カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
シンガポールからの帰任後、一新したオーディオセットの中のレコードプレーヤー。東京への出張帰りに電車を予定より少し送らせては秋葉原に何度か寄って、自分なりに選んだオーディオ専門店で担当者のアドバイスをもらいながら一式全部揃えたのですが、限られた予算の中で担当の方が勧めてくださったレコードプレーヤーがDENONのDP-37Fでした。
今回の狭いマンションへの引っ越しを機に、その時に購入したアンプもCDもMD(一体何だったんだろう?あっという間に消えてしまいました)もFMチューナーもカセットデッキも置く場所が無いので全て廃棄し、アンプとCD、チューナーはマランツのネットワークCDレシーバーM‐CR612一本に統一。
三本あったスピーカーも置くスペースが無いことから、自作した長岡式バックロードホーンの名器スワンは泣く泣く諦め、結局1979年に社会人になって買った、手持ちのスピーカーの中では一番古い(でも音に変なクセが無く音場感があって、エンクロージャーも頑丈で一本21.5㎏もあった)LS-202(KENWOODではなく前身のTORIOです!)に絞りました(秋葉でクラシックを聴くならと薦められ、実際に試聴した上で気に入って購入したKEFのトールボーイCoda 9は設置面積が狭いので、物置兼書斎のサブシステム用に使っています。因みにCoda 9は10.5㎏とLS-202の半分の重さでした)。
そして、最後に残ったのがこのDENONのレコードプレーヤーです。
廉価版で再版されていた嘗ての名盤など、学生時代からコツコツと買い集めた130枚程のLPレコードは捨てられず、そうかといって、それらの手持ちの古いレコードを聴くためだけにまた新たにプレーヤーを買い替えるのもバカバカしいので、些か古くてもこのDENONのレコードプレーヤーを新居でもそのまま使い続けることにしました。
今でもネット上のDENONのH/Pで見ることが出来る当時の紹介記事に拠ると、
『ダイナミックサーボトレーサー採用アームを搭載したフルオートプレイヤーで、ターンテーブル部には磁気記録検出方式のDENONクォーツターンテーブルを採用して、磁気記録検出方式とクォーツロックの組み合わせに両方向サーボを追加することにより、安定した回転性能を実現しています。
トーンアーム部にはダイナミックサーボトレーサーを搭載した電子制御式無接触トーンアームを採用。ダイナミックサーボトレーサーではカートリッジのコンプライアンスとトーンアームの実効質量による低域共振を水平、垂直両方向ともに電子的にダンピングしており、クロストークの悪化や混変調歪を効果的に抑制しています。なお、アーム本体には軽質量ストレートアームを採用しています。
また、鏡面仕上げが施されたキャビネットで、カートリッジとして楕円針付き軽自重MMカートリッジであるDL-65を装備しています。』
このレコードプレーヤーを購入したのは、シンガポールから帰任して2年後の1996年くらいだった筈。従って、発売後既に10年以上も経っていたことになりますが、時代は既にCDが主流になっていて、レコードプレーヤーは脇役で隅?に追いやられていました。従って、新たに開発費を掛ける程の市場規模では無くなっていたのでしょうし、また一方で、ターンテーブルとしても技術的にはモデルチェンジを繰り返す必要が無い程に熟成もしていたのでしょう。
社会人になって買ったSONYのベルトドライブ方式のレコードプレーヤーは手動でしたので、ややもするとズレてガガガというノイズを立ててしまう(基本は最初にヴォリュームをゼロに絞っておいて、針を降ろしてからボリュームを上げるのが本来なのですが)など、苦労したレコード盤に針をピンポイントで“溝”に静かにそっと下ろす作業が、このプレーヤーはフルオート故に、スタートボタン一つで殆どノイズも立てずに自動的にピタッと接地するのが実に感動モノでした(今でも凄いと思います)。
しかし、このレコードプレーヤーを購入した当時も、時代は既にCD中心になっていて、そのため購入する新盤も全てCDでした。
1980年代になってCDが世の中に登場した初期は、LPとCDが併売されていた期間もあったのですが(個人的にはジャケットが小さいCDよりも音源に関する説明の情報量が遥かに多いLPの方が良かったのですが)、やがて新たな音源は全てCDのみとなり、結果としてシンガポール赴任中も現地のCDショップで購入したモノ(日本で云う輸入盤)も含め、全部で300枚程になったCDが日常的な音楽鑑賞(死語?)の中心とならざるを得ず、社会人になって揃えたシステムコンポもシンガポールに持って行ったサンスイのCDミニコンポも全て廃棄して、日本へ帰任してレコードプレーヤーも含め一式買い替えた当初は結構レコードも聴いていたのですが、結局は新しい音源が増えないことから次第に使わなくなってしまいました。
マンションへの引っ越し前にオーディオ類をどう整理しようかと迷い、一応の動作確認もふまえて全部試聴しようと思ったのですが、どのモデルも購入して四半世紀が経っていますので、電化製品は経年劣化で特にアンプは接続不良気味。それまでもCDは問題無く聴けていたのですが、久し振りに駆動させたレコードプレーヤーはちゃんと動いて回転しているのですが、アンプ側の接続不良か、或いは針が寿命なのか、上手く音出しが出来ませんでした。こうした電化製品の経年劣化は止むを得ません。
そのため既にご紹介した通り、新居の狭いマンションでは設置スペースがありませんので、アンプとCDプレーヤー、チューナーを個別に揃えるのは諦めて、スペース効率が良いマランツの最新一体型のネットワークレシーバーに替え、更にネットワークオーディオ故に新たな音源としてインターネットラジオや音楽のサブスクも楽しめるようにしました。
マランツのネットワークレシーバーM‐CR612は、サイズはミニコンポ並みに小型ながら、ピュアオーディオ機器として他のフルサイズの機種にも引けを取らないくらいに高性能で、オーディオ専門誌では発売以来何年もベストバイモデルとして非常に高い評価を受けている機種なのですが、ただ残念ながらアンプ側にPhono端子が無いため、そのままではフォノイコライザーを内蔵していないレコードプレーヤーは接続出来ず、別途(レコードの音声信号を増幅するための)フォノイコライザーを購入してプレーヤーとアンプを中継する必要があります。
DL-37Fは使用するカートリッジが専用のMM型しか使えないので、フォノイコライザーもMM対応機種でOKです。
そこでMM専用でコスパの良いモデルを探して、オーディオテクニカのAT-PEQ3を購入しました。
このモデルはMM型カートリッジ専用のフォノイコライザーで、6000円ちょっとで購入出来ます。僅か160gという小型サイズですが、高音質ICをイコライザー回路に採用したクリアな音質で、音響プロが愛用していることも多いという評判の高コスパモデルとのこと(唯一のネックは、イコライザー側に独立した電源ON/OFFのスイッチが無いこと)。
地元でも松本市内唯一となったオーディオ専門店が頑張っていて、そちらや家電量販店でも注文は可能ですが、どこもそんな特殊な製品は取り寄せになるので、そうであれば再訪不要なネット通販の方がユーザーにとっては便利。そのため現物を目で見て確認する必要が無い場合は、結局店頭販売ではなくネット注文でのオンラインショッピングになってしまう悪循環・・・。
届いたフォノイコライザーを経由して、早速レコードプレーヤーをレシーバーのアナログ端子に接続し、久し振りにレコードの音出しです。しかし、音圧が上がりません。アナログ変換の問題もあるのか、デジタル音源と比べるとボリュームは半分位の聴感しかありません。昔聴いていた時のイメージとは随分違います。アンプやイコライザーの問題(勿論、モデルの違いによる音質などの変化はありますが)というよりも、ノイズなども結構目立ちます。オリジナルの針はカタログ上の耐用は500時間で、実際そこまで使用したという記憶は無いのですが、やはり四半世紀も経てばレコード針も経年劣化しているのかもしれません。
そこで交換針を探したのですが、当然ながら指定された交換針やカートリッジは既に製造中止。JICOというメーカーに互換針もありましたが、かなり高価。材質の違いに拠り何種類かあるのですが、最低でも9000円以上で、針先が高品質な素材だと2万円以上もしています。しかも9000円の交換針は耐用時間が150時間しかありませんが、DENONオリジナルの針は500時間です。
そこでオークションやフリマで探したところ、一年程前ですが過去販売されたDENONの交換針の未使用品が、当時の販売価格(5000円)以下でオークションサイトに出ており入札しようとしたのですが、うっかり締め切りを過ぎてしまい落札出来ませんでした。
そして、その後は時々チェックしてもなかなか見つからずにいたのですが、最近未開封の未使用品がフリマサイドに出ていて8500円とのこと。もし、ここで逃すと今度またいつになるのか分からないので、値下げ交渉もせず、思い切って言い値のその価格で購入しました。
因みに、84年からターンテーブルのDP-37Fは発売がされていて、購入したのは96年頃だとして、交換針やカートリッジは2000年代頃までは販売されていたでしょうから、未使用とはいえ出品者が購入されてから最低でも15年位は経っているでしょう。当時の販売価格が5000円でしたから、その後の物価上昇等考えれば(交換針自体の価値が上昇しているかどうかは別として)止むを得ません。
届いたカートリッジを見ると、確かに未使用で外観は新品同様です。しかしさすがに15年近くも経っているため、開封してみると針先を守るクッションカバーのスポンジが湿気を帯びて加水分解でベトベトと泥の様になっていました。
止む無く、つまようじでその“泥”を慎重に且つ丁寧に取り除きました。目視では、幸いそれ以外の異常は認められませんでした。
マニュアルに沿って慎重に針を交換し、音出しです。
・・・すると、まるで見違えました!(勿論、見たのではなく耳で聴いた音なのですが・・・)アナログレコード特有の、あの柔らかいサウンドが蘇ったのです。しかもフォノイコライザー経由の音圧も、CDやインターネットラジオなどのデジタル音源に比べるとアナログ入力では聴感上1.5倍くらいのボリュームが必要ですが、前回の倍程にアップしてします。そうです!これがレコードの音です。暫くウットリと聴き惚れていました。
単純に云えば“まろやか”で、音に優しく包まれる感じ?・・・でしょうか。これが、久しく忘れていた“アナログ”の魅力・・・なのでしょうか?
本当に久し振りで、先ずは大好きだったオトマール・スウィトナー、そしてカール・ベームのモーツァルト。それからラファエル・クーベリックのシューマンとマーラー(彼のモーツァルトも大好きなのですが、CD全集で持っています)、そしてイシュトヴァン・ケルテスのドボルザークと、ザンデルリンクのブラームスにケンペのベートーヴェンetc・・・往年の名盤の数々。
更にジャンルを変えて、ふきのとうやオフコース、そしてチューリップ・・・。洋盤(死語?)ではABBAやQEEN、更にはアール・クルーなどなど・・・。音と共に懐かしい昔(大袈裟に云えば“青春”)が蘇ります。
こうした私の様なレコードを懐かしむ“昔の若者”のみならず、最近では若者世代の間でもまたアナログレコードが秘か?なブームになっているといいます。そのため、最近ではPhono端子が無いアンプも増えていることから、そうした流れに対応してフォノイコライザーをプレーヤー側に内蔵し、しかもBluetooth機能が搭載されたワイヤレス対応で入門用のお手頃なレコードプレーヤーも発売されているので、手軽にアナログレコードを楽しむことが出来るようになっています。
また海外では、70年代から80年代の日本の所謂“ニュー・ミュージック”が“シティ・ポップス”と呼ばれて人気を博しているとかで、NYに居る長女の婿殿も日本の“シティ・ポップス”に嵌まり、その類のレコードを集めて、わざわざ最新のレコードプレーヤーを買って聴いているのだとか。娘からそれを聞いていたので、80年代中心の“Jポップ”の手持ちのシングル盤数十枚を、昨年コロナ禍明けで久しぶりに来日出来た折に全部プレゼントして喜んでもらいました(いずれ私メの亡き後は、手持ちのLPもきっと引き継いでくれるでしょう)。
・・・とまぁ、最近の時流に合わせてという意味では決して無く、何周かの周回遅れだったのが、知らない間に先頭がまた追い付いて来ただけなのですが、世間の時流がどうこうではなく、飽くまで懐かしい昔をまた“良い音”で楽しんでいこうと思っています。
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