カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 奥さまが毎月横浜の次女の所の手伝いに今月行く前に、せっかく慣れつつある体が忘れない様にまた山に登っておきたいとの仰せ。そこで、本当は花が咲く頃に登ろうと思っていた美ヶ原へ、今回もまた三城からの百曲がりコースで登ることにしました。
そこは“山の民 信州人”である地元民の特権として、天気予報を見ながら快晴の日を選んでの山行です。

 リタイア後、クラツーの「女性のための登山教室」に2年間通った家内に付き合って始めた登山。まさに典型的な今流行りの“中高年登山”ですが、“日本の屋根”に暮らす“山の民 信州人”としての最大のメリットでもありましょう。
その中で地元の山故に、2018年に登り始めてから今回が7回目となる美ヶ原。コロナ禍の2021年を除けば、足慣らしも兼ねて毎年必ず美ヶ原へ登っているのですが、最初の頃に美ヶ原でお会いした県の環境レンジャーの方からの、4つほどある美ヶ原の登山ルートの中では百曲がりコースが一番変化があるのでおススメというアドバイスに従い、毎回三城からの百曲がりコースで登っています。そして、このコースは美しの塔に刻まれている「美ヶ原溶岩台地」や『高原詩抄』に収められている私も大好きな「松本の春の朝」などを詠んだ、信州ゆかりの“山の詩人”尾崎喜八が登ったコースでもあります。
美ヶ原へはビーナスライン等を使えば車で上まで行けてしまいますが、美ヶ原自体もれっきとした「日本百名山」の一峰です。その名の通り2000m級の広い台状の高原ですが、山頂は2034mの王ヶ頭。ただ頂上付近にはホテルとテレビ塔が林立しており、王ヶ頭で登頂記念の確認をすることを除けば、むしろ2008mの王ヶ鼻からの方が北アルプスから八ヶ岳までぐるっと270度(!?)、まさに圧巻の眺望を楽しめます(浅間山は王ヶ頭周辺からの方が見易い)。しかも、日本百名山の実に1/3の名峰たちが望めるという絶景の“アルプスの展望台”でもあります。(下の写真は、三城いこいの森の駐車場から仰ぎ見た、美ヶ原山頂の王ヶ頭です)

 5月11日、快晴の中、早目にコユキの朝の散歩を済ませてから、7時に家を出発。市街からは三城まで40分程度でしょうか。市街から既にここまで800m登って来ていることになります。
三城「いこいの広場」の登山者用無料駐車場には既に10台近く車が停まっていて、我々も有料トイレなど準備を済ませ、7時55分に登山開始です。ここが標高1450mとのことですので、山頂までは標高差約600m弱の山旅です。登山口から「塩くれ場」まで3.5㎞という表示。
三城のオートキャンプ場を経て、林の中を沢沿の道を進み30分で広小場到着。途中、道が無くなって石がゴロゴロ河原の様になっていたり、木が倒れて道を塞いでいたりと、台風の大雨で流されたのか、以前に比べて道が荒れていて歩き辛い個所もありました。

広小場の東屋で休息し、暑くなりそうでしたので長袖を脱いで半袖になり、登山再開。ここから百曲がりの本格的な山登りが始まります。






直ぐに板状節理で平べったく割れた鉄平石が道をガレ場の様に覆っていて、歩き辛いことといったらありません。また浮石の様になっていて、乗ると滑る場合もあるので注意が必要です。
そんな登りの途中、至る所にタチツボスミレに始まり、黄色いキジムシロや初めて見るミヤマエンレイソウ(シロバナエンレイソウ)などの花が迎えてくれました。
「百曲がり」の48回曲がるという九十九折を登りながら次第に標高を上げて行くと、今度はオオヤマザクラの花やカラマツの芽吹きも見られ、里はともかく山はまだ春の装いです。
次第に木々の高さが低くなり、空が段々大きくなってきました。パイプからチョロチョロと水が出ている水場と思しき所過ぎれば、「百曲がり園地」までもう少しです。因みに、水は冷たくて清らかに見えますが、美ヶ原には牛も放牧されるので、地中でいくら濾過されていても飲料水にはしない方が良いと思います。
やがて登山道の周りが低木くらいになると、草原の先に崖がそそり立っているのが見え、そこが「百曲がり園地」で、「塩くれ場」と「アルプス展望コース」の分岐点。一応登山道の登りはここまでなので、ここで一休み。ゆっくりと歩いて来たので、駐車場から1時間40分弱で到着しました。この日、木々の無い台状の高原は強風で寒いくらいに感じます。そこでまた長袖を着ましたが、いくら下界が暑くとも山の天気を過信せず、ウィンドブレーカーとかを常備すべきと反省しました。
 この園地からは「塩くれ場」経由で観光スポットの「美しの塔」や、平坦な砂利の車道を歩いて美ヶ原の頂上である王ヶ頭まで行くことも出来ますが、トレイル気分が味わえる「アルプス展望コース」を歩いて王ヶ鼻へ行くことにしました。王ヶ頭へは既に“登頂”していますし、眺望の良い王ヶ鼻へ直行します。因みに、この時はまだ美ヶ原では牛の放牧は行われておらず、一週間後から始まるとのことでした。
園地から王ヶ頭まで2.2㎞と表示されていますので、その先王ヶ鼻までは園地からは3.5㎞位でしょうか。
この「アルプス展望コース」は、尾崎喜八が“溶岩台地”と呼んだ台状の美ヶ原高原の西側の端を地形に沿って行くので多少のアップダウンはありますが、南から中央、そして北アルプスまで日本の屋根をその「アルプス展望コース」の名称通り一望出来る気持ちの良いトレッキングコースで、美ヶ原では一番のおススメ!です。例え、登山ではなく車で来ても、このコースを楽しむべきです(ハイヒールにスカートではなく、それなりに歩ける格好で)。
途中烏帽子岩などのスポットで写真を撮ったり休憩したりする人たちもおられ、皆さんそれぞれに絶景を楽しんでいますが、我々はそのまま王ヶ頭からは砂利道を歩いて王ヶ鼻へ。
王ヶ鼻には20人近い登山者の方々が思い思いに岩に腰掛けて、ここからの絶景を楽しんでおられました。
快晴の日を選んで来たこともあって、左から八ヶ岳、富士山、そして甲斐駒、北岳、間ノ岳、仙丈の南アルプス。そして木曽駒の中央アルプスから御嶽、乗鞍、更に穂高連峰から槍、常念、鹿島槍から五竜、白馬連峰へと山並みが続きます。“アルプスの展望台”に相応しい眺望が、眼下の松本平を飛び越えた先に拡がっていました。余談ですが、伊那谷では木曽駒ではなく単に駒ケ岳か西駒と呼び、甲斐駒は東駒となります。昔仕事で飯田に伺った折に、木曽駒と言ったら地元の方にやんわりと訂正されてしまいました。
 そんな眼前の絶景をおかずに昼食代わりのオニギリを食べ、十二分に景色を楽しんでから、二人共途中王ヶ頭ホテルでのトイレ休憩は不要とのことだったので、帰りも王ヶ頭には寄らずに、そのまま同じ展望ルート経由で戻ることにしました。
二人共、百曲がり園地でトレッキングポールも準備して、帰路も百曲がりコースを下ります。鉄平石のガレ場は歩き辛いので、登りよりもより慎重に歩を進めます。
途中、私たちより年配ですが、ベテランと思しき“地下足袋”の登山者が“跳ぶ”様に追い抜いて行かれました。暫くして女性の方も・・・。
無事広小場に着くと、先程時間差で追い抜いて行かれた年配の方々が東屋で登山用バーナーとコッヘルで調理して昼食を摂られていました。上は強風でバーナーが使えそうもなかったので、風の無い広小場まで下山して昼食にしたとのこと。我々同様に地元松本在住のご夫婦だそうで何度も美ヶ原へ登られているのだとか。広小場から茶臼山経由でのルートもあるのですが、お聞きすると、そちらは台風でかなり登山道が流されたり荒れてしまったので止めた方が良いとのことでした。我々も東屋のベンチをお借りして、脱いだ上着をリュックに仕舞いお礼を言って先に歩を進めます。
ここからは沢沿いのなだらかな下り坂がオートキャンプ場まで続きます。新緑の中、沢の水音が涼しげで心地良く、広小場の近くの説明版にもあったガマズミ科のカンボクのアジサイに似た白い花が印象的でした。
三城のいこいの森の登山者用駐車場に到着。下りは75分、ほぼ標準のコースタイムでした。
美ヶ原の高原では上着を羽織らないと半袖では寒く感じる程風が強かったものの、今回は快晴の日を選んで来たこともありますが、7回の中では今までで一番の絶景でした。
“アルプスの展望台” の名の通り、素晴らしい眺望を堪能した美ヶ原への山旅でした。