カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
奥さまが、「何となくカツカレーが食べたーい!」との仰せ。
これまでも家で日本的なカレーを作った際は、時々スーパーの総菜売り場のロースカツを買って来てカツカレーにして食べていましたが、今回はどこか外の食堂で食べたいとのこと。
個人的に、日本人の“国民食”とも云われるカレーは、味噌汁や漬物、煮物(の味付け)などと同様に家庭料理の代表格で、ポークでもチキンでもビーフでもなく(例えそれがちくわであったとしても)、ましてや旨い不味いでも辛い甘いでも、はたまた濃い薄いでもない、それぞれがその家庭の味。従って、カレーをどこかの食堂など「外食で食べる」という選択肢はこれまで私にはありませんでした(仮に、もし何も選ぶモノが無い食堂があったとしたら、その時には一番無難なカレーを選ぶかもしれませんが・・・)。
片やシンガポールで大好物だった(北)インド料理は、そうしたある意味“日本式”のカレーとは全くの別物。ですので、カレーでは無く飽くまで“インドカリー”なのです(本来は具材やスパイスの違いにより、○○マサラ・・・云々で、〇〇カリーとも言わないのでしょうが、シンガポールでもメニュー表に英語で書かれた○○マサラという名称を見ても聞いても分からないので、フロアスタッフのインド人のおじさんに、プロウン、マトン、ベジタブルなどその日食べたい具材と辛さを伝え、後は全部お任せで注文していました。出張したバンガロールやムンバイでも毎日インド料理を食べましたが、シンガポールのその馴染み店の方が遥かに美味しかったです。あぁ、今は無き「モティ・マハール」。決して高級店ではなかったのですが、本当に旨かった!しかも安くて、自腹で接待しなくてはいけない時は、シンガポールではコスパの良いインド料理かベトナム料理が選択肢でしたので、出張者も時々連れて行きましたが、極端に言うと場末の店風だったので、半分は感激し半分は「こんな店に連れてきて!」と怒っていました。確かに赴任者も含め、日本人客はあまりおらず客層は欧米人が殆どでした)。
この「キッチン南海」は、有名な東京神田神保町(じんぼうちょう)の本店で2年間修業したというマスターが地元に戻り、暖簾分けをしてもらう形で昭和50年(1975年)に創業したカレーとトンカツの専門店です。
昭和50年というと、私メの高校卒業年ですので、高校時代に私が食べたカレー店の今は無き「たくま」や「デリー」といった松本のカレー専門店よりも新しく、私はこれまで名前は聞いていても食べに行ったことはありませんでした。
こちらのマスターは神田の本店の親族ということで、都内中心に数ある暖簾分けのお店の中で関東圏以外では唯一のお店だそうで、お店を彩る緑色は神保町・本店の創業者が当時のプロ野球球団「南海ホークス」のファンであったことに由来するのだとか。因みに神田神保町の本店は1966年に創業し、2020年6月に店舗の老朽化により惜しまれつつ閉店。しかし、20年以上本店で料理長を務めた方が二年前に本店のあった場所から数分歩いた所に「キッチン南海 神保町店」を再開し、現在も切り盛りされているそうです。そして、この料理長さんはナント松本市のご出身だそうですので、余程「キッチン南海」は松本市に縁があるんですね。
「キッチン南海 松本」は、L字型に配置されたカウンターに7席と4人がけのテーブルが5卓あり、すべての座席を合わせると27席。オープンキッチンでご主人が黙々と調理をされ、片やホールでは元気の良い女将さんがテキパキと動き回っていらっしゃいます。驚くべきは、女将さんの記憶力の素晴らしさ。注文票は無く、20数人分のオーダーを一切メモも取らず、客に「〇〇でしたっけ?」などと確認することも無く、ご自身の記憶力だけで配膳と精算をされています。逆に“ボケる”暇も無いくらい忙しいのでしょう。それにしても拍手を送りたくなる程で、「お見事!」の一言に尽きます。
我々は、イオンシネマで朝一からの映画「Dr.コトー診療所」を見た後、11時40過ぎに入店。もう食べ終わった方がおられたようで、ちょうど空いたテーブルを片付けていただいて、すぐに座ることが出来ました。その後も続々とお客さんが来られ、了承を得ての相席になるテーブルもあるなど常に満席状態で、人気の程が伺えます。
キッチン南海は勿論カレーが有名なのですが、カレー以外にもトンカツやビフカツ、エビフライ、更には生姜焼きといった定食類もあり、“町の洋食屋さん”といった感じで、実際“たまには・・・”といった感じで、カレー以外の定食を注文される常連さんと思しきお客さんもおられます。
しかし我々は、私メが王道のカツカレー(850円)で奥さまはロースカツカレー(1100円)を選択。有難いことにカツカレーにもサービスで豚汁が付いて来ます。
カツカレーに載っているトンカツは、普通の数センチ巾での縦だけではなく横半分にもカットされていて、一切れが一口大で実に食べ易い。カツカレーのトンカツは薄めのトンカツなのですが、これが驚く程柔らかい。お互いにシェアしましたが、ロースカツは普通のカツの3倍以上の厚さ。カレー皿に長野県産のコシヒカリのご飯と千切りキャベツにカツが載せられてカレーが掛けられているのですが、カレーの量がたっぷり。福神漬けも添えられていて、足りなければテーブルに瓶に入った福神漬けが置かれていますし(ラッキョウ漬けは残念ながらカウンターにしかありませんでした)、カツ用に必要なら辛子の小瓶も置いてあります。
カレーのご飯が想像以上に多かったのですが、たっぷりのカレーのおかげで最後のワンスプーンまでしっかりカレーと一緒に食べることが出来ました。家内は全部ご飯を食べきれず、「最初からご飯を小盛にして貰えば無駄にならずに良かったのに」と反省しきり。
カレーの味は、ターメリックかガラムマサラか、個人的には何かのスパイスが足りない感じがしましたが、これは普段家庭のカレーが昔からジャワカレーとバーモントカレー(若しくはディナーカレー)のブレンドなので、その“標準的な味”に慣れ過ぎているのかもしれません。ただ、神保町のカレーはかなり黒っぽかった筈ですが、松本はそれとも違う感じでした。
サービスの豚汁は、豚肉が入ったお味噌汁といった感じで、野菜が実に具沢山。家内ではありませんが、これだけでお腹が一杯になりそうです。
久しぶりに外食で食べたカツカレー。美味しくて十分に満足ではありましたが、やっぱりカレーは自分の舌の記憶が強過ぎるのか、日本的なカレーとは違う料理であるインドカリーは別として、結局慣れ親しんだ自分の家庭の味が一番なのだろうと感じた次第です。
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