カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 8月29日付けで、タブロイド判の郷土紙「市民タイムズ」に掲載されていた記事(記載されていたお名前はアルファベットの頭文字に変更しました)。

『松本市中央3の市特別史跡「源智の井戸」の清掃活動が曲がり角を迎えている。30年以上にわたって活動を担ってきた地元・宮村町一丁目町会(B町会長)の「源智の井戸を守る会」が、高齢化と後継者不足のため5月に解散。現在は有志が細々と続けているが「先が見通せない」と不安の声が上がる。地域のシンボルで観光名所でもある井戸を安定的に存続させるため、行政の関与を求める声もあり新たな対応が求められている。
 会解散後は、「そうは言っても井戸を放っておけない」と60~80代の町会有志4人が「井戸と花の会」(O代表)をつくり、月2回集まって井筒内の砂利に付いた藻を取り除いたり周囲の雑草を取ったりしている。(中略)
 守る会は7月、井戸を管理する市の担当課に解散を報告し、今後の市の関与を求めた。同課は、地元主体の現在のやり方は難しくなっていることを認めつつ「井戸は地域のシンボルであり地元が関われる体制は必要。業務委託も含め、来年度に向けて持続可能な形を模索したい」とする。
 中心市街地には、観光資源や災害時の生活用水として市が平成10年代から改修・整備を進めた井戸が21カ所ある。そのほとんどが町会などを通じて住民が日常の手入れを担っているが、少子高齢化や町会加入者の減少などで源智の井戸のケースと同じ問題を抱えるところは少なくない。
 B会長は「井戸は地元の誇り。清掃できなくなったからといって任せっ放しにはしない。どんな関わり方がいいのか地元としても考えていきたい」と話している。』

 松本市内の高砂通り、通称人形町に在る「源智の井戸」。
環境省の「平成の名水百選」にも選ばれている松本の「まつもと城下町湧水群」の中でも、戦国時代の世から“当国一の銘水”と謳われた井戸であり、我が家では毎日のコーヒーのドリップ用に10年前からほぼ隔週で水を汲み行って戴いて来ているので、これまでも何度かブログでも紹介させていただいています。
はっきりとした四季があり、温帯に属する日本列島はある意味“水の国”であり、水資源に恵まれた列島です。四季の中で、雨季である梅雨や台風、そして雪などのお陰で降水量も多く、世界平均と比べて我が国の年間平均降雨量は約1.6倍にも及ぶと云います。
その水の豊富さと共に、この国の“水の旨さ”をそこに暮らす我々日本人はあまり意識していないかもしれませんが、海外に行くと容易にその違いに気付かされます。
水に関して、例えばエッセイストの平松洋子女史の「水の味」(以下、第497話より一部引用)に、日本の水について興味深い記述があります。

『「・・・煮る、さらす、浸す、茹でるといった水を中心とした調理法で、微妙な味わいで素材を引き立たせる日本料理は、京都の軟水だからこそ進化した」という件(くだり)でした。その逆で、フランス料理は硬水だからこそソースがミネラルと結合することでしっかりと主張し、切れが出るのだとか。シチューのようにコトコトと煮込む欧州の料理も硬水だからこそ、なのだそうです。また、我国でも関西の軟水と江戸の硬水の違いにより、お米の炊き具合が全く違うのだとか。その結果、「硬水で炊くために米が“粒立つ”江戸では、一粒一粒がくっ付かず、空気を含めてフワっとなるからこそ握り寿司が発達し、一方の軟水の関西では米粒が融合し交じり合うことから棒寿司(箱寿司/押寿司)が発達したのだ」・・・。』
 では、「源智の井戸」の水質は?と気になって以前にも調べています(第1040話参照)。
『すると、ちゃんと井戸の掲示板に、市が県薬剤師会に依頼(H27.7.30採水)した、今年度の水質検査の結果報告書が貼ってあり(薬剤師会のHPにも掲載されています)、「源智の井戸」は「硬度140」だそうです(ネット上には「硬度113」と記載した別の記事もあり)。
国ごと、また規格によって必ずしも分類が統一されていないようですが、一般的には硬度100以下が軟水。300以上が硬水。その間を中硬水と呼ぶという基準に従うと、「源智の井戸」は中硬水となります。ところが、すぐ近くにある酒蔵の「女鳥羽の泉」は軟水とのこと(因みに、諏訪地域の酒蔵で使われる霧ケ峰の伏流水も軟水。硬水の代表格は灘。新潟も軟水だそうですが、「天狗舞」は中硬水とか)。
この狭いエリアでも、水源によって水脈が違い、その水質は異なるようです。因みに我が国の生活水の80%は軟水とか。逆に石灰質の地層の欧州(大陸)は硬水。一般的に、硬度は炭酸カルシウム(CaCO3)の濃度で表されますが、旨味はそれだけでは無いようです。一口にミネラルウォーターと言っても、例えば“南アルプスの天然水”は軟水(硬度30)で、エビアンは硬水(硬度304)。昔から飲みなれた軟水の方が、日本では好まれるそうです(お腹にも優しい)。硬度を示すカルシウムとマグネシウム以外に、カリウムとナトリウムもミネラル分とされています。
また、緑茶は軟水の方が旨味が出て、紅茶は硬水の方が香りが立つとか。そして、コーヒーは、同じ豆でも軟水の方がマイルドで、硬水の方が苦味が引き立つとのこと。要するに、硬度を示すCaCO3の数値だけでは水の旨さは表せないということでしょうか。
一般的に言えば、煮物などの和食用には、「源智の井戸」は中硬水で余り向かないということになりますが、果たしてどうなのでしょうか?
要するに、“自分に合った水を、自分の舌で探す”しかないようです。その意味で、「源智の井戸」はミネラル分が豊富で、さすがに当国(信濃)一と言われただけの美味しい水でした。』
(源智の井戸などの湧水が流れ込む榛の木川や蛇川にはニジマスが棲んでいて、また人が植えたモノかもしれませんが、清流にしか育たない山葵も生えていました)
 この10年間、隔週で水を“タダ”で頂いている「源智の井戸」。その美味しい水がこれから一体どうなってしまうのだろう?
これまで、ただ水を頂くだけでは申し訳なく、井戸の脇に有る小さな祠に僅かばかりのお賽銭を行った都度納めさせては頂いては来たのですが、自分にも何か出来ることは無いのかと、居ても立ってもいられませんでした。
そこで、市役所のH/P経由で広報課にメールを送り、もし必要があれば自分はボランティアとして井戸清掃に参加可能な旨を連絡してみました。
しかし特に何の反応も無かったので、新聞報道を受けて、きっと市や地元町会で今後の対応について何らかの対処がされたのだろうと思って安心していました。

 ところが、連絡して3ヶ月も経った11月末。突然、市役所の担当課の方から連絡があり、どうやら報道後も特に状況は変わっていない様子。その担当の方から井戸を清掃している代表者の方の連絡先を教えられて、未だもし興味があったら連絡してみてくれとのこと。
早速電話で連絡をしてみると、藻の繁殖が弱まる冬季は月二回の清掃をしていて、連絡をした数日後がちょうど当月の清掃をする日なので、もし都合が良ければ見学がてら参加してみてくれとのことでした。
そこで、その当日。未だ明けきらずに暗い内に家を出て、渚から歩いて20分。朝6時半過ぎに「源智の井戸」に到着し、これまで水を頂いて来たお礼も兼ねて、地元の有志の方々の井戸の清掃活動に、私もボランティアとして参加することになりました。

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