カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
会社員時代、最後の4年間上田の子会社への朝の通勤時間帯。7時15分から8時15分の一時間。
この時間帯の楽しみは、三才山峠の峠道の季節の移ろいを愛でながら、BGMで流れるNHK-FMのクラシックを聴くことでした。
そんな毎日の通勤で一番気に入っていたのは、月曜日朝の{きらくにクラシック}の再放送でした。MCはふかわりょうと有名チェリストの遠藤真理のお二人。本ブログでも何度も触れさせていただきました。
その中で、最初にご紹介した第645話から抜粋します。
『 そんな朝のFM放送でのお気に入りは、月曜日の朝のNHK‐FM『気楽にクラシック(略称きらクラ)』(本放送は日曜午後で、月曜朝はその再放送)。以前は『きままにクラシック(同きまクラ)』で、番組構成は大体同じ傾向ですが、確か4月に司会者が交代。以前の笑福亭笑瓶さんと声楽家(コロラトゥーラソプラノ)の幸田浩子さん(さすが、アナウンサー顔負けの美声でした。確か大晦日のジルベスターコンサートの司会もされていたような)のコンビから、タレントのふかわりょう、チェリストの遠藤真理(東京芸大在学中に2003年日本音楽コンクール第1位に輝き、芸大、その後のモーツァルテウム音楽院共に首席で卒業したという実力者)のご両人へ。
最初何気なく点けたところ、司会が誰か分からず、プロの音楽家と“育ちの良さそうなクラシック好きの知的な青年?”との会話がなかなか面白く、そのクラシックファンとしての知識の豊富さとセンスの良さに感心していたところ、「ふかわりょう」という名前を聞いて一瞬「・・・!?」。同一人物とは思えませんでしたが、考えてみればクイズ番組での回答ぶりを思うと、いつものイジラレ役とは違う、こうした一面を持っているのも不思議ではないのかもしれません。彼を起用した、局の担当の方の慧眼に敬服します。
生まれた頃から、父親の好きだったクラシック音楽が流れる家庭で育ち、ご自身ピアノも習っていたそうですが、若い頃の反抗期にはクラシック好きの父親への反発もあって、一時はジャズに夢中になり、そのアドリブの中にも主題・変奏というクラシックとの共通性(例えば提示・展開・再現のソナタ形式)を理解して、またクラシックを聞くようになったと言います。小品から大曲まで、結構聴き込んでいるのが分かります。
チェリストの遠藤さんもプロとしてのうん蓄のみならず、ふかわさんの自由奔放なコメントに誘発されてか、堅苦しいイメージのクラシック音楽家とは一味違ったお茶目な一面も垣間見え、なかなかの名コンビ。あっという間の小一時間です(放送そのものは約2時間)。』
そして、『きらクラ』を聴いている中で、MCの遠藤真理さんは勿論なのですが、番組にゲストで登場された演奏家で、ピアニストのイリーナ・メジューエワ、小菅優を初めて知って感動し、その後、小菅優さんは茅野(演奏会終了後サインも頂きました)と松本で、イリーナ・メジューエワさんは彼女の拠点である京都に旅行で行った際、偶然彼女のリサイタルコンサートの日と重なり、それぞれ生で聴くことが出来ました。また番組でリスナーの方が紹介された現代作曲家であるアルヴォ・ペルトを知り、中世のグレゴリオ聖歌にも似た彼の作品に興味を持つことが出来たりと、この番組を通じてクラシックの中でも今まで知らなかった新しい世界に触れることもありました。番組に招かれた日本や世界の第一線で活躍するゲストの中で、とりわけその宇宙人的ユニークさに唖然としたのが、東フィルのビオラ首席奏者でもある須田祥子さん。ビオラの魅力を広めるためにビオラだけの演奏集団SDA48を主催したり、ジルベスターコンサートでカウントダウン演奏後に毎年必ず干支の被り物をしたりするのはその一端か・・・。シャベリも面白かったので、「きらクラ」の後番組のMCにも期待していたのですが・・・。
定年退職後は、ワンコの散歩やウォーキングに行ったりするので、会社員時代の通勤時と同じ様に毎日ルーティーン的にFMを聴くことが無くなったのと、退職後も暫くは聞いていたのですが、正直『きらクラ』が常連さん中心のマニアックな内容になってしまった気がして、最近ここ一年程は聴いていませんでした。
そして、先日久し振りに聞こうと思ったら、8年間続いた『きらクラ』は昨年度一杯で終了し、今年度から『×(かける)クラシック』という新しい番組になっていました。少し聴いてみたのですが、何も無理矢理鉄オタとクラシックをくっ付けなくても良かろうに・・・と、MCのトークや内容が、正直「趣味じゃないなぁ、こりゃ」・・・でした。
『きらクラ』での遠藤真理さんのチェリストとも思えぬ様な自然な“シャベリ”。とりわけ、“芸人”でシャベリのプロであるふかわさんとの掛け合いも楽しく、通勤時間に聴いていた時は、彼女のあの「ガハハ・・・」という大らかで豪快な笑い声に本当に癒されてもいたので、番組終了を知った時は、正直残念!で、
「そうか、君はもういないのか・・・」
と(番組終了の)喪失感に暫し苛まれていました。東京に居れば、読響の定演にも行けるでしょうし、室内楽など彼女の出演する演奏会も結構あるのですが、田舎の松本ではいつでも会いに行けるという機会は残念ながらありません(これまでサイトウキネンにも参加されているので、他の地方都市よりも松本は彼女の演奏に触れられる可能性には恵まれているのかもしれませんが・・・)。番組では、2020年読響の指揮者に就任したマエストロ鈴木優人さん(お父上はBCJ率いる鈴木雅明氏。日本人でただ一人バッハメダルを授与されたバッハ演奏の第一人者)を高校時代からの友人とのことで「優人クン」と呼んだり、ザルツブルグだったか、ミュンヘンだったかに行くと、「いつも優チャンが車で迎えに来てくれるんだよね」と親友の小菅優と話していたのが、実に大らかな大物ぶりでナントモ微笑ましかったです。
余談ですが、因みに今回の「そうか、君はもういないのか・・・」は、お気づきの方もおられると思いますが、そう城山三郎氏の名エッセイ『そうか、もう君はいないのか』をそのままパクッテ使わせていただきました。
ただ個人的には、川本三郎さんの同じく名エッセイである『いまも、君を想う』の方が心に切なく染みています。