カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
17日間に亘った、2022北京冬季オリンピックが終了しました。
独裁国家による人権弾圧か、国家覇権主義か、はたまた新たな東西冷戦とコロナ禍を嘲笑う神の裁定か、更には金権腐敗の商業主義に陥ったIOCへの警告か・・・?
背景や原因(直接的ではない遠因として)は分かりませんが、今回北京冬季オリンピックに関し、それぞれは因果関係なく全く無関係に引き起こされた事象の数々も、しかし時に意図的に、或いは作為的に、時に無意識に、また偶然に、しかし時には必然に・・・・と思わざるを得ない、まさに“呪われた”としか形容できない、スポーツの持つ純粋且つ高貴なパフォーマンスとは余りに無縁でオドロオドロしく醜い事象の連続でしかなかった、歴史に汚点を残した冬季オリンピックだった様に思います。
やはり、この時期に、この国で冬季オリンピックなど行われるべきではなかった。それは国家威信にかけるアホな開催国のみならず、それを利用しようとした主催団体以下、マスコミなどその恩恵に預かろうとした全ての利害関係者が猛省すべきことのように思います。
本来雪などそれ程降らずに冬季競技が開けない場所で、「夏冬の両方を開催するのは北京だけ」という国威発揚的な妙な自慢で、ミサイルを発射してまで会場に人工雪を降らせるという、自然界の神をも恐れぬ所業に始まったこの大会。それが人工雪は硬過ぎるという欠陥会場で、直前の公式練習で転倒し固いバーン故に脊椎損傷で参加辞退を余儀なくされたスノボー選手に始まり、ジャンプスーツの規定違反、男子500mの地元審判員による有力選手が登場する最終二組への不可解なフライング判定、結果自国選手を勝たせたショートトラックの違反裁定、そして見ていた世界の誰もが異を唱えたスノボージャッジと、次から次へと問題が発生し、最後のとどめは女子フィギアのドーピング疑惑。人権問題や人種差別は無いと云いながら、片やメダルを取った選手は英雄と称賛し、転倒したフィギア選手は米国のスパイかとまで罵倒された、どちらも今回の自国開催のために中国籍を選んだ米国生まれ米国育ちの中国系選手たち。
開会式での民族衣装の少数民族も、ウイグル族弾圧批判を封じるための少数民族への敬意を表すどころか、むしろ中国皇帝に平伏す嘗ての朝献外交の様な“中華思想”の再現にしか見えませんでした。正に不祥事続きで、欺瞞に満ちて呪われた2022オリンピック北京冬季大会。
ウイグル族への人権問題や外交ボイコットなどでの世界からの批判に対し、「オリンピックに政治を持ち込むな!」と批判した中国共産党政権が、国内統治強化のためにオリンピックを最も政治的に利用した大会でした。
そんなヒドイ大会でも、4年に一度に掛けた選手たちの一生懸命で真摯な態度には、今回もまた一服の清涼剤の様にホッコリと胸を打たれ、また感動の涙を流すシーンがありました。
メダルを期待された女子モーグルの17歳川村あんり選手。メダルの期待に応えられなかったことを謝りながら、氷点下20度近い極寒の開場に集まった報道陣を気遣い、「寒い中、ありがとうございました」という彼女に、「なんて子や!」と、こんな娘さんを育てられた親御さんを思います。
また、怒りで燃えたという3回目の完璧なパフォーマンスで見事金メダルを取った平野歩夢選手の弟さんである海祝選手。兄を称えるコメントで何度も「兄ちゃん」を繰り返し、父親のことになると「父さん」と言い換えた二十歳の青年の純朴さ・・・。
「素直でイイ兄弟だなぁ・・・」
ドーピング疑惑の影響とはいえ、華麗なスケーティングで見事銅メダル獲得の坂本花織選手。団体銅メダルの後のインタビューでは天真爛漫さ全開の正に“浪速の元気印”。インタビュアーからヤラセっぽく関西弁での心境をと尋ねられると、そこは関西のオバちゃんのノリで、
「やったったんでー!」
サスガです。アッパレでした。
そして、残念ながら今回はあまり成績の振るわなかった長野県勢。
今度こそと、過去2大会連続の個人銀メダルで、今回は金メダルを公言し初戦で惨敗した白馬村出身の渡部暁斗選手。しかし、最後に1位と僅か0・6秒差での3大会連続での銅メダル獲得にほっとしました。そして複合団体での28年振りというメダル獲得は、もっともっと騒がれても良い快挙だと思います。嘗ての様にジャンプでリードしてでの金メダルではなく、ルール改正で日本勢に不利となるジャンプの得点を下げられた現行ルール下で、しかもジャンプ1位ではなくメダル圏外の4位から距離で順位を上げての銅メダルなのですから、正にアッパレ!
一方、連覇が期待されながら惨敗した茅野市出身の小平奈緒選手。その十分過ぎる程のこれまでの努力と頑張りに、そして何より彼女の人柄に、地元民として労いと感謝の気持ちで一杯です。
「お疲れさま!本当にありがとうございました。」
最後に、金メダルへのゴール直前に転倒し、スポーツの残酷さを思い知らされた女子パシュート決勝。
その彼女たちを大会まで一年半追ったという共同通信カメラマン(大沼廉氏)の現地取材記事から。
涙にくれる彼女たちを撮影していいのかと迷いながら声掛けし、撮影した際に、涙でファインダーをなかなか覗けずにいたのだそうです。
『(前略)私はセレモニーの間、とても悩んでいた。終了後に各選手をその国や地域のカメラマンが呼び止め、個別に撮影させてもらえる時間があるが、今回は呼び止めるべきなのだろうか。それ以前に個別撮影するべきなのだろうか。その場にいた日本人カメラマンは私一人だけだ。
(中略)どうしよう。頭の中でぐるぐる悩んでいるうちにセレモニーは終わった。メダリストたちが各国のカメラマンの方へ歩み寄ってくる。悩んだ末、「いいですか」と静かに声をかけた。3人は「いいですよ」と応じてくれた。目を真っ赤にして肩を組み、ポーズを取る姿を見て、私はレンズを向けたまま、不覚にもぼろぼろと泣いてしまった。
(中略)すると「いや、そっちが泣くのかー!力が抜けるわ」と目に涙をためていた3人は、涙顔のまま大笑い。私もむせびながら、どう撮ったか記憶が定かではないが、後でカメラを見ると満面の笑みが記録されていた。名前は知らないまでも、いつも撮影に来ているカメラマンと分かってくれていたようだ。
撮影後、別の競技会場へ移動する車中でカメラマンの先輩がこう声を掛けてくれた。
「あの時、おまえが声を掛けて写真を撮らなかったら、このレースで残るのは転倒の瞬間や涙に暮れる菜那選手など、悲しい写真ばかりだった。ここまで努力して、最後まで懸命に闘った選手たちもそれはつらいはず。ほんの少しだったけれど、彼女たちが心から笑顔になれる瞬間を残せた」
情けない姿を見せてしまったが、そのせいで彼女たちの心が少しでも和らいでくれるのなら、と願わずにはいられなかった。生涯忘れられないひとときとなった。』
メダルを取った選手よりも、メダルを期待されながら敗れ去る選手たちの姿の方が胸に刻まれたていく中で、本来無断コピーして掲載してはいけないかもしれませんが、本当に何だかほっと救われた気持ちがした記事でした(少しでも多くの人と共有できたらと思い、敢えて掲載させていただきます)。
カメラマンでさえそうなのです。身内と言っても良いコーチならば尚更の筈。
個人でも銅メダルだった坂本花織選手。その結果を聞かれ、「運です」と言い切った“厳しいママさん”という中野コーチ。そして、その原因を「でも彼女は、それだけの努力を人一倍してきたからです」とキッパリ。
そんな母親の様なコーチもいれば、片や、競争相手を必ず諦めさせるという意味でつけられたという彼女の“絶望”というニックネームが、まるで今回はブラックジョークの様に彼女自身に向けられ、フリーでのズタズタでボロボロの演技を終えたワリエワ選手。彼女を迎え、演技途中で戦意喪失した原因を詰問し叱責したロシアの“鉄の女”エテリ・トゥトベリーゼコーチ。
同じ日、同じ時間帯に起きて世界中に配信された、正に真逆の光景でした。
更に余談ながら、今回「真冬の大冒険」は聞かれませんでしたが、今大会でのベストフレーズは、スピードスケートを担当した日テレ上重アナウンサー(声から判断して、多分)の高木美帆選手1000m金メダルでの実況だったでしょうか。曰く、
「パシュートで流した銀色の涙が、この1000mのレースで金色の笑顔に変わりました!」
さすがは、自身PL学園と立教大でエースの元アスリート。お見事!