カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
過日、地場のスーパー「ツルヤ」のチラシに尾頭付きのメバルが載っていたので早速買って、前回に続いて中華風の蒸魚料理「清蒸鮮魚」(チンジョンシェンユイ)の二度目のチャレンジです。
ツルヤも全品ではありませんが、“北陸からの朝採れ鮮魚”を謳い文句にしていて、その昔「魚は食べる気がしない」と言っていた九州出身者の後輩が、ツルヤが10数年前に松本に進出してからは「ツルヤの魚介類なら食べられます」と褒めていたのを思い出します。
イトヨリダイとイシモチで前回(第1643話参照)初めて作った「清蒸鮮魚」は、魚自体は美味しかったのですが(奥さまからも高評価)、擦り込んだ塩が多過ぎたのかスープが塩辛くて、私メのお目当てだった“ぶっかけ飯”は失敗でした。
そこで、今回のメバルは擦り込む塩の量を少なめにしたのが逆効果・・・。奥さま曰く、
「魚に味が無い・・・」。
結果スープも薄味で、ぶっかけ飯もイマイチ・・・。
「ウーン、なかなか難しい・・・」
更にその後、たまたま一週間分の買い出しに「ツルヤ」に行ったら、鮮魚コーナーに立派な「アラ」の尾頭付きが並んでいました。
2年前の12月に伊豆高原に行った時に、寄せ鍋に入れる地魚を買いに行った地元の鮮魚店で「美味しい白身魚で、良い出汁が出るから」と薦めてくれたのがこの「アラ」で、確かに「アラ」の粗(あら)からの出汁は出色の旨さでした。
伊豆ではやや小ぶりのアラが一尾200円でしたが、ツルヤでは30㎝以上もあるかなり大き目の尾頭付きで900円。(運んで来た)山国でこの大きさなら、こんなモノでしょうか。
ご自分の冷凍車で伊豆の漁港から直接仕入れられているという伊豆高原の鮮魚店のご主人に薦められ、知らない私メが思わず聞いたのが、
「アラってクエのことですか?」
だったのですが(第1502話参照)、Wikipediaに拠れば、
『アラ(「𩺊」、魚偏に荒、学名 Niphon spinosus)は、スズキ目ハタ科の海水魚である。なお、アラと同じハタ科には同じく美味な高級魚とされるクエがおり、このクエの九州地方での地方名が「アラ」であり、姿もそっくりであるため混同されやすいが、別の魚である。最大で体長1メートルに達し、背は褐色(灰色)で腹は白色である。スズキに体形が似ているが、スズキより頭や眼が大きく、鱗が小さい。鰓蓋に2本のトゲがあり背びれが2つに分かれている点で、同じハタ科のクエと見分けることができる。』
従って、この「アラ」は、九州でいう「クエ」ではありませんが、同じスズキ目ハタ科の魚なので、シンガポールではガルーパと呼ばれるハタ科のクエを用いる「清蒸鮮魚」には持ってこい!「これぞ(ほぼ)ガルーパ!」・・・です(注)。
因みに、英語でGrouperと呼ばれるクエは、スズキ目ハタ科でマハタ属(種がクエ)に対し、アラは同じスズキ目ハタ科ですがアラ属(種がアラ)になり、確かに口が多きなクエよりもどちらかというと見た目スズキに良く似ています。
この「アラ」は『日本各地沿岸(北海道以南の太平洋沿岸および青森県以南の日本海)から東シナ海・スールー海にかけて分布』しているとはいえ、まさか山国信州で伊豆高原以来の「アラ」の尾頭付きに出会えるとは・・・。大袈裟ながら“感動モノ”でした。因みに今回のアラは新潟からです。
そこで、当初のメニュー予定には無かった「清蒸鮮魚」ですが、せっかくの「アラ」が手に入ったので、三度目の正直でまた作ってみることにしました。
今回も、参考にしたレシピに沿い、青ネギと生姜を添えて料理酒をまぶしてラップで二重で(酒や汁が零れ出ない様に)しっかり包みます。レンチンで途中ひっくり返して合計10分程度蒸します。途中、酒と滲み出た汁でブクブクと煮立って湯気がレンジ内に籠るくらいまでしっかりと蒸します。
その間に、針生姜、白髪ネギ、そして今回はレシピにはありませんが、彩りを良くするためにハーブガーデンから摘んできたチャービルを刻んでおきます。そして、鍋で中華スープの素、料理酒(本来は紹興酒)、醤油やオイスターソースで(好みで砂糖やみりん)で事前に味を付けておきます。
取り出す時に火傷しない様に気を付けて、レンジから出した魚を大皿に盛って、そこに取り出した魚から滲み出た汁を鍋に加えて沸騰させた汁を注いで、魚の上に生姜とネギを載せて、煙が立つ程に熱く熱した油(本来はピーナッツオイルとか)をジュッと音がする程に注ぎかけ、最後にチャービルを散らして完成です。
食べてみると、アラの身が美味しいし、そして何よりアラから出た脂と出汁が本当にイイ味!家内からも「美味しい!」と今回は合格点。
事前に味見をして塩梅を調整した上で、アラから出た出汁が加わって、スープが実に旨!ちゃんとシンガポール風に用意したタイ米に掛けての“ぶっかけ飯”も、三度目にして漸く満足の味。
「あぁ、旨いなぁ~!」
シンガポールのガルーパでの「清蒸鮮魚」を懐かしんで、トライすること3度。一度目は、イシモチとイトヨリダイ。二度目はメバル。そして今回の三度目がアラ。
同じハタ科の魚だったせいか、それともこれまでの反省を踏まえた味付けの調整故か、三度目の正直で満足の出来栄え!漸く、念願の懐かしき“我が人生最高のぶっかけ飯”、絶品の“ネコマンマ”(第1643話を参照ください)を堪能することが出来ました。ヤッタネ!!
余談ですが、三度目で慣れたから美味しく出来たのか、或いは(誰が作っても)素材自体が良いのか?・・・。初回はイシモチとトヨリダイ、2回目がメバルで3度目の今回がアラ。
白身の魚なら「清蒸鮮魚」には使えるそうですが、思うに、やはり今回はシンガポールのGrouperと同じハタ科の魚であるアラそのものだったのが良かったのではないかと思います。アラは白身も脂がのって美味しいし、何より出汁が良い。アラとクエの区別さえ知らなかった山国の人間に薦めてくれた、伊豆高原の鮮魚店のご主人の云われた通りだと思います。クエなど信州でお目に掛ることは余り無いでしょうが、もしまた運良くアラが入手出来たら、「清蒸鮮魚」も勿論ですが、良い出汁が出るのでシンプルに寄せ鍋にしても良いだろうと思います。
因みに、自分で調理する場合は、今回切り込みを入れようと思ったのですが、皮がかなり固いのと、先述の解説にある「鰓蓋の2本のトゲ」が針に様に鋭く尖っていて、今回指に刺さって出血しましたので注意が必要です。事前に知識も無く、今回ワタを取ってもらっただけですが、切り身の場合は勿論ですが、尾頭付きでも鰓(エラ)は購入時に出来ればワタと一緒にトゲも取ってもらった方が良いでしょう。
【注記】
シンガポールの国語はマレー語(例えば国歌 Majulah Singapura「進めシンガポール」はマレー語)ですが、ビジネス上は英語が公用語なので、中華料理店でも必ず英語でもメニューが表記されており、香港の様に「清蒸鮮魚」と呼ぶよりも、少なくとも我々日本人赴任者の間では単純に「ガルーパ」で通っていたと思います。従って、前回のブログ記事(第1643話)を書くにあたって、ネット検索をして初めて漢字表記と広東語での読み方を知った次第。
コメント追加