カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 シーズン初となった、前回の4月11日箱根の金時山登山。昨夏から家内が二人目の孫が生まれた次女の所に毎月2週間近く家事手伝いに行っているため、以前に比べると二人共殆どウォーキングをしていなかったのですが、シーズン最初の金時山で、「思いの外ちゃんと歩けた!」と気を良くした家内が、次女の所に5月中旬から手伝いに行く前に「またどこかに登りたい!」との仰せ。
そこで、毎年の三城牧場から百曲がりコースでの美ヶ原登山はもう少し後(花の咲く頃)に取っておくことにして、その前に二度目となる塩尻の霧訪山(1305m)に登ることにしました。この霧訪山は長野県山岳総合センターが以前実施した“信州の里山選挙”で1位になったこともあるという、人気の山です。以前、会社の同僚から登るのを薦められた山でもありました。

 天気予報を見ながら晴れ予報の日を選んだ結果、GW明けは暫く曇りや雨マークの日があって余り良くないことから、GW中の5月4日に登ることにしました。人気の山故に多少混むかもしれませんが、頂上からの景色を優先に考えると止むを得ません。
2年前に初めて霧訪山へ登った時は、辰野町との境にある小野神社裏の一番短い北小野から登る「かっとりコース」だったのですが、これがいきなり257段の階段があるなど思った以上に急登の連続で、家内は美ヶ原の百曲がりよりもきつかったとのこと。その時に頂上に居合わせた方々から、「距離は長くなるけど、その分こっちの方が楽ですよ!」と教えて頂いた別ルートが、今回登ることにした、塩尻の下西条の「山ノ神自然園」を経由して登る「下西条本コース(山ノ神自然園コース)」です。
最も距離の短い北小野からの「かっとりコース」が1時間10分(山頂までの距離1.6㎞)だったのに対し、下西条からは1時間45分(距離2.6㎞)が標準タイムで、標高差はかっとりコースの430mに対し今回は515mとのこと。標高差はこちらの方がありますが、距離が長くなる分、かっとりコースよりも急登部分が少ないのだそうです。霧訪山は1305mという“山国信州”の中では低い里山ですが、標高差500mで結構な急登部分もあるので、手軽に登山気分が味わえますし、山頂からの360°の眺望が人気の山。

 天気の関係でGW中となったため、駐車場確保が心配なことから早目に出掛けることにして、7時半に自宅を出発。塩尻ICで降りて、ナビを頼りに「山ノ神自然園」へ、下西条の集落の中の狭い生活道路を通過してリンゴや桃などの果樹園エリアを通り8時に到着しました。すると、確かに既に10数台の車が停まっていましたが、入口には2ヶ所、白線で駐車スペースがしっかり区画された合計30台近い駐車場がありました。これならGW中でも大丈夫そうです。駐車している中には川崎や山梨ナンバーの県外車もあって、その人気ぶりが伺えます。
すると駐車場には自然園を管理されている地元の方も係でおられ、「霧訪山に登るだかい?」と、マップも載った立派なガイドブックをいただきました。事前に塩尻市の観光協会のH/Pからプリントアウトして持って行ったモノと全く一緒。イラストでの登山ルートが描かれたオリジナルのガイドを有難く頂戴し、コースやこの時期に見られる花についても教えていただき、お礼に心ばかりですが登山道整備の協力金をお納めさせていただきました。

入口には二つ無料のトイレもあり、登山準備をして8:20に出発。矢沢川の沢沿いに林道を歩いて、「たまらずの池」近くに在るという登山口を目指します。途中、自然園の名前「山の神」の由来か、「雄床山神社」と書かれた石の鳥居があり、数十段の石段の上に小さな祠が在って、その背後には“神が宿る”磐座(いわくら)の大きな岩が立っていました。確かに岩を神に見立てる様な、神聖な雰囲気が感じられます。 
すると、神社のすぐ近くに何とカモシカが身動きせずにじっとこっちを見ているではありませんか!それ程大きくないので、まだ子供のカモシカなのかもしれません。
カモシカを見るのはこれが三度目です。一度はシンガポールから帰国して、山を知らない子供たちに山の景色を見せてあげようと、上高地のコテージに一泊して小梨平まで歩いた時に、梓川沿いの遊歩道横の崖の上からじっと我々を見下ろしていました。そして二度目は三才山峠。定年前の上田の子会社への通勤時、トンネル手前の旧道脇に佇んでいました。そして今回・・・。
逃げる様子もなくじっとこちらを見つめています。まるで“山の神”の化身の様な孤高の佇まい・・・。魅入られる様に、こちらも5分間程じっとカモシカを見つめていました。
そんなサプライズもあって、普通なら15分くらいだと思いますが、ここまで20分掛かって「たまらずの池」の先の登山口に到着。8:40に登山開始です。
 自然園入口の係の方が、コースの1/3くらいに在る鉄塔までは急な登りが続くと教えて下さった通り、「12曲がり」と登山口に書かれていた九十九折りの急登の狭い登山道が続きます。
 「え~っ!?もう12回以上曲がったんだけど・・・」
 「今日は数えてない。美ヶ原の百曲がりは確か四十八だったけど・・・」

登山道の途中、道端のタチツボスミレや咲き始めたピンク色のミツバツツジ、そして初めて見た小さな尖った花弁が印象的なチゴユリ(多分)、まだつぼみの赤いヤマツツジなどが目を楽しませてくれました。
登り始めて35分、漸く鉄塔に到着。まだコースの1/3しか来ていません。少し水分補給をして早々に出発です。
なだらかな尾根道と、赤松やスギなどの根っこが地面を這う急登などを繰り返し、大芝山への分岐点となる「ブナの別れ」に到着(9:54)。ここまでの登山道はガイドにミツバツツジと書かれていますが、確かに両側にツツジの低木がたくさん見られます。まだ咲いている木は少なかったのですが、咲き揃うとさぞ見事なことでしょう。
暫く進むと目の前に直登の急坂が現れ、「男坂」と書かれています。一方、そこから右側には九十九折で迂回する「女坂」もあり、我々は女坂へ。登り易いということもありますが、それよりも女坂の周りはカタクリの群生地なのです。少し花の時期は過ぎたようですが、まだ所々に薄紫の可憐な花が咲いていました。満開の頃はさぞ見事だと思います。ガイドによると大芝山にもカタクリとニリンソウの群生地があるとのこと。
また男坂と合流した後、ツツジに囲まれた緩やかに上る登山道の先に人影が見え、そこが山頂です。10時15分、1305.4mと書かれた霧訪山の山頂に到着。
登山口からは1時間35分、自然園からは1時間55分。カモシカを見ていたり、途中登山道脇の花の写真を撮りながらだったこともありますが、ゆっくり歩いて来たので、標準の1時間45分のコースタイムよりも10分余計に掛かりました。
 天気予報を見て快晴の日を選んで来たこともあって、この日山頂からは360°の絶景が拡がっていました。北アルプスでは、何と言っても松本からは見ることが出来ない、目の前の雄大な穂高連峰が圧巻です。そして、穂高連峰の右に除く槍の先には、塩尻からだと余り見栄えのしない常念から更に白馬の後立山連峰までが見渡せます。
また、鉢盛山の左には白い御嶽が顔を出していて、目を更に左に転ずると南アルプスの仙丈、北岳、甲斐駒などの名峰が連なり、そしてその左には八ヶ岳。但し、富士山はここからは見ることは出来ないようです。
一昨日雨が降ったので、自宅のマンションからは昨日の方が北アルプスはくっきりと見えていましたが、この日は少し霞みが掛かっているものの、ここでしか味わえない360°の絶景です。
GWということもあって、この日狭い山頂には10人程の先着の登山者がおられ、更に次々に登って来られます。中にはGWの明日以降北アなどに向かうのか、先ずはその前の足慣らしと思しき方や、トレランの訓練という若い方もおられ、そういう登山者は直ぐに下山されて行かれます。すると10人程の若者のグループが登って来て、松工(松本工業高校)の登山部とのこと。引率の二人の先生と記念写真を撮ってから、足早に大芝山への周遊コースに向かって下りて行かれました。
我々は、ここで行動食を食べ、周囲の絶景とこの山頂に咲くオキナグサの写真を撮ったりしながら、30分程滞在して10時50分に下山開始。1時間15分で登山口まで下山して来ました。下りは今回は二人共ポールを使って下りてきましたが、家内もやはり楽だったとのこと。
そこから林道を歩いて自然園へ戻ります。すると、途中の雄床山神社の大岩「磐座」の上に、またカモシカがいるではありませんか。岩の上に凛々しく立つカモシカは神々しい程で、本当に“山の神”の化身なのかもしれません。感動モノでした。
 今回の二度目となる霧訪山登山。前回は北小野の「かっとりコース」、今回は「下西条本コース(山ノ神自然園コース)」。
個人的には、歩きながら登山道脇に咲く色々な花を見ながら登れる、今回の下西条の山ノ神自然園から登るコースの方が楽しく感じました。一方、登山としての足慣らしには、小野からの「かっとりコース」の方が急登の連続で良いかもしれません。家内はもう「かっとりコース」はイイそうですが・・・。
但し今回のコースも、「前回よりもナルイ」という私メの事前情報は間違いで、結構きつかった由。
とはいえ、天気にも恵まれたこともありますが、山頂からの期待通りの絶景と、そしてサプライズの“山の神”との遭遇もあったりと、二人共大いに楽しめて、下山後も心地良い疲労感に包まれた、そんな二度目の霧訪山登山でした。
それにしても、この霧訪山。前回のかっとりコースは両小野中学の子供たちが、そして山ノ神自然園は地元下西条の有志の方々が、それぞれ“おらが山”や地元の自然を愛してしっかりと整備し大切にされていることを実感し、感激しました。その恩恵に浸ることが出来て、本当に有難く感じました。
(余談ながら、そうした恩恵を実感すれば、インバウンドであれ、観光地でのゴミは捨てずに自身できちんと持ち帰れる筈なのに・・・)
そして、次回はカタクリの満開の頃、もしくはミツバツツジが咲き乱れる頃に、今回と同じ下西条コースでまた霧訪山に登ってみたいと思います。
地元の係の方はもう帰られた様で、駐車場には誰もおられませんでしたが、
 「ありがとうございました!」
お礼を言って、自然園を後にしました。

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