カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
下界ではまだまだ猛暑日が続いていた9月初旬、地元紙が報じたところに依れば、今年の夏山期間中(7月1日~8月31日)、長野県内での夏山遭難は昨年より15件多い116件の遭難が発生し、24人多い125人が遭難したそうです。過去10年で件数は2番目に多く、また人数は最多だったとのこと。そしてその約6割が北アルプスでの発生だったそうです。
遭難者全体では、亡くなった人は前年より5人多い15人、行方不明1人、負傷者は6人少ない53人で無事救出されたのが24人多い56人だったとのこと。そして死者15人中11人が北アルプスでの遭難だった由。
遭難の内容は、勿論転落や滑落が一番多くて34件、そして転倒が24件ですが、一方で体力不足や熱中症に起因する疲労遭難も27件だったとのこと。
その遭難者の9割は長野県外居住の方で、そして遭難者の約85%が50歳以上だったそうです。
それを見る度に、「あぁ、また山での遭難者かなぁ・・・」と感じてしまいます。
長野県では、佐久の佐久総合病院と松本の信大附属病院にドクターヘリも常駐して広い県の全域をカバーしていますが、ドクターヘリは救急らしい赤と白の機体で、一方松本空港に常駐している二機の県警ヘリ「やまびこ」は、信州らしい水色の機体なのですぐに区別出来ます。
救助された遭難者を一刻も早く病院へ搬送すべく、もし昼間救助されれば朝一番で飛行することは無いはずなので、夜間飛行が出来ずに朝一番などで北アルプスから飛んで来たヘリは、もしかすると夕刻救助され山小屋で保護されていたか、或いは二次遭難を避けるために夜間救助が出来ず、翌朝一番で活動を再開し救助された遭難者なのかもしれません(写真は9月16日朝7時半、雲が厚く垂れ込める中、北アルプス方面から低空飛行で「相澤病院」に飛来した「やまびこ」の機影です)。
近年の中高年の登山ブームと、コロナ禍で街中ではなく自然の中なら感染しないだろうという安心感が更に拍車を掛け、またインバウンドでの海外からの登山者も含め、この夏、松本駅にはリュックを背負ったたくさんの観光客で賑わっていました。どこへ登るのだろうという羨ましさと、特に岩場に向かうのであろうリュックにヘルメットを付けている登山者には、どうか無事に下山して、また松本駅舎の古い木彫りの表札に触れられる様にと祈らずにはいられませんでした。
個人的には、それまで美ヶ原や八方池や白駒池からのニュウなどの登山やトレッキングはしていたものの、6年前でしたが、中学校での燕への学校登山以来、初めての2500mの森林限界を超える北アルプス唐松岳への日帰り登山で、熱中症だったのか脱水症の様な状態で立っていられずに、水を飲み塩飴を舐めた結果僅か5分程で嘘の様に回復したのですが、その間、行き交う登山者の方から口々に「大丈夫ですか?」とか「すぐそこに山荘が在りますよ!」と心配され励まされた苦い経験からすると(八方池を過ぎての帰路では今度は家内が木道でコケましたし)、もしかすると一歩間違えれば救助をお願いする様な事態だって有り得たのかもしれないと思うと、今年も体力不足や熱中症に起因する疲労遭難が27件もあったそうですので、自戒を込めて、我々初心者の中高年登山者は、一次救助の役割も担う山小屋のスタッフの方々や山岳救助隊の皆さんに迷惑を掛けぬ様に、くれぐれも用心しないといけないと思うのです。
この前もローカルTVのニュースだったかYouTubeだったか、大学生などの若いグループが八ヶ岳登山で同行者に動けない人が出てしまって救助を要請し、駆けつけた山岳救助隊員から「もっと水を持って来なくちゃだめじゃない!」とか「山を甘く見ちゃダメだから!」と叱責にも似た注意を受けているのを視たのですが、本当にその通りだと感じた次第です。
まるでハイキングの様な軽装で富士山に登る外国人観光客などの様子が報道されましたが、いくら登山は自己責任とはいえ、また富士山の様に例え入山禁止になった山で勝手にゲートを潜り抜けて登った身勝手な登山者であっても、もしも一たび遭難し救助要請があれば各県警の山岳救助隊や一次救助の任を追う山小屋スタッフなどは対応をせざるを得ず、自己責任だけでは決して済まされないのですから・・・。
本当は、私メもまた中学校以来の燕岳や槍穂高の絶景を眺めに蝶ヶ岳に登りたいのですが、我々は燕や蝶へは日帰り登山は無理で、山小屋泊が必要なのでコユキを家に置いては行けません。
そのため、せいぜい美ヶ原や近くの里山への登山やトレッキングでお茶を濁してはいるのですが、毎日北アルプスを眺める度に、また松本駅でリュックを担いだ登山者を見掛ける度に憧れが募ります。と同時に、皆さんの無事の下山を祈ります。
9月に入り北アルプスは、燕岳ではもう草紅葉も始まって秋の風情とか・・・。
おそらく北アルプスから遭難者を運んで来たであろう県警の「やまびこ」を見る度に、そんな自戒と共に警鐘を鳴らしたいと感じた夏山シーズンでした。
(注記:掲載した山の写真は2018年の唐松岳登山で撮影したものです)