの写真はH/Pからお借りしました)。
離れ滞在者専用の板張りの源泉かけ流しの内風呂は、大きな窓が二つあって庭園を眺めながら入浴を楽しむことが出来ますし、時間制限なく貸切状態でいつでも好きな時に自由に温泉を楽しむことが出来ます。
因みに「離れ」では、TVは一階の昭和七年建築当時の意匠をそのまま残したという寝室横のリビングに1台置かれているだけで、二階の和洋の両寝室にはTVがありません。ですので、要らぬお節介ですが、浮世を離れ喧騒を忘れての温泉三昧で、金宇館のコンセプトである“時と泊る”・・・という認識が必要でしょう。
また「離れ」には小さなパントリーがあって、冷蔵庫(ビールや天然果汁のリンゴジュースなどが無料飲料として用意されています)と専用の全⾃動コーヒーマシンもあるので、本館のラウンジに行かなくても後述の広縁に座って庭を見ながら、或いは冬なら暖かな暖炉の柔らかに揺れる炎を見ながらエスプレッソを楽しむことが出来ます。
そのリビングダイニング横の「広縁」と名付けられた庭に張り出した板張りのテラスからは、改装に合わせて作庭された庭が望め、斜面を活かして石庭の様に幾つもの山辺石が置かれています。ただ造園作業に時間が掛かり、植栽工事が全部間に合わず、植栽が可能となる冬になったらまた何本かの木々が植えられる予定だそうですので、完成するとまた印象が変わるのでしょう。
翌朝、他のお客様は皆さん既に観光に出発されたようですが、我々はゆっくりとチェックアウトの11時まで過ごし、最後に樹齢160年という立派な百日紅の横の門柱の所写真を撮っていただいてから、4代目ご夫婦に見送られて金宇館を後にしました。
今回はチョッピリ贅沢をしましたが、価格以上に満足した、完成前から楽しみにしていた憧れの「離れ」滞在でした。
次女一家がアパートから戸建てに引っ越すこととなり、病院勤務と2人の育児に追われ忙しい次女夫婦のサポートに、7月上旬コユキも連れて車で横浜に向かいました。
既に家内は南紀白浜から戻ってすぐ、6月下旬から先に行って荷造りなど引っ越し準備を手伝っており、私メは飽くまで“力仕事”と、不要な家具や家電製品などの粗大ゴミの地区での収集予約が間に合わなかったため、レンタルした軽トラでの横浜市の処理場へ自分たちで運ばねばならず、次女夫婦は二人共ペーパードライバー故に軽トラドライバー兼運搬係です。
引っ越しそのものは勿論専門の引っ越し業者にお願いしてあり、アパートへのアクセス道路が狭く大型車両が駐車して作業が出来ないことから、中型トラックで二度に分けて搬送。残った廃棄物などの処理と新居での片付けなどの作業を、我々も一緒に一週間ちょっと掛かって無事終わらせることが出来、最後は庭木の剪定と手入れを済ませ、残って育児と家事のサポートを継続する家内を残して、先にコユキと松本へ戻って来ました。
この横浜での一週間ちょっとの滞在中にランチで何度かお世話になったのが、新居の近くに在った「バーガーキング」でした(因みに、近くにはバーガーキングだけではなくて、マックもモスも、はたまたサブウェイもフレッシュネスバーガーの店舗も在ったのですが)。
昔、家族で赴任して6年半暮らしたシンガポールで、住んでいたコンドミニアムの近くにはマックもバーガーキングも、そして赴任中に日本から進出して来て、現地でも行列が出来る程人気になったモスの第一号店もありましたが、家族でテイクアウト(シンガポールではイギリス英語のTake away を使うのが一般的)したのは専らバーガーキングでした。子供たちが通っていた英国式スクールのママ友と子供たちに人気だったのも、マックよりもやはりバーガーキングが人気だった様です。理由は単純で、マックよりもバーガーキングの方が美味しいから。それにオニオンリングがあるから。また個人的には、シンガポールではハンバーガーショップなどではオーダーすると必ず無料で付いてくるのが当たり前で、お願いすると更に何個か追加して貰えた個袋のチリソースですが(帰任してハンバーガーショップのどこにも無いのにガッカリし、家では常備しているユウキのスイートチリソースを必ず使っています)、バーガーキングのチリソースが断然美味しくて、片やマックはガーリックが効きすぎていて好みでは無かったのもその理由でした(そう云えば、長女がコンサル勤務時代、シンガポールの日系企業コンサルに3ヶ月間長期出張した際に、バーガーキングのチリソースの小袋を帰国時のお土産にたくさん貰って持ち帰ってもらって、松本でマックのハンバーガーなどをテイクアウトした時に大事に使ったことを思い出しました)。
但し、マックの店舗の中には子供用に遊具などが置かれたプレイルームを備えた店が在り、そこでマックの商品を注文する前提で、子供たちの誕生日会などに無料での貸切が可能でデコレーションもしてくれるので、子供たちもシンガポール時代に友達のバースデーパーティーではバーガーキングではなくマックに何度もお世話になった様です。
さて、前置きが長くなりました。
新居での作業中、子供たちをあやすために気分転換に外出した次女が、ランチのテイクアウトで、「モスかバーガーキングか、どっちがイイ?」と言うので、松本には無いので迷わずにバーガーキングを希望したのですが、家内はモスの方が・・・とのこと。その選択は行った様子で娘の判断に任せることにしました。
暫くすると娘から電話があり、バーガーキングは何を買えば分からないからモスでもイイかとのこと。その時家内が二階で作業していたのをこれ幸いと、30年以上経った今のメニューなぞ私メも分かる筈もありませんが、シンガポールでの記憶を頼りに、
「バーガーキングだったら、確かWhopper Jr.とかがある筈だから、それとオニオンリングとポテトとか、後は任せる!!」
と家内の意向は無視して、バーガーキング一択でお願いしました。
間も無く娘たちが戻り、久し振りに食べたWhopper Jr. 。実に30年振り?でしょうか、
「あぁ、これバーガーキングの味!シンガポールで食べてたのと同じだ・・・」
懐かしい味でした。そしてこれまた懐かしのオニオンリング。
そして、娘が「これも味見してみて!」と一口食べさせてくれた、彼女と孫のために買って来たというハンバーガー。これが旨いのナンノ!
「えっ!これ何?“肉々しくて”ペッパーも効いてて、美味しい!」
聞けば、新製品のグリルド・ビーフとか・・・。
バーガーキングに拠ると、
『2024年6月28日(金)より、直火焼きの100%ビーフパティを最大限美味しく味わえるシンプルな本格バーガー「グリルド・ビーフバーガー」を新発売いたします。
自慢の直火焼きの100%ビーフパティ2枚に、パルメザンチーズとカマンベールチーズを合わせたホワイトチーズソースで仕上げました。バーガーキング最大の特長である、ジューシーで香ばしい、直火焼きの100%ビーフパティを最大限美味しく味わえるシンプルな本格バーガーです。』
とのこと。
何となく、会社に入って生まれて初めて西海岸に海外出張した時に、米国子会社に行く前に、託された日本からのお土産を渡すために挨拶で立ち寄った兄弟会社のオフィスで、出向赴任していた先輩が「ランチで外に食べに出る時間が無いから」と、オフィス近くに来ていたキッチンカーから買って来てくれて初めて食べた本格的なハンバーガー。粗挽き肉のパティがまるでステーキを食べているかの様で、大袈裟ながら「これがアメリカか!」と感激した記憶があるのですが、何だかそれを思い出しました。
僅か一週間ちょっとの横浜滞在中、娘たちには飽きられながら、私の希望でこのグリルド・ビーフバーガーを私メが自分でテイクアウトして来て皆で三度食べました。しかも日曜日のランチタイムは大混雑で、注文して受け取るまでに優に30分以上も掛かりながら・・・。
コストか或いは食材調達の都合か、このグリルド・ビーフバーガーは残念ながら期間限定商品とのことですが、実に勿体無い!通年で販売すれば多少高くても(単品で790円)絶対に看板商品になれる筈!
今度もし来る機会があった時に、また食べることが出来るかなぁ・・・?それよりも、バーガーキング、松本にも出店してくれないかなぁ!・・・。
(因みに、以前の日本進出時は西武系、その後はJTと組んでのフランチャイズ展開は上手くいかず首都圏のみで撤退し、その後ロッテリア傘下となった既存店舗と、併せて日本での営業権を持つ外資投資会社が設立した日本法人が新規店舗を自社展開しているとのことですが、今度は是非地方にも展開して欲しいものです)
5泊6日での、初めての南紀白浜の旅。
泊りの最後の日は、せっかくですので地元の新鮮なお寿司を食べることにしました。
グルメサイトでもっと高評価の店もあったのですが、近くて歩いて行けることから選んだのは、日本書紀にも登場し、道後、有馬と共に日本三大古湯に数えられるという白浜温泉の中でも一番古い源泉「行幸源泉」(みゆきげんせん)のすぐ横にある「ホテルシーモア」内の「すし八咫(やた)」です。
ここ南紀白浜も温泉地としてはご多分に漏れず、古くなった旅館が目立つ中で、ここシーモアは数年前に全館リニューアルしたらしく、館内もキレイで家族連れ中心に人気で宿泊は結構混んでいる様でした。
そしてこのホテルには、ビュッフェレストランの他に宿泊客以外でも利用出来る、「いけす円座」という店の中央に配した大型いけすを眺めるカウンター席とゆったりとした小上がり席で、その日水揚げされた新鮮な魚貝類が楽しめるという100席の海鮮レストランがあり、その海側の一角に別店舗で、僅か16席のカウンター席の「すし八咫」があって、オーシャンビューの窓越しに拡がる白浜の海を眺めながら、目の前で板前さんが握ってくれる寿司を楽しめるのだとか。
せっかくなので、案内では夕食も二部制とのことから、事前に予約して最初の17:30の部をお願いしてあります。
家内がホテルの土産物ショップを見たいというので早目に行って、時間になってホテル玄関とは別の海鮮料理店の玄関から入店し、名前を伝えて席に案内頂きましたが、我々が一番乗りでした。
メニューの中から、三種類の寿司コースの中から真ん中の「桃」(税込3850円)と、一品で金山寺味噌きゅうり(550円)と生ビール、地ビールと地酒をオーダー。目の前で握ってくれる板さんと会話しながら、サーブを待ちます。コース内容は、
・おまかせの握り 本日の鮮魚10貫
・小鉢
・蒸し物(この日は茶わん蒸しでした)
・鮑踊りステーキ
・あら汁
・水物
とのこと。
付け出し風の小鉢(何だったか、クラゲの和え物だった様な…)の後、1貫目にカツオ。これが、今まで食べたことが無いくらいモチモチと歯応えがあり生臭さが無く、新鮮で美味!
何でも春の白浜は、釣ってから四五時間数時間しか経過していないカツオ、「もちガツオ」のシーズンとのこと、「もちガツオ」とは、釣ってから約4~5時間以内のモノ」で、「身に脂肪分が少ないため弾力があり、餅のような食感から、もちガツオ」と呼ばれるのだとか。しかし、新鮮なだけではダメで、身にこの弾力がなければもちガツオではないので、見ただけでは判別出来ず、漁業や飲食店の関係者も身を切ってみないとわからないのだそうです。
勿論、初めて食べたのですが、今まで食べたカツオ(たたきとか)の概念が変わりました。本当にべちゃっとしておらず、歯応えというか弾力がある。最初食べた時は、思わず「えっ、これってカツオですか!?」
いつもは生臭いとカツオは食べない家内も、これは美味しいと絶賛でした。
ここの寿司の握りの特徴は、醤油を付けず、ポン酢のジュレ、卸しポン酢、新タマネギの醤油漬け、泡醤油とか、ネタに合わせて工夫を凝らした調味料がそれぞれのニギリの上に載せられたり、ネタ自体にたまり醤油などのタレが塗られていたりと工夫されていて、自分で醤油を付けることは一度もありませんでした。
目の前にいる板さんとの会話(例えば、今までで一番凄かった大型台風の時は、目の前に見えているホテルシーモアの沖合100mの地点に位置する、高さ18m、水深8mの海中展望塔を大波が乗り越えて来たのだとか・・・。一瞬、「本当ですか?」と思わず聞き返してしまいましたが、ここからすぐの三段壁の“サドンロック”のことを考えると有り得そうな話です)や最初のカツオで感動し、途中まで写真を撮り忘れていて、撮った写真も何なのか覚えておらず、写真のみで恐縮ですが、どれも本当に新鮮で美味しかったです。
この日とりわけ感動したのは、「鮑踊りステーキ」。陶板焼きの器に蓋をして蒸し焼きにするのですが、アワビ自体も勿論ですが、特に肝ってこんなに美味しいんだ!と感激する程でした。生臭さも泥臭さも全くしないのです。オドロキでした。 (写真の奥に写っているのがアワビです)
この「すし八咫」の寿司一貫のニギリは、普通の寿司屋のニギリに比べると、ネタは小ぶりでシャリも少なめ(次女が済んでいた頃、成田に行く度に行った「江戸ッ子寿司」に比べると半分以下、もしかすると1/3位かもしれません)ではあったのですが、この値段でこの内容なら(白浜の他店の状況は分かりませんが)海無県から来た人間としては大いに満足でした。
しかも、白浜の海を一望するカウンターで、握りたての寿司をいただける何とも贅沢な時間でした。
また、このシーモアには、ホテル内にある焼き立てパンのお店「TETTI BAKERY&CAFE(テッティー・ベーカリー・アンド・カフェ)」があって、滞在先の近くにはカフェが無かったので、何度かお世話になりました。もし晴れていれば、買ったパンとドリンクを店内のイートインだけではなく、オーシャンビューのソファー席や、屋外の海の見える広いテラスで食べることも出来ますし、広い足湯やインフィニティ・プールもあって泊まりも楽しそうでした。因みに、店名は南紀地方の方言で「とても」とか「すごく」を表す「てち」を店名にしたそうです。ホテルのロビーフロアの1階にあります。
白浜滞在中近くに喫茶店が無かったこともあり、気に入った家内が3度訪れたそのカフェだけではなく、娘たちや孫たちへのお土産も、両方事前に見比べた上で、もっと大きな土産物コーナーのある「とれとれ市場」ではなくこちらのホテルのショップで購入しましたが、スタッフの皆さんも大変親切で接客もとても良かったそうです。
さて、余談になりますがこのホテルシーモアのすぐ横には「行幸の芝」(みゆきのしば)という石碑が立っていて、さらにその下の道路脇に湯を汲み上げるための鉄塔が4本立っていて湯気が常に噴き出し、近くに行くと硫黄の匂いがします。白浜温泉でも一番古い「行幸源泉」です。
その「行幸の芝」という意味不明の名前に惹かれて行ってみました。解説板に由ると、この記念碑一帯(湯崎、崎の湯付近)の台地は、字名(あざな)「行幸の芝」と呼ばれ、飛鳥時代に斉明天皇が湯治のため滞在された、「行宮跡」があった所なのだそうです。調べてみると、
『大化の改新を成功させた中臣鎌足と後の天智天皇である中大兄皇子は、孝徳天皇を即位させました。その子である有間皇子にも皇位継承の可能性も多分にあったのですが、蘇我赤兄に謀反をそそのかされたことで運命の歯車が狂います。逆に赤兄らによって邸を包囲され、囚われの身となってしまいました。中大兄皇子の裁きを受けるために紀伊国・牟婁の湯に行幸中の斉明天皇のもとへ護送される途中、有間皇子が詠んだ1首が藤白坂の入口に歌碑として残されています。「家にあれば 笥(け)に盛る飯を 草枕 旅にしあれば 椎の葉に盛る」(家にいれば器に盛るご飯を、こういう旅だから椎の葉に盛ることだ)。
有間皇子はその後、牟婁の湯へ到着し中大兄皇子の厳しい尋問を受け飛鳥へと送還されます。そして、その途中藤白坂で絞首され、19歳の若い命は絶たれてしまうのです。』
従弟の中大兄皇子が滞在していたこの行幸の芝の地に在った行宮に有間皇子を護送させ、この地で中大兄皇子の尋問を受け、その後和歌山県海南市の藤白坂という場所で処刑されたのだとか。道後、有馬と共に三古湯の一つとされる白浜温泉(牟婁の湯)。その歴史の古さを実感することが出来ました。
因みに、その悲劇の有間皇子はその前年、療養のためと称して牟婁(白浜)へ行き、帰京後、その地の素晴らしさを伯母である斉明天皇に報告。そして斉明天皇はこの年、中大兄皇子を伴い、牟婁を訪れていました。
有間皇子は悲劇の主人公ですが、白浜にとってはこの地に行宮を建てた斉明天皇と共に温泉を世に知らせた恩人でもあり、白良浜の近くに「有間皇子之碑」が立っていて、毎年6月にそこで献湯祭が行われているのだそうです。
蛇足ながら、松本にも天武天皇の行宮が置かれていました。松本は古代「束間」(ツカマ。後の筑摩)と呼ばれていて、白浜温泉(牟婁の湯)同様、日本書紀にも登場する束間の湯(今の美ヶ原温泉或いは浅間温泉とも)を気に入っていた天武天皇の行宮が置かれ、天武天皇は束間への遷都まで計画し、調査させたのだそうです(崩御により中止)。
初めての南紀白浜旅行。メインの目的は長年の夢だった熊野古道を歩くことでしたが、たまたま行ったのが5月だったので運良く「もちガツオ」を生まれて初めて食べることが出来ましたし、また新鮮なアワビの肝の美味しさも初めて知りました。そうした新鮮な海の幸も堪能した今回の旅行でした。来るまでは南紀白浜と聞くと、何となくパンダのアドベンチャーワールドと温泉・・・というだけのイメージだったのですが、実際に現地を訪れてみて、熊野古道とはまた別に、遥か万葉の頃より都との関連が在り、歴史の舞台ともなった場所だということを知った、初めての南紀白浜への旅でした。
“海無し県”の山国信州から海辺の町に来ると、お魚のその新鮮さには感動するばかりです。
初日、ホテルへのチェックインする前に、西日本最大級という海鮮市場の南紀白浜「とれとれ市場」に立ち寄り。「とれとれ横丁」には各種海鮮丼などがあるのですが、こちらは持ち帰りが不可なので、鮮魚コーナーでその日のホテルでの夕食用に、鯛、マグロなどの船盛とヒラメなど好みの刺身を購入。
どれも新鮮で美味しかったのですが、特に鯛(種類は不明)がプリプリで本当に美味しかった!(因みにつまみ用に揚げ物も買ったのですが、こちらは小田原には敵いませんでした)
滞在中は、刺身のテイクアウトだけではなく、フードコートの「とれとれ横丁」でランチに海鮮丼も食べましたし、さすがに毎日刺身では飽きるので、二度、一度は気分転換にBBQ用食材店から熊野牛や野菜などを買って帰って、ホテルの部屋はキッチン付きなので焼き肉にしました。また一度はピザをテイクアウトして(マルゲリータと、白浜故にシーフードも)夕食にしました。
海鮮では、別の日には「とれとれ市場」より近くて白浜の街中にある「フィッシャーマンズワーフ白浜」で、海鮮丼をテイクアウトしてみました。
こちらは「とれとれ市場」に比べれば遥かに小規模ですが、南紀白浜にある地元の漁師さんたちが運営しているという施設で、目の前に広がる白浜の湯崎漁港で水揚げされた魚が並び、早いモノだと水揚げから5分以内に店頭に並ぶこともあるのだそうです。
一階には海鮮丼のイートインや、刺身や焼き魚や煮魚、干物などの販売コーナーと別フロアにはダイバーズショップも。二階には海鮮レストラン、そして屋上の三階はBBQのフロアとか。
イートインのコーナーはテーブルが幾つか並んでいるだけの質素な感じですが、丼は10種類くらいあって、地元の料理さんたちが調理もしてくれている様です。我々は夕食用に、私は上海鮮丼(税込1580円)、家内はシラス丼(1460円)を注文し持ち帰りました。
刺身、しらす、ご飯とそれぞれ別々にしっかりトレイに盛って二重にラップしてくれてあり、シラス丼はしらすと玉子焼きに付け合わせの野菜は別のトレイに分けてくれてあるなど、無骨ながら親切丁寧な感じがしました。
個人的は、観光客相手の「とれとれ市場」よりもこちらの「フィッシャーマンズワーフ」の方が素朴で、海無し県的喩えで恐縮ながら、信州の農家の産直売場の“海版”の様な感じで、むしろ親近感を感じました。値段は「とれとれ市場」のイートインと同じ位かもしれませんが、量は1.5倍くらい多いのではないでしょうか。正直食べ切れませんでした。そして、こちらもどのネタもプリップリで新鮮そのもの。いやぁ、ホント旨い!
最終日前日にも、お土産(というか、松本の自宅には食材の買い置きが無いので、帰った日の夕食用に)にシラス丼をご飯抜きでとお願いしました。すると、ご飯抜きの値段は無いとかで、従来のシラス丼の値段でしたが「ご飯の代わりに、その分シラスを多目に入れといたからね!」とのこと。
(確かに、松本に帰ってから開けてみたら、二人で優に二日分はありました)