カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 先述の通り、昨秋の二倍強というジュピターコーヒーの大幅値上げに伴い、我が家のコーヒー豆をこれまで定期的に購入していた同店のモカブレンドから、他の店の豆に変更することにしました。
スーパーマーケットには自分の好みに合う豆が無かったので、そこで先ずは地元の三澤珈琲で自身の嗜好に合う豆を探してみることにしました。

 三澤珈琲も軽井沢発祥の丸山珈琲同様に、自分たちで生産地に飛んで豆を探し自ら焙煎して販売しているコーヒー専門業者で、長野県塩尻市に本拠を置き、カフェを併設している松本店がマンションから車で数分の所に在ります。
三澤珈琲が自らブレンドし自家焙煎した10種類近いブレンドコーヒーの中には残念ながらモカブレンドはありませんが、そのオリジナルブレンドや三澤珈琲が自ら生産地に足を運び選んで焙煎したスペシャルティや特定の農園から個別に契約して仕入れているシングルオリジンなど全部で30数種類の豆の中で、色々試してみて自分に一番合う豆を探してみることにしました。

 三澤珈琲のオリジナルブレンドには、マイルド、レトロ、ビターなど10種類近くありますが、例えば生産地の種類別や特定農園のシングルオリジンまで、豆毎に常時30種類以上を取り扱っていて、その中で、例えばマイルドコーヒーの代表格であるコロンビアは100gで400円(以下全て100gの税込価格)、酸味の強い品種であるキリマンジャロが480円、エチオピア・モカは680円でした。因みに三澤珈琲は既に昨年7月に価格改定をしており、上記は改定後の値段です。
H/Pでチェックしてみると、コーヒーの味のバランス評価で、「苦み-酸味-コク」の5 or 4段階評価だと思われますが、個人的嗜好である酸味の強さから順に選ぶと、

・ エチオピア・チェルベサ(モカ)     ・・・・1‐4‐2 
・ キリマンジャロ               ・・・・2‐4‐3
・ コロンビア                   ・・・・2‐3‐2
・ パナマ(バホモノ農園)           ・・・・2‐3‐3
・ ホンジュラス(ミゲル・エンジェル農園)・・・・2‐3‐3
・ グアテマラ                  ・・・・3‐2‐3
・ マイルドブレンド              ・・・・2‐3‐3
・ 浅煎りブレンド               ・・・・1‐2‐1
 先ずは安い方からで、モカ同様に酸味が強いキリマンジャロ(100g 480円)とマイルドコーヒーの代表格コロンビア(同400円)を試飲のために100gずつ買ってみました。そして、それが終わってから他の豆も順番に買ってみました。
因みに、店舗で酸味の強いブレンドを伺うと、浅煎りブレンド(同530円)とのこと。仮に同じ豆であっても、確かにエスプレッソに代表される焙煎時間の長い深煎りは苦みが強くなり、逆に焙煎時間の短い浅煎りは酸味が強くなるのですが、その反面コクが無くあっさりしているので、一般的には浅煎りはモーニングコーヒー向きと云われます。しかしそうした焙煎度合いの違いだけでなく、豆の種類や品質(生産地や農園の栽培方法の違いなど)に依って、良い酸味のコーヒーはベリーやオレンジなどの果実にも例えられる様なフルーティーな感じがすると云われています。
店独自のブレンドの中で、マイルドブレンドはコロンビアとブラジルという或る意味ブレンドコーヒーとしての定番で、「ほど良い酸味とコク」と謳われています。
シングルの豆の中では、シングルオリジンのパナマ・バホモノ農園は販売終了で買えませんでしたが、同じシングルオリジンのホンジュラスのミゲル・エンジェル農園含め、上記のシングルの豆も全て購入して試してみました。
ただ、以前のジュピターコーヒーのモカブレンドの時は焙煎度合いが深かったのか、手動でのコーヒーミルを割と粗挽き気味に設定していたのですが、どうやら三澤コーヒーの豆は深煎りではなく中煎りから浅煎りに近い様な軽めの焙煎が多いのか、粗挽きでは軽めが好きな家内が「もう少し濃い目にして」と言うくらいにアッサリし過ぎていたので、色んな豆を試している途中で、少し細かくして中挽きくらいで(使っている手動ミルには目盛がありませんので、何度か試して)挽く様に変更しました。従って、飲んだ感覚(印象)は粗挽き気味のモノと、変更後の中挽き気味のモノと“ごちゃ混ぜ”になっています。
コーヒー好きの方はお分かりだと思いますが、細挽きにするとコクは増しますが併せて苦みも強まってしまい、個人的にはそれが好みではないので結果中挽きにしています。
因みに、昔会社勤めをしていた頃は朝忙しいこともあって電動ミルを使っていた時期もあったのですが、リタイアして“十二分”に時間のある今は、むしろじっくりゆっくりと挽く手動の方が何となく気分も落ち着きますし、何よりも、如何にも「これからコーヒーを淹れるゾ!」という気になれるので、カリタの手動ミルで“豆を挽く時間”も楽しんでいます。
勿論、手動の場合、電動ミルに比べて伝わる力が均一ではないので、どうしてもムラが発生しますが、喫茶店の様に淹れたコーヒーを商売にするならともかく、個人で楽しむ場合は気にする必要はありません。
(そこまで拘るなら、ハンドドリップで淹れたらと思われるかもしれませんが、一杯分なら良いのですが、家内の分も含め何杯分も一度にドリップしたいので、ずっとメリタのドリップ式コーヒーマシンを何台か続けて愛用しています)
 さて、その結果上記に挙げた豆を飲んでみて感じたのは、一番酸味が強い筈のエチオピア・チェルベサ(モカ)は想像していた程には酸味が感じられませんでした。それは、三澤コーヒーがこの豆を「比較的軽めに煎り上げている」せいかもしれません。
また、同じく酸味が強い豆のキリマンジャロは「力強さとキレのある酸」とのことですが、個人的にはもう少しコクが欲しい気がしました。
コロンビアは確かにマイルドでバランスが良く、そういえば昔結婚して赴任するまでは、松本市内のコーヒー専門店である「斎藤コーヒー」でコロンビアばかりを買っていました。
グアテマラは、以前長女が麻布台に住んでいた時に連れて行ってくれた六本木の「VERVE COFFEE ROASTERS 」で飲んだ中にシングルオリジンのグアテマラがあって、それが酸味もあって美味しかった“舌の記憶”があったのですが、買った豆は残念ながら違っていました。
三澤コーヒーの幾つかあるオリジナルのブレンドの中では、薦められた先述の浅煎りブレンドよりも、むしろマイルドブレンドの方が酸味を感じられ、コロンビア同様にその名の通りマイルドでコクもあって全体のバランスが良い様に感じました。
 こうして色々試した三澤珈琲の豆の中で、一番酸味が効いていて個人的に一番全体のバランスも良くてコクも感じられたのは、シングルオリジンのホンジュラス(ミゲル・エンジェル農園)でした。
この豆は標高1500mの高地にあるミゲル・エンジェル氏の農園で栽培されている豆で、2023年に三澤珈琲のメンバーがグアテマラに視察に行った際に、ホンジュラスのその農園も視察する機会があり、「ミゲルファミリーのコーヒー生産に取り組む姿勢やポテンシャルの高さに感銘を受けて、三澤珈琲として入荷することを決めた」のだそうです。
この豆の持つ「リンゴを思わせる、ジューシーで上品な酸味が特徴」という表現も納得出来る味でした。問題は常時入荷していない様で、何度目かで漸く出会ったのと、100gで600円という価格でしょうか。
 「うーん、ちょっと高いなぁ。しかも、常時販売されていないしなぁ・・・。」
会社勤めだった昔ならいざ知らず、年金生活者となった今は毎日数杯飲むには少々贅沢かもしれません。
そのため、ホンジュラス(ミゲル・エンジェル農園)は、次女の婿殿から頂くゲイシャコーヒーと共に、自分にとっての特別な時用の、文字通り“スペシャルティ”コーヒーとして楽しむことにして、デイリーユースの豆は別に探してみることにしました。
因みにコロンビアとマイルドブレンドはどちらも400円、キリマンジャロが480円。モカのエチオピア・チェルベサは680円です。
因みにホンジュラスは別格として、三澤珈琲の中からコスパと好みから選ぶとすれば、やはりマイルドでありながら酸味も多少感じられてバランスの良かったコロンビアでしょうか。100gが税込みで400円という価格は出色です。
 次に、今度は海外赴任前に定期的に購入していた松本の街中に在る「斎藤コーヒー店」にも久しぶりに行ってみることにしました。こちらは多分50年以上も松本市内で自家焙煎をしている、古くからのカフェ兼コーヒー販売店です。
以前は松本駅前にも販売専門の支店があって、通勤用に駅近に月決めの駐車場を借りていたので、車を停めて歩いて買いに行っていました。しかしその店が無くなり、以前は大名町通りに面していて一階が駐車場で2階が喫茶店だった本店は、今は市営の大手駐車場の一階部分に移転して、喫茶店と豆の販売コーナーを併設しています。道路を挟んで店の対面には、2年前に松本城公園から移転開館した「松本市立博物館」があります。
斎藤コーヒーでは200gずつ真空パックにしてくれるので、当時はコロンビアばかりを豆で1㎏まとめて購入して冷凍保存していました。
 今回は斎藤コーヒーの各種ブレンドも含めて20種類程ある豆の中から、モカブレンドと懐かしいコロンビア(スプレモ)も購入することにしました。因みにスプレモとは、コロンビアの基準をクリアした最上級の豆に使われるスペイン語の名称で、英語で言えば supreme です。
コロンビアスプレモが100gで480円(税込)、モカブレンドも同じく100gで480円(税込)だったのですが、残念ながら値上げされて、この2月からそれぞれ100g 550円になってしまいました。更に残念だったのは、こちらでの支払いは現金のみで、カードも今主流のQRコード決済も不可とのことで、ユーザー的には今時どうかという疑問を感じないではありませんが、それが店の主義であれば致し方ありません。
ただ、昔もそうでしたが、斎藤コーヒーでは常に(例え200gしか買わなくても)真空パックにしてくれるのは消費者としてはとても有難い。焙煎された豆は、挽いた粉程では無くても、やはり酸素に触れることで常時酸化していくからです。しかも、更に有難いことに、斎藤コーヒーの200gはサービスしてくれているのか良心的で、他の店の200gよりも15g程多いのです。
さて、斎藤コーヒーのモカブレンドは、モカシダモ40%、ブラジル30%、コロンビア30%という配合比率で、モカは渋味が出ない様に生豆を水で洗浄してから使用しているとのこと。焙煎も割と中煎りよりも少し深めな感じがしました。というのも、電動ではなく手動でミルで挽くと、浅煎りの豆は抵抗を感じないくらい柔らかく、逆に深煎りの豆だと力を入れないと挽けないくらいの抵抗を手に感じます。それだけ焙煎度合いの違いで、深煎りでは豆自体も水分が抜けて固くなるということなのでしょう。
味はマイルドでコクもありながら、モカらしい酸味もそれなりに感じます。ブレンドに用いたコロンビアも効いている様です。また焙煎度合いを深めにしているのも同じ配合でも味に深みを与えてくれるのでしょう。
続いて、昔これ一辺倒で購入していた、斎藤コーヒーのコロンビアを30年振りくらいに試してみました。こちらも割と中煎りから深煎りに近い感じがします。コロンビアらしいマイルドさもありながら、深いコクと酸味もモカ程ではないにしても予想以上に感じられました。ただ、先述の様に焙煎度合いが深煎りに近いせいか、当初は今までと同じ豆の量で挽いてドリップをしていたのですが、豆を挽いた段階で奥さまから「何だか焦げ臭くない!?」という指摘があり、淹れたコーヒーも「ちょっと濃過ぎる」とのこと。特にコロンビアスプレモはそう感じた様でした。従って、斎藤コーヒーは一杯分の豆の量を少し減らした方が良いかもしれません。
 以上4ヶ月間、飽くまで自分の嗜好をベースに、色々悩んだ末に出した結論。
暫くは、三澤珈琲のコロンビアを我が家のデイリーユースの豆にすることにしました。ただ焙煎が少し軽めに感じるので、個人役な好みで少し豆の量は多めに挽くことにしました。
斎藤コーヒーのコロンビアスプレモもモカブレンドも個人的には好みで美味しかったのですが、残念ながらここで値上げしてしまいましたので、やはり三澤珈琲のコロンビアの100g 400円という価格は年金生活者の我が家にとっては魅力的です。そして、たまの“スペシャルティ”には婿殿から頂くパナマのゲイシャコーヒーと共に、三澤珈琲のシングルオリジンであるホンジュラスのミゲル・エンジェル農園(600円)を飲むことにしました。
なお、時には気分転換で酸味の強いモカも飲みたいので、家内が次女の所に行って不在の時が良いかもしれません。その際には、全体の焙煎度合いも割と中煎りよりも少し深めな感じで、味が濃い目で家内には不向きでしたが、斎藤コーヒーのモカシダモ40%、ブラジル30%、コロンビア30%の配合比率というモカブレンドが酸味も感じられて、私メの嗜好には合う気がしました。特にモカシダモ(注記)は渋味が出ない様に生豆を水で洗浄してから焙煎しているとのことでしたが、ブレンドの味も酸味だけでなく全体のバランスも良く感じられました。一方、三澤珈琲のモカ(エチオピア・チェルベサ)は、「比較的軽めに煎り上げている」というせいか想像していた程には酸味が感じられませんでしたし、値段も値上げ後の斎藤コーヒーのモカブレンド550円に対し、モカ(エチオピア・チェルベサ)は680円でしたので除外。

 ということで、地球温暖化の影響による世界的なコーヒー豆不作に伴い、昨年秋以降の大幅な値上げを受けて、我が家も巻き込まれた“珈琲豆狂騒曲”でしたが、漸く何とか自分の中では決着することが出来ました。
(ヤレヤレ・・・)

【注記】
コーヒー豆のモカとはコーヒー豆の収穫産地を指す銘柄で、イエメンのモカ港から出荷されたコーヒー豆のことを云い、モカという名前は、この港の名称に由来。
このモカ港は嘗てコーヒーの積出港として栄え、コーヒー発祥の地であるエチオピア産のコーヒー豆もイエメンのモカ港から輸出されていた。そのため、モカにはイエメン産とエチオピア産の2種類がある。
モカは世界で最も古いコーヒー豆のブランドといわれていて、果実のような酸味や甘味、コクのある味わいが特徴。
現在、モカは生産地域毎に種類が区別されていて、イエメン産は「モカマタリ」という銘柄が有名で、エチオピア産には「モカシダモ」、「モカハラー」、「モカアビシニア」、「モカイルガチェフェ」などの銘柄があり、モカシダモはエチオピアの標高約2000m以上の高地のシダモ地区で多く栽培される豆で、 熟成した赤ワインのようなコクと上品さは「コーヒーの貴婦人」とも呼ばれ、 爽やかな酸味と華やかなフレーバーが特徴・・・とのこと。

 8月29日付けで、タブロイド判の郷土紙「市民タイムズ」に掲載されていた記事(記載されていたお名前はアルファベットの頭文字に変更しました)。

『松本市中央3の市特別史跡「源智の井戸」の清掃活動が曲がり角を迎えている。30年以上にわたって活動を担ってきた地元・宮村町一丁目町会(B町会長)の「源智の井戸を守る会」が、高齢化と後継者不足のため5月に解散。現在は有志が細々と続けているが「先が見通せない」と不安の声が上がる。地域のシンボルで観光名所でもある井戸を安定的に存続させるため、行政の関与を求める声もあり新たな対応が求められている。
 会解散後は、「そうは言っても井戸を放っておけない」と60~80代の町会有志4人が「井戸と花の会」(O代表)をつくり、月2回集まって井筒内の砂利に付いた藻を取り除いたり周囲の雑草を取ったりしている。(中略)
 守る会は7月、井戸を管理する市の担当課に解散を報告し、今後の市の関与を求めた。同課は、地元主体の現在のやり方は難しくなっていることを認めつつ「井戸は地域のシンボルであり地元が関われる体制は必要。業務委託も含め、来年度に向けて持続可能な形を模索したい」とする。
 中心市街地には、観光資源や災害時の生活用水として市が平成10年代から改修・整備を進めた井戸が21カ所ある。そのほとんどが町会などを通じて住民が日常の手入れを担っているが、少子高齢化や町会加入者の減少などで源智の井戸のケースと同じ問題を抱えるところは少なくない。
 B会長は「井戸は地元の誇り。清掃できなくなったからといって任せっ放しにはしない。どんな関わり方がいいのか地元としても考えていきたい」と話している。』

 松本市内の高砂通り、通称人形町に在る「源智の井戸」。
環境省の「平成の名水百選」にも選ばれている松本の「まつもと城下町湧水群」の中でも、戦国時代の世から“当国一の銘水”と謳われた井戸であり、我が家では毎日のコーヒーのドリップ用に10年前からほぼ隔週で水を汲み行って戴いて来ているので、これまでも何度かブログでも紹介させていただいています。
はっきりとした四季があり、温帯に属する日本列島はある意味“水の国”であり、水資源に恵まれた列島です。四季の中で、雨季である梅雨や台風、そして雪などのお陰で降水量も多く、世界平均と比べて我が国の年間平均降雨量は約1.6倍にも及ぶと云います。
その水の豊富さと共に、この国の“水の旨さ”をそこに暮らす我々日本人はあまり意識していないかもしれませんが、海外に行くと容易にその違いに気付かされます。
水に関して、例えばエッセイストの平松洋子女史の「水の味」(以下、第497話より一部引用)に、日本の水について興味深い記述があります。

『「・・・煮る、さらす、浸す、茹でるといった水を中心とした調理法で、微妙な味わいで素材を引き立たせる日本料理は、京都の軟水だからこそ進化した」という件(くだり)でした。その逆で、フランス料理は硬水だからこそソースがミネラルと結合することでしっかりと主張し、切れが出るのだとか。シチューのようにコトコトと煮込む欧州の料理も硬水だからこそ、なのだそうです。また、我国でも関西の軟水と江戸の硬水の違いにより、お米の炊き具合が全く違うのだとか。その結果、「硬水で炊くために米が“粒立つ”江戸では、一粒一粒がくっ付かず、空気を含めてフワっとなるからこそ握り寿司が発達し、一方の軟水の関西では米粒が融合し交じり合うことから棒寿司(箱寿司/押寿司)が発達したのだ」・・・。』
 では、「源智の井戸」の水質は?と気になって以前にも調べています(第1040話参照)。
『すると、ちゃんと井戸の掲示板に、市が県薬剤師会に依頼(H27.7.30採水)した、今年度の水質検査の結果報告書が貼ってあり(薬剤師会のHPにも掲載されています)、「源智の井戸」は「硬度140」だそうです(ネット上には「硬度113」と記載した別の記事もあり)。
国ごと、また規格によって必ずしも分類が統一されていないようですが、一般的には硬度100以下が軟水。300以上が硬水。その間を中硬水と呼ぶという基準に従うと、「源智の井戸」は中硬水となります。ところが、すぐ近くにある酒蔵の「女鳥羽の泉」は軟水とのこと(因みに、諏訪地域の酒蔵で使われる霧ケ峰の伏流水も軟水。硬水の代表格は灘。新潟も軟水だそうですが、「天狗舞」は中硬水とか)。
この狭いエリアでも、水源によって水脈が違い、その水質は異なるようです。因みに我が国の生活水の80%は軟水とか。逆に石灰質の地層の欧州(大陸)は硬水。一般的に、硬度は炭酸カルシウム(CaCO3)の濃度で表されますが、旨味はそれだけでは無いようです。一口にミネラルウォーターと言っても、例えば“南アルプスの天然水”は軟水(硬度30)で、エビアンは硬水(硬度304)。昔から飲みなれた軟水の方が、日本では好まれるそうです(お腹にも優しい)。硬度を示すカルシウムとマグネシウム以外に、カリウムとナトリウムもミネラル分とされています。
また、緑茶は軟水の方が旨味が出て、紅茶は硬水の方が香りが立つとか。そして、コーヒーは、同じ豆でも軟水の方がマイルドで、硬水の方が苦味が引き立つとのこと。要するに、硬度を示すCaCO3の数値だけでは水の旨さは表せないということでしょうか。
一般的に言えば、煮物などの和食用には、「源智の井戸」は中硬水で余り向かないということになりますが、果たしてどうなのでしょうか?
要するに、“自分に合った水を、自分の舌で探す”しかないようです。その意味で、「源智の井戸」はミネラル分が豊富で、さすがに当国(信濃)一と言われただけの美味しい水でした。』
(源智の井戸などの湧水が流れ込む榛の木川や蛇川にはニジマスが棲んでいて、また人が植えたモノかもしれませんが、清流にしか育たない山葵も生えていました)
 この10年間、隔週で水を“タダ”で頂いている「源智の井戸」。その美味しい水がこれから一体どうなってしまうのだろう?
これまで、ただ水を頂くだけでは申し訳なく、井戸の脇に有る小さな祠に僅かばかりのお賽銭を行った都度納めさせては頂いては来たのですが、自分にも何か出来ることは無いのかと、居ても立ってもいられませんでした。
そこで、市役所のH/P経由で広報課にメールを送り、もし必要があれば自分はボランティアとして井戸清掃に参加可能な旨を連絡してみました。
しかし特に何の反応も無かったので、新聞報道を受けて、きっと市や地元町会で今後の対応について何らかの対処がされたのだろうと思って安心していました。

 ところが、連絡して3ヶ月も経った11月末。突然、市役所の担当課の方から連絡があり、どうやら報道後も特に状況は変わっていない様子。その担当の方から井戸を清掃している代表者の方の連絡先を教えられて、未だもし興味があったら連絡してみてくれとのこと。
早速電話で連絡をしてみると、藻の繁殖が弱まる冬季は月二回の清掃をしていて、連絡をした数日後がちょうど当月の清掃をする日なので、もし都合が良ければ見学がてら参加してみてくれとのことでした。
そこで、その当日。未だ明けきらずに暗い内に家を出て、渚から歩いて20分。朝6時半過ぎに「源智の井戸」に到着し、これまで水を頂いて来たお礼も兼ねて、地元の有志の方々の井戸の清掃活動に、私もボランティアとして参加することになりました。

 諏訪発祥のラーメン店「ハルピンラーメン」。
40年前に諏訪に住んでいたこともあって、当時飲んだ後の〆に必ず食べに行っていたラーメンです。しかし、以前にもご紹介したことがあるのですが、今の「ハルピンラーメン」とは当時は経営が異なっていました。第525話でご紹介したその内容は、
『ハルピンラーメン・・・終戦で満州から引き上げて来られたご夫婦が、諏訪で屋台を引いて始めたラーメン。その味に感激した町の素封家婦人が出資をして、並木通りの踏切近くに店を出したのが始まり。この並木の店が、諏訪で飲んだ後に〆で必ず食べに行った店なのでした。
しかしご夫婦には跡継ぎが無く、出資をした素封家が経営権も取得して、その婦人の孫が経営を引き継いで、それまでの並木通りから新たに諏訪の中洲に移転したのが現在のハルピンラーメン。しかし、その際一つだけレシピの調味料を教えなかったという真(まこと)しやかな噂、諏訪の“都市伝説”があるのです。』
また、第997話では、
『まだ「ハルピン(哈爾濱)ラーメン」が諏訪の並木通りにあった頃(30年近く前ですが)は、飲んだ後の〆は決まってここでした。
その後(戦後屋台から始めたというご夫婦がリタイアして経営を譲り)中州に移転したために行けなくなりましたが、今では諏訪地区だけでなく、松本の並柳や塩尻の広丘にも出店し、松本エリアでもハルピンラーメンが食べられるようになりました(30年以上前の一時期、松本駅のすぐ横にカウンター席だけの小さな店がありましたので、松本平には再出店)。
昔懐かしのハルピンラーメン。ニンニクをベースに二年以上寝かせたという、他店にはない、醤油とも、味噌とも、醤油トンコツとも違う独特のタレ。基本は醤油がベースだとは思いますが、何年か熟成された結果、一見すると味噌の様に濁っています。移転後、少し味が変わったという評価も諏訪では時々耳にしましたし、実際に下諏訪で食べた時も、昔とは確かに違うかな?(昔の方が美味しかった)と感じました。
しかし、この日のスープは殆ど昔の味!(だと思えました)。
その日の舌(体調?)や下拵えでも、微妙に味は変化するとは思いますが、舌に残った味わいは30年前の記憶を呼び覚ましてくれました。かなり甘味の残る一方で、唐辛子系の辛さも舌に残るハルピン独特のスープです。細い縮れ麺に良く絡みます。そう、この味です。ただ、昔良く食べたハルピンラーメンに比べると、以前のチャーチューは、丼が隠れる程大きくて、煮豚的な味付けがされていて、しっとりとしたモモ肉のチャーシューだったように思いますので、全てが昔と同じではありませんが、ラーメンはやはりスープが命ですので、その意味では懐かしいこの味だったと感じました。』

 そんなハルピンラーメンを久し振りに無性に食べたくなりました。
ラーメンが好きではない奥さまは誘っても絶対一緒に行ってはくれませんが、その奥さまは長女に会いに行っていて不在。そこで、平日庄内のホームセンターへ買い物に行ったついでに、近くに在る「ハルピンラーメン松本並柳店」へ食べに行くことにしました。
最近ではメニューも色々ある様ですが、個人的には「ハルピンラーメン」一択です(税込825円)。嬉しいことに、平日は大盛り無料とのことで、勿論大盛りでお願いしました。
先ずはスープから。そう、この味です。最初は甘く感じるのですが、飲むほどに辛味も感じられて、段々汗ばんできます。麺はスープが良く絡む細縮れ麺。トッピングは、メンマに茹でモヤシにネギ、そしてもも肉か、低温調理された様な感じで、しっとりしたハムの様なチャーシューが二枚と海苔。昔、並木通りにあった頃は、丼を覆う位に大きくて、味付けされて柔らかなチャーシューだった様に思います。
スープもしっかり飲み干して、お会計の時にメニューにあった「並木」についてお聞きすると、にんにくを熟成させたタレがハルピンラーメンの3倍入った濃厚ラーメンで、並木に店舗があった頃のオリジナルレシピなのだとか。
経営権を取得して、元々の並木通りから諏訪の中洲通りの四賀に移って以降、ずっと「ハルピンラーメン」と称してやってきた筈なので、今更オリジナルは3倍と云われることに些か疑問を感じないでもないのですが、モノは試しに、自分の舌の記憶をふまえながら次回は「並木」を食べてみようと思いました。

 さて、片や同じく諏訪発祥のラーメンチェーン「テンホウ」。
実は、こちらにも「ハルピンラーメン」に良く似たラーメンがあるのです。それが「特製にんにくラーメン」。
メニューの説明に依ると、諏訪市の「中華そばてんほう城南店」の店長が、「かぜをひかないように」と開発したメニューとのこと。
勿論「ハルピンラーメン」を意識したとは書いてはありませんが、これが結構ハルピンにスープが似ているのです。
「にんにくラーメン」というメニューそのものは、他のラーメン店にもありますので、もしかするとレシピ的に似ることがあるのかもしれませんが、いずれにせよ、食べる側としては車で遠い「ハルピン」まで行かずとも、歩いて行ける近くの「テンホウ」で「ハルピンラーメン」に味の似たラーメンが食べられるのであれば、「ハルピンラーメン」好きとしては、それはそれで有難い・・・と、そんな気がします。しかも2年か4年か(昔は2年というキャッチだったと思いましたが、今は4年になっています)知りませんが、そこまでハルピンの様に年数を掛けずともここまで熟成っぽく(?)出来るのであれば、それでもいいのでは?と素人考えで思ってしまいます。
ということで、テンホウでラーメンを食べる時は大概「特製にんにくラーメン」(税込760円)を注文しています。テンホウでは、大盛りが+100円というのも有難い!従って、にんにくラーメンに限らずですが、スープ麺を頼む時はいつも大盛りでお願いしています。
テンホウの「にんにくラーメン」は、スープはやはり醤油ベースだと思いますが、味噌の様にこってり感と甘味もあります。テンホウの麺は中細麺。そこに、にんにくラーメンは茹でモヤシ、メンマ、豚バラチャーシューにきくらげと、こちらも海苔がトッピングされています。惜しむらくは、テンホウのバラチャーシューはホロホロと柔らかくて持ち帰り用に別売りしている程美味しいので、もう少し大きめのチャーシューにするか或いは枚数を増やすとかしてくれると、個人的には大変有難いのですが・・・。
双方の値段を比べると、ハルピンが税込みで825円(但し平日は大盛り無料)、テンホウは税込み760円で、大盛りだと860円。どちらもイイ勝負でしょうか。

 どちらも諏訪発祥で、地元では“諏訪のソウルフード”とまで讃え称されるハルピンとテンホウ。もし仮に、目の前にハルピンとテンホウと両方あったらどちらを選ぶかと聞かれれば、そこはやはり本家のハルピンラーメンを選びます。でもテンホウのにんにくラーメンもこれだけ食べられるのなら、歩いて食べに行けるという飽くまで我が家の至便性でテンホウのにんにくラーメンを選んでも、それはそれでイイのでは・・・と思っています。

 12月21日、まつもと市民芸術館で行われた、まつもと落語フェスティバルでの「桂二葉独演会」。私としては待ちに待った落語会でした。

 以前、全く以て“大きなお世話“ながら、第1836話の中でも書いたのですが、
『NHK新人落語大賞受賞をきっかけに、関西のみならず東京のキー局でのレギュラー出演もしている今や超売れっ子ですが、YouTubeで幾つかその後?の高座を聞くと(限られたYouTubeでしか聞く機会がありませんので、聴くことが出来るネタは限られますし、以前に収録された高座が多いので、もしかすると取り越し苦労で実際は違うのかもしれませんが)、枕が毎回ほぼ同じ(近所の“悪ガキ”の男の子との無邪気なやりとり)なのが少々気になりました。
バラエティー番組のレギュラー出演も全国的な人気取りには大切なのかもしれませんが、“大きなお世話”ながら、むしろちゃんと落語の修業を積んで、権太楼師匠が言われた通りもっと持ちネタを増やして、“女流”という修飾語など一切関係無い上方落語の実力派の噺家になって欲しいと、他人事ながら心配し、また大いに「 期待してまーす!! 」
(そして願わくば、大阪はちょっと無理なので東京の定席で、いつか一度は生で聴いてみたいと思っています。)』

 その桂二葉さんが、信じられないことにナントこの松本で独演会をすると知り、早速チケットを購入しておりました。
今回は「まつもと落語フェスティバル」と銘打たれた公演で、桂二葉独演会と、続いて柳亭小痴楽独演会の二本立て。
小痴楽師匠もNHKの新人落語大賞で初めて視て感心し(その時は次点)、以降二つ目時代と抜擢での真打昇進後と二回、「松本落語会」に出演されたので二度とも見に行きました。
今回も実は12月中旬の「松本落語会」の月例会にも出演され、今回の独演会と月に二度も松本に来演されたのですが、松本落語会は都合がつかず、今回の独演会は家内が次女の所に行っていて不在で、二葉さんの独演会から連続で聴くと昼から夕方まで半日も家を留守にすることになり、ワンコたちの夕食時間に掛かってしまうため止む無く諦めました。
ただ後で知ったのは、この日小痴楽師匠がトリで「文七元結」を高座に掛けた由。いやぁ、小痴楽師匠の人情噺、しかも「芝浜」と並んで12月に相応しい「文七元結」、聴きたかったなぁ・・・。残念でした。
 
この日の会場は「まつもと市民芸術館」の小ホール。こちらには駐車場が無いので、自宅から歩いて向かいました。
続々と人がホールに入って行くので、全員が二葉さんの独演会かと驚いたらそうではなく、この日大ホールで別に演劇の公演がある様でした。
小ホールは座席数288席との案内ですが、関西だけに留まらず、さすがの全国区の人気噺家。どうやら追っかけの方も含め、ほぼ満席。
 さて、この日の高座の最初の開口一番は、前座の三笑亭夢ひろさんで「狸の札」。話しぶりは声も大きくて、前座としてはなかなかお見事でした。後は表情でしょうか。
続いて、桂二葉さんが独演会として仲入りを挟んで三席演じられました。
最初がお馴染みの古典落語から「看板のピン」。
その前の枕。どんな枕か、期待していましたが、YouTubeで視ているいつもの悪ガキではなく、松本に因んだ内容で大いに会場を沸かせてくれました。さすがです。
先ずは独演会の経緯経過で、当初主催者から夏頃の公演を依頼されたのだそうですが、わざと11月以降に設定して貰う様彼女の方からお願いしたのだとか。その理由は「松本一本ネギ」。
お父上が松本平の知り合いから毎年取り寄せるのだそうで、二葉さんも「松本一本ネギ」の大ファンなのだとか。旬のネギを現地の松本で食べたくて、その時期の11月過ぎの高座をお願いしたのだとか。
 「下ナントカネギよりも松本一本ネギの方がよっぽど甘くて美味しゅうて、あんまり有名になったら困るんやけど・・・。今日は無理にお願いして安曇野の宿を取って貰うたので、明日、堀金の道の駅に行って、松本一本ネギ買うて帰ろうと思ってますねん!」
また、彼女は至る所で「マサムラのベビーシュー」を絶賛しているのが知られているそうで、この日の楽屋にも差し入れで大量に届いてピラミッド状態とか・・・(しかし、よう知ってはりますなぁ・・・。マサムラのベビーシューは、数年前に雑誌「dancyu」のシュークリーム特集で表紙を飾ったことがありましたが・・・)。
 「さすがに、いくらマサムラ好きな私でもそんなにはよう食べられません、八個くらいしか・・・」
そして、話題はレギュラー出演をしている「探偵ナイトスクープ」に話題を振り、ここでも客席を沸かせます。
 「結果、皆さんどうなったって思いますぅ?ね、気になりまっしゃろ!?そしたら・・・、放送視とくんなはれ!」
イヤぁ、以前ブログで『枕が毎回ほぼ同じ(近所の“悪ガキ”の男の子との無邪気なやりとり)なのが少々気になり』、また『バラエティー番組のレギュラー出演も全国的な人気取りには大切なのかもしれませんが、“大きなお世話”ながら、むしろちゃんと落語の修業を積んで』とか書きましたが、ホント“大きなお世話”でした。枕も十二分に工夫され、この日もご当地ネタを盛り込みながら、客席を大いに沸かせてくれました。
そして肝心の落語そのものも、連続ネタおろしに挑戦するなどして幅も拡げておられますので、落語そのものでも本人が嫌がる“女流”という形容詞を軽く跳び越えて、古典落語に拘る噺家として順調以上に成長されているのが分かりました。大変失礼いたしました。
 さて、肝心のネタ。
この日、最初が博打打ちの古典落語「看板のピン」。大いに客席を沸かせた後、続けて「蜆売り」。
初めて聴く噺でした。これは上方落語の中の人情噺で、親方が昔掛けた情けが仇となって、結果家族を助けるために真冬に凍えながら蜆を売っている坊やを助ける噺。十日戎で賑わう今宮神社が噺の中に出て来ますので、年末年始のこの時期に掛けるネタなのでしょう。
後でネットで調べて知ったのは、この「しじみ売り」は、何でも桂福団治師匠に稽古をつけてもらって、11月末にネタ卸しをしたばかりとのこと。二葉さんにピッタリの蜆売りの子供の声と親方や姉さんとのやり取りを、見事に声色を変えながらしんみりと聞かせてくれました。
そして仲入り後は、いつもの声の甲高さをもじって「上方落語の白木みのるって、ゆうてますねん」といういつもの話題に触れて笑わせたかと思ったら、「まだ知っとる人いるんや・・・、安心しました。」と自虐的に沸かせてから、トリのネタは「くしゃみ講釈」。
この仲入り後の講釈師のネタに合わせて、高座には仲入り前は無かった机“演台”が上方落語らしく置かれました。二葉さん曰く、これは落語では「見台」と言い、必ず置かれる講談では釈台と言うのだそうです。
今回のトリに掛けたネタが、その講談を題材にしたネタ「くしゃみ講釈」でした。そのためネタ中に講談師が登場し演じますので、仲入り後に演台が置かれたのです。
因みに、人気の神田伯山などの講談師が高座で必ず左手に持つのが張扇(はりおうぎ)と呼ばれる竹の芯に厚紙を巻いたもので、場面転換や修羅場読みなどに釈台を叩きながら調子を取るのに使われ、右手には扇子を持つのだそうです。
二葉さんがこの日のトリに選んだネタの「くしゃみ講釈」は、米二師匠から稽古をつけて貰って5月にネタ卸しした噺だそうですが、しっかりと自分のモノにしていました。
やはりこの人には、アホな滑稽話が良く似合う。上方落語界の白木みのるという彼女の甲高い声がナントも心地良い。それでいて、皮肉一杯の毒を吐いて笑わせてもくれる。そして例えとちっても、それさえも笑いのネタに変えてしまう。この日の桂二葉という噺家。もしかすると、柳家さん喬師匠の「棒鱈」を聴いた時と同じくらい大爆笑したかもしれません。
そして、一年半前に書いた『NHK落語大賞を受賞した時に、審査員だった柳家権太楼師匠が言われた様に、もっともっと持ちネタを増やして“女流”という修飾語など一切関係無い上方落語の実力派の噺家になって欲しい。』
今回初めて生で聴いた彼女は、その通りの噺家への道をしっかりと歩んでいると確信出来ました。
大賞受賞後、「ジジイども見たか!」と啖呵を切った桂二葉。この日、田舎の松本まで来くれた独演会を、まさしくジジイが見させて貰いました。
これまで生で聴いた落語は決して数多くはないのですが、少なくとも今まで聴いた中では一番楽しめた落語会でした。
最後に、余談ながら、仲入り前はピンク系の淡い着物で、仲入り後は赤紅色とでも言ってイイのか、着替えての登場で、他の女流噺家の様に袴を履かれてはいませんでしたが、むしろ却って色っぽくて可愛らしく感じられてとても素敵でした。
 追い出し太鼓の後、ホールを出ると、一早く桂二葉さんがホールに来られていて、帰られるお客さんに挨拶をされたり、取り囲んだこの日のお客さんのリクエストに応えて、ポーズを取って写真撮影に応じられたりしていました。そんなところにも、上方から飛び出して今や全国区となった彼女の人気の一端が垣間見えた気がしました。これからも是非精進して頑張ってください。
 「お気張りやす!!」

 先日の1月15日の小正月。朝用事があって徒歩で外出した帰り道、田川に架かる渚橋を渡って行くと、田川も市街地を流れるためこの辺りは護岸整備がされて狭いスペースしかありませんが、川の西側の河原に三九郎が一本建っていました。
  「へぇ~、まだちゃんと15日の夜に三九郎を燃やす所もあるんだ・・・」
何だか無性に懐かしくて、暫し眺めながら携帯で三九郎を撮影しました。
因みに渚橋の上流すぐ近くには上高地線の田川橋梁があり、2021年の8月豪雨で橋脚が傾いてしまったため、1年半程松本駅と渚駅の間が不通になっていたのも記憶に新しいところです。

 小正月に行われる伝統行事の“どんど焼き”。松本地方だけは、これを「三九郎」と呼んでいます。
最近では、小正月と云うよりも、成人の日が連休を増やすべく1月15日から1月の第二月曜日に移動したことに伴い、準備と片付けの都合上、土曜日に松集めをして、早い地区はその日の夕刻、或いは日曜日に焚いてしまい、その翌日に片付けをするという風に殆どの地区が変わってしまいました。子供の行事である以上、学校が休みの日で子供たちやPTAの保護者たちも参加し易い週末に設定せざるを得ないのは、ある意味止むを得ないことだと思います。
また各家庭でも、昔の様に大きな柳の枝を切って来て、各枝の先に五穀豊穣を願って、繭玉(信州では養蚕が盛んだった頃の名残でしょうか)や縁起物の一富士二鷹三茄の形でしかも食紅などで色付けした団子を、それこそ花(地域によっては団子ではなく餅を飾ることから餅花と呼ぶ所もある様ですが)の様に飾るといった風習も廃れてしまったでしょう。今では、スーパーの食品売り場やホームセンターで打っている小さな柳の枝を買って来て、これまた売られている繭玉の団子を枝先に付けて、どんど焼きに持って行って焼いて食べるというのがせいぜいでしょうか。まだ、そうして子供たちの行事として、そうした風習がせめて残っているだけでもまだ良いのかもしれません。

 全国で行われている“どんど焼き”。何故かこの松本地方だけが「三九郎」と呼んでいますが、その理由は、昔この道祖神のお祭りを司った神主の名前に由来する等、諸説ある様ですが正確なところは不明とのこと。
このブログを始めた頃の2009年にも、自身の子供の頃の三九郎について記載していました(第30話)ので、その部分のみ抜粋します。
『松の内が終わる7日、松飾を子ども達が地区毎に集めに回り、それを心棒の回りにツリーのように積み上げるのが、三九郎(どんど焼き)。竹を心棒に使うところもあるようですが、岡田では赤松。これを、小正月の繭玉を持って集まり、14日の夜燃やしてその火で焼いて食べると健康になるというもの。燃え残った赤松は20cmほどに切って、翌日道祖神のお札と一緒に各家に配りながら、お駄賃をいただてそれで文房具を買って子ども達全員で分配します。各家では、その心棒を使い一年の健康を祈って、ご飯を炊くとかお風呂を沸かすという慣わしでした。当時は、地区の子ども会(小学生)最大のイベントでしたが、今ではどこまで残っているのでしょうか。』
 当時は、夕刻になると子供たちが「♪三九郎、さんくぅろう、爺さん、婆さん、孫連れて、お団子焼きに来ておくれぇ~」と節を付けて歌いながら、地区の集落を練り歩き、これから三九郎を燃やすことを知らせましたが、今では聞かれなくなりました。昔は、家だけでなく、土蔵などにも松を飾りましたので、集落で十分な御松(おまつ)を集めることが出来ましたが、今は御松の代わりに正月飾りだけを玄関に飾る家もあり、松が少なくなったので代わりに竹の葉や、引っ越す前に住んでいた沢村ではヨシをたくさん刈って来て三九郎の芯に使っていました。また岡田地区の様な財産区の無い住宅地では、赤松ではなく竹を心棒に使っていました。私たちの子供の頃は、その心棒となる赤松を地区の財産区の山に取りに行くのと、その年の当番になったお宅の田んぼに心棒を建てるのだけは大人が手伝ってくれましたが、それ以外は全て6年生がリーダーとなって子供たちだけで大小二基の三九郎を作りました。しかし、最近では少子化で子供たちの数が減ったこともあって、前の町会では殆ど大人が中心となって三九郎を作っていました。止むを得ない面もありますが、昔を知る者としてはチョッピリ寂しい気もします。

 小正月の夕刻。松本平では市内を流れる川の河原や、郊外の田んぼに建てられた三九郎に火が着けられ、たくさんの煙があちらこちらから上がっているのが見られました。昔は暗くなってから火を着けましたが、今では暗くなる前に実施され、万が一の防火に備えて地区の消防団も警戒に当たります。
今年は三連休の11日と12日が三九郎のピークで、松本広域消防署へ届けられたその数は、全部合わせると松本平で650箇所とか・・・。

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