カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
お宮参りの前日、奥さまはいつもの表参道の美容院へ。
終ってから家内と待ち合わせて、新宿高島屋の呉服売り場で、娘たちの時の七五三の時に紛失したのか、翌日の孫のお宮参りで使うのに足りないグッズを買いに行く予定です。
そこで、待ち合わせまでの空いた時間に、特に他にすることも無いので、ホンじゃまと、一人で新宿の中古CDショップで掘り出し物を探してみることにしました。
そのCD屋さんは「ディスクユニオン」という中古のCDやLPを販売している店で、幾つも店舗がある中で、ここディスクユニオン新宿店はクラシックの専門店です。確か紀伊国屋のすぐ隣のビルの5階くらいだったと記憶していたので「このビルの筈!」と探したのですが、フロア案内にも見当たらず、念のためその界隈を探してもそれらしきショップ案内を見つけることは出来ませんでした。
当てが外れてしまい、「さて、どうしよう・・・?」ということで、紀伊国屋の文庫と新書売り場を少し見たのですが、特にこれはという本も見当たらなかったので、
「それじゃあ、久し振りにベルクにでも寄ってみますか・・・」
BERGという店名の読み方からしてもドイツ風な雰囲気で、モーニングから、ランチ、そして夜の居酒屋風に一人飲みまで。雑多な新宿らしい、カオスの様な混沌とした狭い店内なのですが、店内には「ナンパ禁止」の貼紙がある様に、女性一人でも入り易く(きっと飲み易く)、どんなに混んでいても、テーブル席は無理ですが、カウンターの立ち飲み席は間を詰めて場所を開けてくれたり、また終わると長居をせずにさっとどいてくれたりと、それが常連さんの暗黙のルールになっていて、一人でも居心地の良い店です。きっと一人でも、また誰とも話さずとも、ここに来れば“都会の孤独”を感じることなく、「ヨシ、明日からまた頑張ろう!」と無言のエールを貰える様な、そんな店が「ベルク」・・・です(と、私メは東京への出張時にしか行けませんでしたが、勝手にそう思っていました)。
会社員時代、出張帰りにあずさまの発車時刻までに時間がある時は、良くここで時間潰しをしていました。当時は私もまだ喫煙者で、肩身が段々狭くなる中で、喫煙場所を探さなくてもベルクに来れば普通にタバコが吸えましたし、或る意味、田舎からのお上りさんにとっては居心地の良い“新宿のオアシス”でした。
この日もたくさんのお客さんで店内は込み合っています。
長居をするほどの時間は無かったので、生ビールを一杯だけ注文。これが税抜き350円だったか、本当に安いんです。そして、嬉しいことに「松本ビール」という松本ブルワリーの地ビールも今回ラインアップされていました。
久しぶりのベルクの雰囲気を楽しみながら、ビールというより店内の雰囲気を味わいます。それにしても、相変わらずの盛況で何よりでした。これなら、もし何年後かに来ても、きっとまた楽しむことが出来ると思います。
その後新宿高島屋に向かい、家内の来る前に呉服売り場の場所を確認すべく事前にチェック。
家内が合流し、本来は七五三の和装小物のセットの中で、見当たらない着物の胸元に入れる小さな箱型の小物入れの「筥迫(はこせこ)」を探していたのですが個別には売られておらず、呉服売り場の年配の担当者の方にお聞きしたところ、昨今のお宮参りと七五三の様子を教えていただき、「筥迫」は七五三の和装の着物用に使う小物だそうで、お宮参りなら「むしろこちらの方が必要でしょう」と、勧めていただいた帽子と涎掛けのセットを購入しました。
それにしても、事前に見た地元のローカルデパートとは大違い・・・でした。但し、一番の違いは都会と田舎という規模からしての品揃えといったハードの差ではなく、むしろソフトの差・・・でした。
というのは、都会の老舗デパートの呉服売り場では、とっくに本来の定年を過ぎた様なベテランのスタッフの方を何人か揃えていて、お客さんにアドバイスをする、或いは客の質問にも昔と今の違いを踏まえてちゃんと答えられる・・・。まさに亀の甲より年の劫で、その豊富な知識の量が田舎のデパートとは全然違うのです。
昔は、地方のデパートにだって絶対にそうした地元の特色ある“しきたり”や独特の慣習を良く知ったベテランスタッフがいた筈なのです。そしてそれこそが老舗への信頼だった筈。
いくら市場としてのニーズとデマンドの差とはいえ、人件費削減か、高いベテランスタッフを切って安い若手に切り替える・・・。そうした有能の人材を簡単に切ってきたからこそ、いくら売り場を今でも確保していても真の客のニーズを捉え切れず、本来なら、そして昔なら、いとも簡単につかんでいただろう地元のニーズを逃がしてしまって、オンラインや首都圏のデパートに取られてしまっている・・・そんな身から出たサビの“いたちごっこ”の繰り返しなのではないでしょうか・・・。
もしそれがコストに見合っているなら、別に何の後悔もする必要はないのですが、地元で購入するつもりで、「筥迫(はこせこ)」を探して聞いても「えっ?」と絶句したきり何も答えられなかった田舎の“老舗”デパートの若い店員さんと、「あっ、それは・・・」とすぐに答えてくれ、しかも最近のお宮参りと七五三の状況をふまえてアドバイスをしてくれた“お婆ちゃん”スタッフとの差に、そんな感想を持った次第です。
昔、本ブログに “町の電気屋さん”の生き残り策としての、大手家電量販への対抗策は、サザエさんに登場する“三河屋”の三平さんの御用聞き、それは例えば老夫婦世帯の切れた蛍光灯の交換作業とか、そういった町の小さなニーズを如何に取り込むかだと書いた記憶があるのですが、衰退する田舎の老舗デパートも、もしかするとそうした地元の町の小さなニーズを取りこぼして、全てを時代の“せい”にしてきたツケで、それは“身から出たサビ”、或る意味時代変化についていけなかった“自業自得”なのかもしれない・・・と新宿の老舗デパートで家内の買い物に付き合いながら感じた次第。
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