カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
恒例の信州松本の夏の音楽祭、セイジ・オザワ松本フェスティバル、略称OMF(旧SKF、サイトウキネン音楽祭から名称変更。オーケストラの名称は、音楽祭の名称変更時に同様に検討されたのですが、メンバーの反対でSKOのサイトウキネン・オーケストラのまま)。

ET、スパーマンといったハリウッドの映画音楽のみならず、1964東京大会のオリンピック・マーチと共に、個人的に過去のオリンピックの中で音楽作品として最も素晴らしいと思うロサンゼルス・オリンピックのテーマ曲もジョン・ウィリアムズの作品でした。そうした作曲の方が有名ですが、彼はオザワ・セイジが長らくボストン交響楽団(BSO)の音楽監督だった1980年に、BSOがオーケストラのシーズンオフとなる夏の間、ポピュラー音楽やファミリー向けコンサートを演奏する楽団であるボストン・ポップス・オーケストラの常任指揮者として小沢が招聘した人でもあり(95年から桂冠指揮者)、その縁もあって今回或る意味“盟友”であるマエストロ・オザワのために、SKOで自身の作品を振るために齢91歳の彼が実に30年ぶりに来日することになりました。因みに、この機を逃さず?か、ボストン・ポップスも10月に来日し、東京と大阪で公演を実施するとのこと(但し、指揮はジョン・ウィリアムズではなく、現首席指揮者であるキース・ロックハートとのこと)。
さて、ジョン・ウィリアムズは評判になった2020年のライブ盤が発売されているウィーンフィルも自身で指揮しており、またベルリンフィルも演奏会で彼の作品を取り上げるなど、最近は世界の主要オケでも彼の作品がオーケストラのコンサートでも演奏されるようになっています。そうした演奏をYouTubeでも現地での熱狂ぶりを含めて視ることが出来ますし、また彼の作品もスクリーン作品のポピュラー音楽としてだけではなく、クラシックのコンサートで演奏されるオーケストラ作品としても近年評価されてきていることが分かります。
こうした背景もあってか、初めて“ポピュラー音楽”をサイトウキネン・オーケストラが今年のOMFで演奏することになり、しかもそれを実に30年ぶりに来日してジョン・ウィリアムズ自身が振るということもあって、大いに話題になりました。
そのため、9月2日のOMFだけではなく、創立125周年記念としてドイツグラムフォンのガラ・コンサートの日本公演としても、今回の松本と全く同じメンバー&プログラムで9月5日にサントリーホールでも演奏することになり、こちらもチケットは抽選になったそうです。

『オール・ジョン・ウィリアムズ・プログラム』と銘打って行われた前日のコンサートは、前半がジョン・ウィリアムズ90歳を祝うガラ・コンサートの指揮を任されるなど、氏の信頼も厚いステファン・ドゥネーヴ指揮による日本にゆかりのある2曲。当時の皇太子さまと雅子さまのご成婚を記念して作曲された「雅の鐘」と、盟友セイジとボストン交響楽団の4半世紀にわたる濃密な連携を祝して書かれたという「Tributes! (For Seiji)」で幕開けし、「遥かなる大地へ」組曲と「E.T.」から3曲。
そして、後半が御大ジョン・ウィリアムズ自らの指揮で自作の演奏。
「スーパーマン・マーチ」『ハリー・ポッター』より3曲、そしてこの日のコンマスを務めた豊嶋泰嗣氏のヴァイオリン・ソロでの『シンドラーのリスト』テーマ、そして『スター・ウォーズ』より3曲、そしてアンコールに「ヨーダのテーマ」「レイダース・マーチ」「帝国のマーチ」が演奏されました。

微笑ましくはありましたが、後半はチェロの第2プルトでしたので、そこから指揮台横までいちいち出入りされるのが見ていて気の毒でした。
さて、演奏は後半、ジョン・ウィリアムズが登場しただけで開場の雰囲気もオーケストラの演奏までもがガラッと変わってしまったのが驚きでした。
しかも、ジョン・ウィリアムズ自身のタクトは前半のドゥネーヴ氏の大振りなタクトに比べ、振るのが楽しくて堪らないとでもいう感じで、そのにこやかな表情と共にホンの少し棒先を動かすだけなのですが、それなのにオケの音色が、演奏の熱気が、全く違って聞こえたのが不思議でした。氏のオーラと言ってしまえばそれまでですが、30年ぶりという映画音楽のカリスマ来日での期待が熱気となって会場全体に満ちて、それが演奏自体を盛り上げたのかもしれません。カリスマのカリスマ足る所以でしょうか。
演奏終了後ジョン・ウィリアムズの「セイジ!」という呼びかけに応え、マエストロ・オザワも車椅子でステージに登場し、その後も更にアンコールの演奏もあって、会場はスタンディングオベーションで大盛り上がり。
そんな昨日の会場の熱さが、タイムトンネルを越えてまるで同時中継で行われているかの様に、こちらの会場まで前日の熱気が伝わって来たのでした。