カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 シンガポール・チャンギ空港への出店を記念してとのことで、ファミレスの「ロイヤルホスト」で、7月から2ヶ月間の夏季限定で実施されていた“シンガポール料理フェア”。
近所の渚のショッピングモールに在るスーパーマーケット、ツルヤに買い物行く度に“ロイホ”の前を通るので、実施していることは前から知ってはいたのですが、東京のシンガポール料理の専門店ならいざ知らず、全国チェーンのファミレスでは本格的な再現は無理だろうと、その実施内容を些か訝しく感じていて、これまで食べに行ったことはありませんでした。

でも限定期間が間も無く終了ということを知り、ここ松本でせっかくシンガポール料理が食べられるのなら、例えそれがシンガポール“的”料理であってもイイからと、ダメ元で食べに行ってみることにしました。
事前にH/Pでメニューをチェックすると、シンガポールの屋台街“ホーカーセンター”をイメージしたという定食のセットメニューは、チキンライス、ラクサ、フィッシュヘッドカレー風のシーフードカレーをそれぞれメインにした3種類だけで、他には現地シンガポールのローカルフードの定番であるバクテーを始め、フィッシュボールヌードルやチャークイティヤオも、またホッケンミーも無く、“シンガポール料理フェア” と呼ぶには些か寂しい内容ではあるのですが、でも「シンガポール政府観光局とシンガポール航空の協力」とキャッチコピーで銘打ってあったので、それだったら或る程度は期待出来るかもしれないと思いました。何しろ、この松本でシンガポール料理が食べられるのですから!
(*下の写真は、東京のシンガポール料理店の「海南鶏飯」、基本の3種類のソースが添えられた“正統派”のチキンライスです)
 1994年の帰任後、6年半に亘ったシンガポール駐在中、住んでいた近くのニュートンサーカスを始め現地のホーカーセンターで親しんだローカルフード(チキンライスを始め、どれもこれも僅か数ドルで食べられるのです)が無性に懐かしくて、都内の大学に進学していた娘たちから東京にシンガポール料理店があるらしいと聞いていて、家内と上京した時に初めて食べた水道橋の「海南鶏飯食堂」本店が、今から15年前の2009年。
それまでの帰任後の15年間、どうしても食べたくて見様見真似で自宅でチキンライスを作っていました(第1344話参照ください)。
新鮮な鶏肉を、臭みを取るべく生姜や長葱と一緒に煮て、その煮汁でタイ米を炊けば完成です。タイ米は、現地出身の方が調理している本格的なタイ料理店が松本にも数軒あり、その内の一軒が併設している食材店でジャスミン米が買えました。
好みでコリアンダー(シャンツァイ、パクチー)を刻んで、煮汁のスープに散らします。パクチーは、現地でカンコンと呼ぶ空心菜同様に、日本でも地元のスーパーで買える様になっていました。そう云えば家内がパクチーが大好きで、新鮮なパクチーを求めて、日本人は余り行かないローカルマーケットに買いに何度も行かされましたっけ・・・。シンガポール風チキンライスには、キュウリ(日本のキュウリの3倍は長くて、大味な現地のキュウリですが)も不可欠。タレはお好みで、チリソースとすりおろした生姜を混ぜて。チリソースは松本でも購入出来ましたが、ダークソイソースだけは東京の、例えば紀ノ国屋や明治屋で探しても見つかりませんでした。
その当時は「チキンライス」とネット検索しても、オムライスの中身に使う様な所謂ケチャップライスしかヒットせず、今で云う“シンガポール料理”などというジャンルはこの世にまだ存在しなかったのです(蛇足ですが、現地にも勿論“シンガポールフード”というジャンルはなく、言うならば“ローカルフード”ということでしょう)。
その後、初めて日本で食べたこの「海南鶏飯食堂」を知ったのも、チキンライスでもシンガポール料理でもなく、モノは試しと「海南鶏飯」と入力検索して偶然見つけた店でした(因みに英語が公用語のシンガポールでは、英語を使わない場合の中国系同士は別として、中国語の「海南鶏飯」とはあまり使わず、英語でも丁寧に Hainanese Chicken Rice と言うよりも単純にChicken Rice と使う方が多かったと思います。むしろ、そう聞いてケチャップライスを連想する人はシンガポールでは皆無だったかも・・・)。2010年には既に都内で複数店舗展開をするなどして、次第にケチャップライスではなく、シンガポールの「海南鶏飯」という意味でのチキンライスが東京では徐々に浸透していきました。
そして、その後上京した時に何度か食べに行ったのが、現地で新しく人気No.1 になったという田町の「威南記海南鶏飯(ウィーナムキー ハイナンチーハン)」。因みに、個人的に「威南記」で食べるのは、現地No.1というチキンライスではなく、ここでしか食べられないローストチキンヌードルが懐かしいまさに現地のホーカーセンターの屋台の懐かしい味で、私メはここではこれ一択。
また、10年程前に次女が見つけて連れて行ってくれた、東京の恵比寿のシンガポール料理店「新東記」で食べた時に、初めてチキンライス用のダークソイソースが販売されているのを家内が見つけて購入したのですが、これも正に現地で食べたあの味でした。しかし、その後もこのダークソイソースだけは今でもなかなか東京でも入手出来ずにいます。
シンガポール料理店では、他にも麻布台の長女のマンション近くに在った「オリエンタルカフェ&レストラン」には、チキンライスだけではなくてちゃんとホッケンミーもありました。
どの店にも当然個性があり、シンガポール時代に家族全員が好きだった現地の人気店だったオーチャードのマンダリンホテルの「チャターボックス」のチキンライスとは味が多少違っても、十分びシンガポールを思い出させてくれた懐かしい味でした。
因みに、日本帰国後10年振りに初めて日本でチキンライスが食べられた時の水道橋の「海南鶏飯食堂」の食器は、シンガポールのその「チャターボックス」から払い下げて貰った食器だったのです(余談ながら、次女の航空会社勤務時代ですが、ファミリーチケットで次女と家内が二人でシンガポールに旅行した際、チャターボックスにも食べに行ったら、ホテルはヒルトンに変わり値段も二倍にアップし、当時の料理長も独立していて、昔のあのチキンライスの味ではなくなっていた由)。
そして“シンガポールの料理”という意味で、“シンガポール料理”というジャンルもタイ料理やベトナム料理などと同様に、今では我が国ではアジアのエスニック料理の一つのジャンルとしてどうやら定着しつつある様です。
 長女が渡米したので上京する機会が減ってしまいましたが、今回地元松本で食べた「ロイホ」のシンガポールフード。
我々のオーダーは、二人共やっぱり海南鶏飯(チキンライス)セット(税抜き2680円で、チキンスープと海老のサテー付き)にしました。家内はパロアルトでの思い出の懐かしいケールサラダを追加、そして私メは松本で飲めるのは望外のタイガービールもオーダー(シンガポールのモルト100%ビールです。他には同じ会社のラガービールのアンカービールが現地での定番でした)。
さて、肝心の海南鶏飯(チキンライス)は、チキンが柔らかで十二分に合格点でした。ただ、付け合わせのソースが、チリソースが小皿ではなくチキンの横に少し添えられていただけで、小皿の生姜ソースはまだ良いとして、ダークソイソースはただ“焦げ臭い”だけで、現地のそれとは全くの別物。またチキンを生姜などで煮た煮汁でのチキンスープは、塩味が勝ち過ぎ。そして何よりいただかなかったのは、タイ米です。残念ながらセントラルキッチン方式での調理済みの冷凍品なのか、香りも無くパサパサで、これでは本来のタイ米の美味しさが伝わりません。今では日本でも買えるジャスミン米などの本来のタイ米は味も香りもあって本当に美味しくて、ナシゴレンなどのヤキメシ類や東南アジア特有の“ぶっかけ飯”には、モチモチした日本米よりむしろタイ米の方が遥かに適しています。
セットに添えられていたサテーは、現地でも食べたことが無かった海老が二本。
シンガポール駐在当時、国会議事堂や国立博物館、ビクトリアホールなどが立ち並んでいた官庁街のシティーホールの、広い芝生の広場にあったのが通称“サテークラブ”で、ここにはサテーを焼く屋台が立ち並んでいました。
本来のサテーはマレー風の焼き鳥で、ピーナッツソースを絡めて食べるのが定番。モスリムでは豚肉は御法度なので、チキン、ビーフ、マトンの串焼きで、中には(カレーパウダーをまぶして焼いた)カレー味もあった様に記憶しています。
サテーは日本の焼き鳥よりも小振りで、10本くらいをまとまってオーダーしていました。日本の焼き鳥に慣れた舌にはピーナッツソースは甘いので、時にはシンプルに塩味で食べたくなったものです。でも、慣れるとその独特の味と香ばしさがとても美味しくて、今でも懐かしく感じます。今の現地の状況は分かりませんが、少なくとも当時海老のサテーは一度も食べたことがありませんでした。
しかし今回初めてサテーで食べる海老は香ばしくて、海老そのものも甘くて美味しい!そしてピーナツソースも現地の味に近く、サテーも十分合格点でした。
 たとえ夏の間のたった二ヶ月間の季節限定だったとはいえ、東京ならともかく、この田舎の信州松本でも食べることが出来た“シンガポール料理”の海南鶏飯のチキンライス。
松本にも現地出身の方が調理されている美味しいタイ料理のレストランは幾つかあるので、“カオマンガイ”はここ松本でも食べることが出来ますが、同じ中国の海南島からの移民たちが伝えたとはいえ、その後の歴史経過や現地の食文化との融合の中で少しずつ異なった方向を歩んで来ているので使うソースなどが異なり、やはり海南鶏飯とは似て非なるモノ。そのシンガポールのチキンライスである海南鶏飯を松本で食べることが出来、しかもそれが十分現地の味、或いは東京で食べることが出来る味に近かったのは思い掛けない収穫でした。
シンガポール料理店が松本に出来るのは期待薄でしょうから、毎年ではないようですが、また数年後にロイホで“シンガポール料理フェア”が実施されるのを楽しみに待ちたいと思います。そして、出来れば、チャークイティヤオやホッケンミーなど、他のシンガポールのホーカーセンターでポピュラーなローカルフードもメニューに加わらんことを願って・・・。

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