カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
今まで使っていた家具類を持って行けるスペースが無いことは前に書いた通りですが、一方私メは持って行くつもりだったのに家内と娘から「No!」というキツイ駄目出しをされてしまったのが、私メのオーディオ類でした。
家の新築時に買い替えたので、これも24年。しかも、スピーカーは社会人になった時に買った40年前の3ウェイと自作スピーカーの長岡式スワン。さらに、サブシステムとして使っていた、KEFのトールボーイの合計3組のスピーカー。
アンプ類はさすがに古いので、家電同様買い替えることにしましたが、スピーカーだけはどちらも気に入っている云わば“愛機”ですし、世の中が如何にデジタル化されようと、最後にはアナログ変換での音の出口であるスピーカーだけは、ユニットの特性だけではなく、剛性や内部の形状など箱の作りにも左右されますので、良い材料を使ってしっかりと仕上げてあれば、銘器と言われるバイオリンのように昔のスピーカーであっても良い音がする筈です。私メのLS-202もスワンもその意味で個人的には銘機だと思っています。従って、これからも壊れるまで聴き続けるつもりでいました。
しかし、どちらも底辺30㎝四方以上の大型スピーカーですし、ソファーや飾り棚などを置くリビングルームのスペースとの兼ね合いから、色々置き方を考えつつ何度測ってみても確かにスピーカー2台を置くスペースは生まれないのです。
「ウーン、どうしよう・・・?」
LS-202はKENWOODの前身であるTRIOが本格的にスピーカー制作に進出したLSシリーズのスピーカーで、25cmウーファーのフロア型の3 wayバスレフ・スピーカー。片やスワン(初代D-101)は、スピーカー自作派の“神様”故長岡鉄男氏が設計した点音源の傑作と云われるバックロードホーンスピーカーで、ユニットはフォステクス往年の銘機FE106∑を用いた僅か10cmのフルレンジ1発。面で鳴るか点で鳴っているかの違いと、スワンは点音源ですので、出来るだけ耳の高さに合わせた二等辺三角形の頂点で聴くのがベストなスピーカーです。
しかもスワンは1987年の赴任直後の慣れないシンガポールで、引越し荷物と一緒にカットされた板材キットを送って、家族がシンガポールに来るまでの3ヶ月間、休日や夜などやる事が無い時に、一人黙々と組立作業をし、サンドペーパーでしっかり磨いて、探し当てたDIYショップで購入したラッカーを三度塗りして仕上げた思い出のスピーカーです。その後、次女がヨチヨチ歩きの頃、音の出る所が不思議だったらしく、スプーンで叩いてコーンを凹ませてしまい、出張帰国の際に秋葉原で交換用にスピーカーユニットを再度購入し、併せて保護用にガードグリルも購入して取り付けてあります。
そこで、今回新居に持って行くスピーカーを絞り込むに辺り、メイン・スピーカーのLS-202とスワンD-101を改めて聴き比べてみました。
3WayのLSの方が高音は勿論なのですが、バックロードホーンとは言えフルレンジ1発(しかもたったの10cm!)のスワンよりも、特にダブルベースなどの低音も音の粒が立ってくっきりしています。
一方のスワンはバックロード特有のクセとして、どうしても「ブン」ではなく「ボン」という感じになりがちです。しかも低音は音道を通って増幅されて背面から出て来るので、何となく遅れた感じがします。逆にLSが面で響いてくるのに対し、スワンは点音源の名の通りクリアに左右のピンポイントから抜群のステレオ感で響いてくる感じでしょうか。
二つを比べてみると、謂わばシャープなLSとマイルドなスワンという違いはありますが、ステレオ的な「音」としてのまとまりはスワンの方があるような気もします。最後は聴く人の好みでしかないのですが、でも想像以上にLS-202はクセの無い素直でイイ音作りでした。
どう考えても二つは無理なので、どちらか一つに絞らざるを得ません。悩みに悩んだ結果、最終的にはバックロードのスワンに比べ音が透明でクセの無いLS-202を新居で使うことにしました。
そこで、スワンは家内に頼んでメルカリに出品することにしました。オーディオには全く興味のない家内の「こんなの、どうせ売れる訳無いわよ!」という冷たいお言葉に対し、ところが、あろうことか直ぐに買い手が現れたのです。家内も、「えっ、ウソッ!?」と絶句。
そこで、売れたのは大変有難いのですが、次なる問題はどうやって送るかでした。
初代のスワン(D-101)は、首の部分(スロート)が(耳の高さに合わせるために)可動式で外れる設計になっています(二代目となる長岡式「スーパースワン」は固定です)ので、スロートを外してバックロードの折り曲げ部分である箱と二つに分け、傷付かぬ様にエアクッショで包み、それぞれ大きさに見合う段ボール箱に入れて発送しました。
すると到着後、すぐに買い手の方からメールが届きました。
『(略)やっとセッティングが終わり、お気に入りのモーツァルトのピアノ協奏曲を聴いております。
高域が足りないとのお話でしたが、あまり気にならずむしろ抜群の音場感が素晴らしいです。今まで使っていた3ウェイスピーカーは何だったんだろうと感じました。やっと求めていた音に出会えたと感動いたしました。
梱包も大掛かりで大変だったと思います。その上ご主人から丁寧なお手紙まで頂き、本当に良いお取引できたと感謝しております。末永く大切にスワンを使っていきたいと思います。
この度は本当にありがとうございました。』
まるで愛する娘を嫁がせた親の様な気持ちで、泣く泣く手放したスワンでしたが、メールにある様に大切に使って頂ける新しいオーナー様に出会えて本当にホッとしました。文中に、モーツァルトのピアノコンチェルトを聴いているとありましたが、私も好きな20番、或いは21番の第2楽章でしょうか?
私メ同様に、スワンを聴くのに一番相応しいクラシック音楽好きなオーナー様のようで何よりです。しかも、「今まで使っていた3ウェイスピーカーは何だったんだろう?」という、スピーカー自作派にとってはこれ以上ない最高の誉め言葉まで頂くことが出来ました。
今も日本のどこかでモーツアルトを奏でているであろう、我が愛しのスワンに向かって、
「良かったなぁ!新しいご主人さまに末永く可愛がって貰うんだぞ!」