カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 12月から毎月2回参加している、ボランティアでの「源智の井戸」清掃。
清掃活動の内容は、ブラシを使い八角形の木枠で組んだ “井筒”の中と、井筒から流れ出る毎分200リットルの8箇所の水口の両側からブラシを中に突っ込んで磨き、付いている藻を擦って落とします。
また小さな刃の鋤簾(じょれん)で井筒の中の玉砂利をかき回すようにして石に付いた藻を浮かせ、それを柄の付いた金網のザルで丁寧にすくい取ります。更に井戸の木枠の井筒の外側に緑色の水カビが繁殖して木を腐らせてしまうので、金タワシで“こ削ぎ”取ります。同様に水路にも藻や水カビが繁殖しているので、デッキブラシで擦って落としていきます。
更に井戸の周囲の雑草や落ち葉、ゴミなどを拾います。これらをメンバーで手分けして行います。通常の清掃そのものだけなら、落ち葉や雑草の無い冬場は30分から40分位で終了します。


冬は夏に比べて藻の繁殖力が弱いので、月二回。繁殖が盛んになる夏は月に三回清掃をするのと、春の桜の咲く頃や秋の落ち葉の時期は、井戸の中に舞い落ちた花弁や落ち葉をそのまま放置していると腐ってしまうので、清掃の時だけではなく、近所にお住まいの方が気付いた都度浚っているのだそうです。
また。井戸を覆う庵に張り巡らされた注連縄も、吊るした白い紙「紙垂(しで)」が風でちぎれたりするので、ほぼ毎月取り換えています。年末の大掃除の時には、注連縄はお正月に向けて全て新しく張り替えられました。
地元の宝である「源智の井戸」を誇りに感じ、これまでこうした清掃作業を何十年と続けて来られた地元有志の方々が、皆さん高齢化で次々とリタイアし、唯一残った86歳の会長さんを一人のまま放っておけず、見るに見かねて昨年の夏から参加されたという地元町会の有志の方が三人。全員60代以上、会長さんと併せて4人の皆さんを紹介されて、私もお仲間に加えていただきました。
余談ですが、驚いたことにその内のお一人は附属小で次女と同じクラスだった女の子のお母様で、家内とは女子高の先輩後輩ということもあって、附属時代のママ友のお一人だったのです。そして、その方のご主人は逆に私メの高校の先輩で、音楽部の先輩を通じて知り合い、会社員時代に長野市での会議があると、銀行にお勤めで当時長野市内の支店に勤務されていたその先輩と、会議が終わってから待ち合わせて何度か一緒に飲んだこともあり、従ってお互い夫婦同士が知り合いでもありました。
 そんな偶然の再会もありましたが、ご一緒に清掃に参加させていただいて、皆さんからお話を伺う中で、少しずつ松本市内の湧水群の歴史経過とその置かれている現状が見えて来たのです。
それは、私も松本市民の一人でありながら、ただ水を頂いている時は全く知り得なかった内容でした。そんな状況を見るに見かねて、松本市役所のH/Pにある「市長への手紙」欄に状況を知っていただくべく投書してみることにしました。
というのも、以前にもアルプス公園の展望広場からのせっかくの北アルプスの景観が、雑木が伸びて絶景が台無しになっているのを残念に思い、松本市役所の「市長への手紙」に雑木伐採をお願いしたところ、担当課から「予算の関係で2年くらい掛けて対応していくので、少し時間的容赦を頂きたい」との回答があり、実際その一年後位から数年掛けて、それまで景観を損ねていた立ち木の伐採がちゃんと行われたことがあったのです。
そんな提言をメンバーの方に投げ掛けてみたのですが、会長さんは市の担当に毎年頼んでいるがこれまで何も改善がないとのこと。また有志で参加されている町会役員の方も、「(行政の積極的な関与を)頼んでも、これまでは予算が無いの一点張り」とのことで、効果にはかなり懐疑的でした。しかも、掃除用の道具が壊れたので交換すら来るまでに数ヶ月かかったりするので、待ちきれず自腹で購入したこともあったとのこと。どうやら何年にも亘る担当課との折衝や交渉のやり取りで皆さん疲れてしまい、今ではもう諦めにも近い感情をお持ちの様でした。
そこで、どうせ“ダメ元”でも・・・と、年末に「市長への手紙」欄に、飽くまで私個人の名前で投書を送ってみました。以下がその内容です。

『12月からボランティアで源智の井戸の清掃活動に参加させていただいている者です。これまで善意で活動をされて来た方々が高齢化で続けるのが難しくなり、現在は町会の有志の方が加わって全部で4人で活動をされています。井戸そのものは文化財として市の所有になっており、これまでも何度も市の担当課に申し入れをしておられるそうですが、予算が無い等で全く進展が無く、皆さんもこれ以上善意での活動が無理とのことから、この年度終わりの3月末を以って清掃活動を止めるとのこと。
源智の井戸は戦国時代からの“当国一の銘水”として、また「平成の名水」にも選定されている「まつもと城下町湧水群」の代表格の井戸として、松本市並びに市民の宝でもある筈です。
仮に予算が付いても、それは清掃業者に外部委託するとのことですが、どこまで“おらが宝”として親身になって清掃がされるのでしょうか。しかし、もし予算が無いなら知恵を出して、市が工夫してボランティアを募るなりボランティア団体を組織するなり、そうした工夫をすることがなぜ出来ないのでしょうか。
私は10年以上も、我が家のコーヒーのドリップ用に、源智の井戸の水を月2回程汲みに行ってタダで戴いて来ており、9月頃だったか市民タイムズの窮状を報道する記事を見て市役所の広報課宛にメールをしたのですが、ずっと連絡も無かったので、きっと市や町会等で何らかの改善があったのだろうと勝手に思っていたところ、11月末になって担当課から突然電話をいただき、これまで清掃活動を善意で継続されてこられた代表の方の電話番号を教えられ、連絡をして先述の様にこの12月から清掃活動に加えさせていただきました。
以前は沢村におりましたが、終活で戸建てを売って現在は渚のマンションに引っ越しており、昔は車でないと無理でしたので、せめてお水のお礼にと行った際に祠に僅かばかりのお賽銭を入れるくらいしか出来ませんでしたが、今なら歩いて行くことが出来ますので、少しでも水のお礼になればと参加させていただいた次第です。
しかし、町会の方々も昔から何度お願いしても何も改善されなかったことから、遂にこの3月で善意での活動を止めることになったとのこと。
この松本の、そして市民の“宝”である(城下町湧水群として観光資源でもある筈の)この源智の井戸をどうか守ってください。是非、金が無いと言うだけではなく知恵を出してください。そしてCivil Servantとしての義務を果たしてください。松本市民の一人として、何卒宜しくお願いいたします。
以上、有志の方々の窮状を見るに見かねて、この現状を知っていただきたくメールをさせていただきます。』

 「市長への手紙」をお送りしたのがちょうど市役所が年末年始休暇に入った日だったため、年明け早々に担当課とは別の部署の課長さんからご連絡を頂きました。最初お電話を頂いたようなのですが、私が外出中だったため、その後メールでのやり取りになりました。
私は、どうせ先ずは秘書課が内容を見て担当課に振り分け、その担当課が回答を作って市長に報告がてら回答内容も確認するだけだろうと勝手に思っていました。それでも市長まで課題が届けば、先ずは一歩としての前進になるだろうとも・・・。
するとそうではなく、市長自身で「手紙」の内容を読まれ、担当課でこれまでは対応が進んでいなかったこともあり、市長が直接別の課に連絡をして、先ずは課題と現状を整理する様にご自身で指示をされたとのこと。そのため指示を受けた課長さんが、投書主である私に実際に会って話を聴きたいとのことだったのです。
しかし、私自身は飽くまで部外者であり、これまでの経緯経過を知る地元の方々と会われた方が良いので、数日後にちょうど清掃活動があることから、先ずはその様子を実際にご覧になって、その有志の方々にヒアリングをされたらどうかとお願いをしたところ快諾され、早朝7時からの清掃時間に来られることになったのです。

 予算の紐付けが無いと(しかし、仮にその予算が付いても、それは全て外部の業者任せ)何も始まらないという如何にも“お役所仕事”の体質には、もしお金が無いのならどうして知恵を出さないだろうと思わざるを得ません。
また担当者が課題は認識していながらボトムアップではなかなか事が進まなかったのが、いざトップダウンだと即座に物事が進みだすという現状に、嘗て民間企業にいた人間としては些か疑問を感じないではありません。
しかし乍ら、そうは言っても、「市長への手紙」による市長のトップダウンにより、例え僅か数ミリではあっても、少なくともこれまでは錆び付いていて全く動かなかった歯車が、少しずつではありますが、音を立てて回り始めたのでした。

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