カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 一周忌法要には間に合わなかったのですが、婿殿が夜勤明けの体で次女たちと合流すべく、横浜の病院から松本へ直行して来てくれました。
今回も勤務カレンダーに合わせて、婿殿は僅か二泊だけの松本滞在でしたが、彼を“おもてなし”するため“蔵の街”松本中町の「草菴 本館」に伺いました。
 こちらの「草菴」は、信州の地場の季節の食材での郷土料理が食べられるので、例えば娘の大学の恩師の先生が東京から会議で松本に来られた時や、知己の欧州在住のマエストロが演奏会の指揮で来られた時など、以前から我が家では県外からのお客さんをもてなす時に使っている和食料理店です。
次女一家も横浜からですが、都会から来られたお客さんは和洋中華、どれをとっても松本以上の店が都会では選べる筈なので、そうした方々に“松本の食”を堪能してもらうには、勢い信州蕎麦か或いは信州らしい地場の食材を活かした郷土料理しかありません。
この「草菴 本館」はそんな時に使える有難いレストランで、会社員時代には職場の30人を超える宴会でも何度か使ったことがあるのですが、二階には椅子席や畳の個室も大小何部屋かあるので、我が家の様に小っちゃな孫たちがいる家族にとって、特に畳の個室なら多少泣き叫ぼうが這い回わろうが他のお客様の迷惑にならないので便利です。
中町通りに面した別館の「井Say」と隣接した「草菴 本館」があり、草菴は中町から小池町に抜ける通りに面した本館専用の別のエントランスから入ります。
別館の「井Say」は蕎麦や一品料理などが主体のカジュアルなレストランで、本館の「草菴」では一品料理もありますが、5000円からの懐石コースもあり、今回選んだのは8000円のコースで、先付 前菜盛合せ お椀 お造り 凌ぎ 焼物肉 焼物魚 蕎麦 デザートの9品ですが、都会の人に海無し県の信州で鮮魚を食べて貰ってもしょうがないのでお造りは馬刺しへ、そして蕎麦好きの次女夫婦たちのためにお蕎麦もコースの椀そばではなくざるそばへと、予約した際に事前にお願いして変更して貰ってあります(追加料金を払って、一人8500円くらいでしょうか)。

 家内の説明を受けて、娘がスマホで料理内容とかを事前にチェックしていると、「草菴って、王滝グループって書いてあるけど・・・」とのこと。
 「えっ、ウソ!?」
驚いてネットで調べてみると該当するローカルニュースの記事があり、
『飲食チェーンの王滝(松本市)は13日、飲食店運営や仕出し事業の草菴(そうあん)(同)の全株式を取得し、2024年3月に完全子会社化した。
後継者不足に悩む同社がメインバンクの長野銀行(同)に相談し、同行から王滝に打診があった。王滝は、草菴の本格的な和食料理やサービス力を評価して事業継承することを受諾し、草菴社長を顧問に迎え、従業員全員を継続雇用した』とのことでした。
今年の3月に経営形態が変わっていたとは全然知りませんでした。そのためこれまでの「草菴」なら、スタッフの方が自ら野山に出掛けて採取するという春から夏は山菜、夏から秋はキノコなど、松本市内で獲れる旬の食材に拘った料理がコースの中に食材としてふんだんに使われていたのですが、「もしかすると経営方針が変わって、今までの料理内容が変化しているかもしれない・・・?」と一抹の不安を感じながら中町へ向かいました。
因みに、今回はせっかくの懐石料理なので、私メもお酒を楽しむべく、車2台ではなく家内が運転する1台に皆乗って貰って、私メは一人渚駅から上高地線の電車に乗り、松本駅から歩いて中町の「草菴」へ向かいました。
 パルコ通りから伊勢町、本町、中町へ。余談ですが、先に着いているであろう彼らを余り待たせぬ様に、信号機の無い横断歩道を渡ります。長野県は停車率がずっと全国1位ですので、横断歩道手前で車が必ず停まってくれます。但し、観光シーズンは県外車も結構入り込んでいますが、県外ナンバーの車は殆ど停まってくれないので、ちゃんと車が停まってから渡る様にしないと危険で注意が必要です。
駅から歩いていて驚いたのは、この日は日曜日だったのですが、歩いている人たちが欧米系や中国系など殆ど外国人だったこと。中町に在る(開店して年も浅く、地元でのそう有名店とは思えぬ)広島風お好み焼きのお店は行列が出来ていましたが、全員外国人観光客でした。彼等にとっては、例え松本で広島“風”のフードを食べようが“日本食”には変わらないのでしょう。

 さて、この日の「草菴 本館」の季節の懐石コース。
先附は地元でジコボウと呼ぶハナイグチとアミタケのみぞれ和え、シャインマスカットのクルミ和えなど二品、季節の八寸が地鶏の手羽先や虹鱒の唐揚げ、信州サーモンの手毬寿司、新栗の渋皮煮などが並びます。お吸い物の椀には地元の松茸があしらわれていました。
そしてお願いして変えて頂いたお造りの食用菊の花びらを散らした信州らしい赤身、桜肉の馬刺しです。肉の焼き物で、信州牛のローストビーフに添えられていた焼いたイチジクの甘かったこと。そして魚の焼き物には焼いた蕎麦団子と毎回お馴染みの焼いたマコモダケが添えられていて、それぞれ味噌を付けて食べるのですが、イネ科の水生植物の真菰の茎の部分である、マコモダケ(真菰筍)のコリコリとした歯触りと甘さが印象的でした。そして、ちょうど新そばに切り替わったというざるそばでコースの〆。
経営母体が変わったと聞いて心配していた料理内容ですが、幸い信州の食材を活かすという季節の献立は守られた様で、殆ど変わっていませんでした。
 帰り掛け、配膳をしていただいた女性スタッフと見送っていただいたフロア責任者のいつもの男性スタッフの方に、
「ご馳走さまでした。経営母体が変わったと聞いて、正直、料理内容も変わったかもと心配していたのですが、殆ど今までと変わっていなかったので安心しました。また来ます!」
「はい、何も変わらず今まで通りですので、是非またお越しください。お待ちしております!」

 次女一家も喜んで満足してくれた様で、もてなす側の我々も安心した「草菴 本館」のいつもの信州の季節の懐石コースでした。
私自身も大いに満足して、まだインバウンドの観光客で賑わう夜の松本の街中を一人歩いて渚に帰りました。