カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
終戦記念日の8月15日は、戦後の復興を願って昭和24年に始まって、今年第71回となる「諏訪湖祭湖上花火大会」の開催日です。
諏訪の社宅に居た頃に初めて湖岸の桝席で間近に見て以来、花火の華やかさもさることながら、山に囲まれた地形で周囲に反響してお腹にずしんと響く反響音に驚き感動して以来、諏訪湖の花火は遠く離れた場所(例えば反対側の西岸や塩嶺峠など)からではなく、やはり間近の湖岸で(見て、音を)聞かないとダメだと確信した次第。
今回、娘たちがお盆休みに帰省する際に出来れば行きたいとのことだったので、湖岸のビルの屋上席を事前に申し込んで何とか確保。当日、東京から来る娘たちと上諏訪駅で待ち合わせ、会場に向かいました。
今年は台風が二つ、お盆の日本列島を直撃。特に台風10号は、大会当日の15日に西日本へ上陸とはいえ、雨風の影響は東日本にも及び、風速10mの風はともかくとして直前まで雨予報。最悪の天候も予想されたため、娘たちには(チケットが無駄になってもしょうがないから)来るのを止めるように言ったのですが、花火は最悪途中で帰っても良いから帰省して来るとの返事。
然らばと、「悪天候も止む無し」と意を決し、傘では周囲の観客も迷惑するので、人数分のビニールカッパ(頭からすっぽり被れるポンチョタイプ)を買い揃え、濡れた場合を想定して何枚ものタオルもリュックに詰めて、いざ出陣!
予定通り、上諏訪駅で東京から来た娘たちと合流し、会場の諏訪湖畔に向かいました。
場所は、3階建てのビルの屋上の仮設の椅子席。正面やや右側ですが、前回のホテル駐車場の椅子席だと、並木で湖面が見えないのですが、実質4階からなので、湖面もはっきり見える特等席です。
夜7時開始で9時までの2時間。諏訪湖は、打ち上げ数4万発という全国の花火大会でも最大規模を誇ります。しかも、ここは周囲の山に反響する音の迫力と、波静かな湖ならではの水上スターマインと2㎞の大ナイアガラが売り。商店街の人たちが、「花火と御柱と御神渡りだけじゃ商売にならない」と嘆く様にいつもはさびれて閑古鳥が鳴く温泉街ですが、この日ばかりは公称50万人の人出で諏訪湖周辺はごった返します。
2年前だったか、無風で煙が流れなかったために溜まった煙に隠れて花火が殆ど見えず、TVの実況中継も途中で画面を切り替えざるを得ない程酷かった年に比べれば、台風の10m近い強風で煙が北にどんどん流されて行きます。多少打ち上げの軌道が強風で斜めに流れるなどはご愛敬(下諏訪側の湖岸で見ていると、流れてくる煙に花火が隠れてしまったかもしれませんが)。しかし、予報では開始前の夕刻にはざんざん降りだった筈の雨ですが、不思議なことに全く雨粒が落ちて来ません。台風の影響でのこの日の風の強さは、花火を見るのにはむしろ効果的。
ただ予報の雨を気にしてか、打ち上げ間隔も短く、どんどんと打ち上げて行きます。また強風のため進行のアナウンスが聞こえず、どのプログラムなのか良く分かりません。
しかし、何度も見ている終盤のハイライト、「宇宙戦艦ヤマト」やスターウォーズのテーマ曲での水上スターマインの“Kiss of Fire”はアナウンスが無くともその音楽で分かります。
降雨の前に終了させようと急ぎ過ぎか、両サイドからの水上スターマインのタイミングが多少ずれていたのが気にはなりましたが、それも今回ばかりはしょうがないかなぁ・・・。
最後の2㎞の大ナイアガラ。いつもは混雑を避けて大混雑前に駅に着くように、ナイアガラを見ずに(ある意味ただ長いだけなので)駅へ向かうのですが、今回はせっかくなので最後までナイアガラも鑑賞。
全てを見終えてから、人でごった返す中を駅へ向かいました。しかし、駅に着くまで全く雨は降って来ませんでした。
「おぉ、これは奇跡だぁ!」
一体誰の行為が良かったのか分かりませんが、事前の予報を考えると、本当に奇跡的な感じがしました。
この日のみ臨時に設けられた、下り線専用の西口改札から入場します。一斉に観客が駅に向かうため、ホームへの入場制限をして列車到着と共に、少しずつ駅に近づいていきます。
この日は上下線とも何本も臨時列車が増発されてはいますが、公称46万人だったというこの日の人出が一斉に駅へ向かうので、どの列車も通勤ラッシュ並みの混雑です。
我々は、前回もそうでしたが、ラッシュを避けるべく事前に特急あずさの指定券を購入してあり、最後まで見る前提で、終了から1時間後の夜10時過ぎのあずさに乗車。従って、ゆっくり歩いてでも発車時刻には十分に時間があり、結果ホーム入場後も20分程あずさ到着まで時間がありました。
すると、待っている間に、松本への下り線だけでしたが、ナント、黄色いラインの入った総武線とオレンジ色のラインの入った中央線快速車両が、10両のフル編成で、臨時列車として入線して来るではありませんか!
ちょうどホームにいた時には中央線の快速車両E233系が入線してきました。行先表示には「臨時 松本」の文字・・・。
「おぉ、中央線の快速だぁ!この日しか見られない車両だ!」
と、鉄オタならずとも思わず興奮。黄色い線の入った総武線車両も、多分現行のE231 系だったと思われます。おそらく松本車両センターなどJR長野支社管内の車両だけでは花火帰りの乗客をさばき切れないため、このためだけに動員されたのでしょう。
北長野駅にJR東日本長野総合車両センターがあり、首都圏を走る電車の多くがそこでの車両解体作業に向かうため、北陸新幹線開業以来、信越線が途中しなの鉄道としてJRではなくなった(碓氷峠が廃線になった)結果、引退する車両は最後の走行を中央線から大糸線を経由して長野に向かいます。例えば、数年前に引退した中央線の快速車両で車体全部がオレンジ色に塗られていたE201系もここを通って長野に向かいました。その際、松本駅では確かサヨナラセレモニーも行われたと記憶していますが、従って引退ではない現役車両がここを通るのは、こうしたイベントなどでの臨時列車としてしかあり得ません。
台風10号の列島直撃で、一時は覚悟した雨も全く降らず、むしろ台風の強風で、煙が飛ばされて却って良く見えた今年の諏訪湖の花火大会。そして、年に一度だけ信州の田舎を走る中央線の快速列車。
そんなあり得ない、或いは珍しい、小さな奇跡に遭遇し、胸踊らされた2019年の8月15日でした。