カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 お風呂の後は、「金宇館」での一番の楽しみだった激励会を兼ねた夕食です。
改装前と同様、金宇館は一階にダイニングルームがあるのですが、赤ちゃんがいる我々は、他のお客様の迷惑にならぬように、我々だけで二階の小さめのダイニングルームで頂くことが出来ました。時間も、通常夕刻6時からの夕食タイムをずらして、我々は7時にお願いしました。

 以前リニューアル前に何度か会食で利用させていただいた時も、全てを4代目が創られる懐石料理に感激したのですが、休業中は更なる料理修行に出られたと伺いました。そして久し振りの今回の料理ですが、何となく以前よりも更に繊細さを増した料理になった気がします。こんな逸品を京都ならいざ知らず、この松本で頂ける幸せを感じざるを得ませんでした。
お品書きはなく、若い中居さんが一つずつ配膳される鉢毎の料理を丁寧に説明していただいたのですが、老化現象故か殆ど覚えられず、僅かな記憶と写真とでご勘弁ください(内容が違っていたらスイマセン)。
その微かな記憶の中で印象的だったのは、信州の早春の風味らしいフキノトウが、時に隠し味風に、揚げたり、刻んだり、炒めたりと調理法を変えて、上手くあしらわれていたこと。海無し県の信州故、全てとはいきませんが、出来るだけ信州で手に入る食材で地産地消に心掛けていることが伺えました。

 この日の懐石料理のコースは、先ず揚げたフキノトウを散りばめた茶碗蒸し(だったか?)の椀物に始まり、続いてタラの芽の天麩羅、八寸としてコゴミの白和えやワカサギの南蛮漬けなど、そら豆のすり流し、お造りとして馬刺しのヒレ、焼き物として春らしく鰆と新玉ネギの擦りおろしのソース、炊き合わせでタケノコと蕗の煮物、更に焼き物で信州牛のイチボ、写真を撮り忘れましたが〆にホタルイカの炊き込みご飯。そして、デザートとして桜のアイスクリームの全10品。
因みに、秋の新蕎麦の時期になると、季節の炊き込みご飯に代わり、4代目のご主人が打つ蕎麦屋顔負けの二八の手打ちそばが料理の〆になるそうですので、それも秋から冬に掛けての楽しみかもしれません。
 最初に長女と婿殿は松本エール、私メはプレミアムビール、家内と次女はソフトドリンクで長女の渡米の激励に乾杯です。私メは飯山の地酒水尾を追加。
料理もですが、盛り付けられた器も素敵です。
三人の男の子のお母さまでもある若女将も途中で来られ、「やっぱり女の子は可愛いですよねー」と次女の隣のベビーカー(自分たちのは車から降ろさずに、旅館で用意されていた物をお借りしました)で眠る孫の女の子をあやしながら、暫し二人で結婚前の勤務時代の航空会社談義。
ゆっくりと味わいながら1時間半。お腹よりむしろ心が先に一杯になるような、そんな料理の数々。心もお腹も満足満腹になりました。
 翌朝、同じ食事処での朝食。
安曇野産コシヒカリが木製(木曽のさわらか桧でしょうか)のお櫃に入れられて。それぞれ個人毎にお膳に載ったオカズが6鉢。若竹煮、山形村産の長芋のとろろ汁、独活のキンピラ、身欠き鰊、コゴミのクルミ和え、香の物。お味噌汁。最後に温かな餡かけ豆腐と食後のフルーツも。
いつもはご飯茶碗一杯もあれば十分でしょうが、こういう特別な朝食だとお替りも。おひつは足りなくなれば追加で持って来てくれます。全て完食し、
 「ごちそうさまでした!」
食事のあと、ラウンジで丸山珈琲をいただき、チェックアウト前にまた朝風呂へ。この日も一人だけで、まさに“湯ったり”ノンビリ出来ました。

 ご主人と若女将、そして若いスタッフとの何気ない会話や仕事ぶりの中で、金宇館のさり気ない(押しつけがましくない)ホスピタリティーを随所に感じることが出来ます。松本には他にもっと高級で豪華な宿もないではありませんが、個人的にはこの小さな温泉旅館の「金宇館」がベストだと思っています。また長女が帰国した折にでも是非泊まりたいと思います。
そしてここなら、ワンコたちを家に置いて来て、翌朝早く食事の準備に家に帰ることも出来ますので、ワンコ連れでしか旅行の出来ない我々にとって、「金宇館」が唯一ワンコ抜きで泊まりが出来る場所なのです。

 翌日のフライトで渡米する長女との思い出に残る「金宇館」での激励会。リニューアル後の営業開始のお葉書も頂いていましたが、ここで漸く新装なった「金宇館」に念願の宿泊をすることが出来ました。偶然にも改装を手掛けた地元の工務店が、24年前に我が家を建てて頂いた同じ工務店だと知り、これも何かの縁でしょうか。初めて泊まった次女夫婦も含め、我が家の皆が満足した「金宇館」でした。
チェックアウト後、ご主人と若女将に見送られ宿を後にしました。
 「お世話になりました。また来ます!」

 宿から車で下る坂からは、街並み越しに残雪の乗鞍岳を眼前に臨むことが出来、例え“つかの間”の短な非日常だったにせよ、正に文字通りの“束間の湯”に投宿した客人を優しく見送るかの様な、如何にも松本らしい眺めが拡がっていました。

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