カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
馬籠峠の頂上まで2㎞ちょっとだった上りの道程から、残り5㎞程は妻籠宿まで緩やかな下りが続きます。
我々はお茶屋の中に入って休憩です。この場所は江戸時代に伐採禁止だった木曽五木の材木運搬を監視(白木改め)する番所だったのだそうで、囲炉裏のある江戸中期の茶屋の建物がそのまま現在も休憩所の茶屋として使われています。常駐している地元のボランティアの方が我々にもお茶を入れてくださいました。休憩所ではオーストラリアとドイツからという我々よりも年配のカップル二組が休憩をされていて、暫し談笑。皆さん、この“SANURAI TRAIL”を思い思いに楽しんでおられます。そしてチロチロ燃える囲炉裏を背景に、記念に我々の写真を撮ってくださいました。そこで、お返しに写真を撮ろうとすると、
「彼女は写真が大好きだが、私は写真が嫌いなんだ・・・けどネ!」
と茶目っ気たっぷりにジョークを言いながら、お二人仲良く笑顔でフレームに収まっての撮影。「志」と書かれた太い竹筒に心ばかりの気持ちを入れてから、我々はお先に出発です。
茶屋を過ぎて、如何にも江戸時代の街道を思わせる杉木立の続く緩やかな道を下っていきます。途中、木曽路のご神木の様な幹の周囲5.1mという樹齢300年以上のサワラの大木や、少し街道からは外れますが、江戸時代の行き交う旅人も一服したであろう男滝女滝があり、我々も足を止めて暫し昔を偲びながら休憩しました。
旧道に戻り、やがて家並みが現れると宿場の入り口である大妻籠。更に畦道のような旧道を歩いて、江戸時代にタイムスリップしたような今回のゴールになる妻籠宿へ到着。途中二度ほど休憩しながらゆっくり歩きましたが、ほぼ行程表通りの2時間40分でした。
ちょうどランチタイムでもあり、妻籠宿にはたくさんの観光客の人波が。さすがに食事処はどこも混んでいましたが、我々も昼食を取るべく、一応「生蕎麦」の看板が掛かっていた一軒のお蕎麦屋さんへ。家内が五平餅とざるそばのセット。私メはざる二枚の大ざる。昔ながらの黒い田舎蕎麦で、専門店ではないので些かつなぎが多かったのですが、まぁ観光地ではこんなモノ。その昔、乾麺が出てきて、余りの不味さに食べ残した馬籠の食堂に比べれば遥かにマシです。しかも双方のメニュー共税込み1000円丁度というのは、観光地とは思えない破格の安さ。蕎麦はともかく、五平餅はとても美味しかったそうです。先程の女子高生たちも五平餅を食べていました。因みに、馬籠宿の五平餅は大きな“団子三兄弟”風の形状でしたが、“御幣”の形をしていることが名前の由来と云われているので、楕円形が本来の五平餅の筈。こちらのお店も大半は外国人のお客さんでした。失礼ながら、英語も話せないような地元のおばさん方が対応されていましたが、写真とローマ字表記のメニューもあるとはいえ、慣れた応対になかなか大したモノだと感心しました。却って松本の街中のお店よりも、むしろ妻籠の住民の方々の方が国際化しているのかもしれません。
腹ごしらえも済み、馬籠への帰路を調べると、南木曽駅からのJR利用での中津川駅経由よりも、妻籠から馬籠へバスで直接戻った方が時間的にも楽。発車時刻までには30分程まだ時間があったので、全国で初めて国の重要建造物群保存地区に指定された妻籠宿を散策しました。途中、「ふれあい館」には地元の家々から集められた(旧暦での)端午の節句の五月人形が所狭しと飾られていて、外国人観光客の方々が物珍し気に写真を撮られていました。
個人的には、観光として見るなら“奈良井千軒”と云われ木曽路最大の宿場町であった奈良井宿が木曽路では一番満足度が高いと思いますが、随分俗化してしまった馬籠宿に比べ、鄙びた妻籠宿には奈良井宿とはまた違った良さがあります。まるで江戸時代の空気さえ漂っているかのような、そんな素朴な妻籠の町並みを見てからバス停のある町営駐車場に行き、地元のおんたけ交通のバスに乗車。片道一人600円で後払い。十数人の乗客の大半は欧米系の外国人のお客さん。それにしても皆さん良くご存知です。バスは県道を走り、旧中山道を二時間半掛けて歩いてきた8㎞ちょっとの峠越えの道程を僅か25分で終点の馬籠宿入り口へ到着。そこが車を停めた目の前。すぐに車に乗ってナナの待つ自宅へ向かいました。
今回行けなかった世界遺産の熊野古道の代わりとは言えませんが、それなりに楽しんだ、馬籠宿から妻籠宿への木曽路“SANURAI TRAIL”の旧中山道ウォークでした。
もし、もう少しトレッキング気分を木曽路で味わうには、高校時代にクラスの春の遠足でも歩いた薮原宿から鳥居峠を越えて奈良井宿までというのも良いかもしれません。中山道最大の難所と云われた鳥居峠は、太平洋に注ぐ木曽川と、犀川になって千曲川と合流して最後日本海に注ぐ奈良井川の分水嶺でもあり、峠の標高は1197m。来年にでも、また新緑の木曽路を歩いてみようと思います。
次は、山行のトレーニングを兼ねて、レンゲつつじの咲く初夏の美ヶ原登山でしょうか。