カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
秋のプロ野球ドラフト会議。毎年育成を含めれば優に100人を超える新人選手がプロ野球に指名される一方で、各球団支配下登録出来る人数が限られている以上(育成登録は別枠ですが)ほぼ同数が戦力外通告をされ退団を余儀無くされます。
勿論、中には選手寿命を全うし引退セレモニーをしてもらえる様な幸せな選手もいます。今年引退をした中で、感慨深いのは松坂大輔投手と亀井義行外野手でした。
古巣西武ライオンズで引退した松坂大輔。何と言っても印象深いのは、夏の甲子園の準々決勝でPL学園と延長17回の死闘を演じ、最後決勝では前人未到のノーヒットノーランで優勝するという、漫画の様な(でもウソ過ぎて描けない)圧倒的な力量で優勝。まさに“平成の怪物”に相応しい幕切れ。
そうした実績に目が行きますが、個人的に一番印象的だったのは、何と言っても最後の最後まで貫き通した“ワインドアップ”でした。
今や殆どがノーワインドアップで投げるピッチャーが多い中で、振りかぶって投げる姿の絵になること!素人目にも「カッコイイなぁ~」とホレボレしたものでした。しかも、途中ピタッと止まる、静止する一瞬の間がある・・・。大昔で云えば、カネやんこと大投手金田正一投手に代表される様な、振りかぶってから投げるまで連続したモーションが多かった様に思うのですが(イメージ的にはV9巨人のエース堀内が松坂に近いフォームだった様な気がします)、松坂投手はそうではなく、その間が実に美しいのです。他では、前阪神の能見投手もキレイなワインドアップのフォームだと思います。
今では、プロに限らず、甲子園でもラジオ放送の野球中継で、
「ピッチャー、振りかぶって・・・第一球を投げました!」
なんていうフレーズは、もう死語ですね、きっと・・・。
その松坂が最大の目玉だったのが1998年のドラフト会議。“松坂世代”という言葉が生まれた様に、同世代に有能な人材が集まっていた高校生に限らず、この年のドラフトでは巨人に大学球界の上原と二岡というその後の投打の主力、中日は同様に社会人野球から福留と岩瀬をそれぞれ1位・2位指名。阪神は“火の球球児”藤川が1位。広島では1位が東出、そして新井貴浩が6位で指名されています。また地元球団との密約が噂された沖水高の新垣がオリックスの1位指名を拒否して九州共立大へ進学。担当した当時のスカウト部長(阪急時代から数々の逸材を発掘した名スカウトでした)の自殺という悲劇を生みました。
一方、巨人でファンから“カメさん”として親しまれ、また監督からは晩年「困った時にはカメちゃんがいる」として頼りにされた亀井義行選手。
プロ野球選手の平均寿命は約9年、平均引退年齢は約28歳。1億円プレーヤーになれるのはおよそ10人に1人と云われる狭き門。優勝のために毎年の様に補強されてやって来る助っ人やFA選手などと争いながら、走攻守揃った外野の名手として野球人生を全うした亀井選手は、4番を打つスター選手ではありませんでしたが、味のある名バイプレーヤーでした。
その意味で、歴代の4番が強力であったからこそ、昔から勝負のカギとなって来た巨人の5番バッター。そんな歴史の中で、その時代時代に“巨人軍史上最強の5番打者”と呼ばれて来たのは、自分の記憶に残る範囲ですが、古くは、国松、末次、マムシこと柳田、そしてコンコルド淡口、怪我さえなければと今でも悔やまれる“天才”吉村・・・。彼等に続く系譜が亀井選手だったのではないでしょうか。
そんな亀井選手がWBCに選ばれたのが2009年の第2回大会。球界を代表するトップエリートの集まりである代表チームの中で、イチローの控えに甘え、打席には立てずに最後の守備固めを任せられるのは彼しかいないと選抜された亀井選手に、世間からは「どうして実績で劣る亀井が選ばれたのか!?」との誹謗中傷が殺到したと云います。決めたのはWBCを率いた原監督でも、推薦したのは亀井の守備力を高く評価し、代表チームで守備を担当した高代コーチだったとも。そのレーザービームの外野守備は、名手イチローからも絶賛されたとか。
そんな亀井選手の引退セレモニー。
「(吉川)尚輝、ポジティブに頑張れよ」
「(松原)聖弥、あんたは天才だから、もうちょっと頭使っていけよ」
「(坂本)勇人、あとは任せた!3000安打目指して頑張れ!」
皆に愛された亀井選手の、実に“らしさ”に溢れた挨拶でした。
因みに亀井選手は下位の4位指名でしたし、またその後先発やセットアッパーとしても一時活躍した東野が最後の6位で指名されてしますので、昔からクジ運の無い巨人ですが、スカウト陣の目は決して節穴だった訳ではありません(その意味で・・・どうして山下航汰を退団させたかなぁ?説得してでも絶対手放しちゃダメでしょ!そりゃ、怪我は本人の責任だけど・・・期待出来るのに。全権監督なら、FAなんかで口説かずに、ここでこそ出番でしょうが!)。