カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 観賞を終えた岡田美術館から、もう一ヶ所見ておきたかった元箱根の旧東海道の杉並木へ向かいました。
小沸園前から芦ノ湖方面行きのバスに乗って、正月の箱根駅伝のコースを走ります。箱根駅伝の山登りは、箱根湯本からだと、今は閉鎖された函嶺洞門、大平台のヘアピンカーブを過ぎ、富士屋ホテルの宮ノ下から小沸園前へ。ここからは建物も少なくなって山道が続き、足の湯で一旦下って登ると、そこがコース最高点の874m。今度は、そこから一気に下って元箱根からゴールの箱根町を目指します。

驚いたことに、ランニング愛好家にとっての憧れのコースなのでしょう、途中20人以上も思い思いにコースを走るランナーの人たちがいました。そしてこの日は日曜日でしたので、走る人たちだけではなくバスも満員ですし、芦ノ湖畔へ出る手前から観光客の車の渋滞でバスもノロノロ運転。そこで、終点まで乗らずに、元箱根で降りて歩いて行くことにしました。少し歩くと、国道に並行する杉並木が見えて来ました。
 元箱根から恩賜公園まで続く、500m、400本の旧東海道の杉並木。狭い道の両側に、真っ直ぐに天を衝くかのように“聳えて”いました。
滝廉太郎作曲の文部省唱歌「箱根八里」でも“♪昼猶闇(ひるなおくら)き杉の並木”と歌われていて、「東海道中膝栗毛」の弥次さん喜多さんが歩いた道が往時のままで残されています。曇り気味の天候のせいもありますが、作詞された明治期よりも更に樹齢を100年加え、正に“昼なお暗い”という雰囲気が増している気がしました。歩いていると、何だか往時にタイムスリップして行く様です。この杉並木は、街道を行き交う旅人に木陰を与えるために徳川幕府が植えたのだそうです。兎角、時代劇では悪く描かれがちの幕府ですが、実際はなかなか粋な計らいをしていたと知り感心。
途中、日本人観光客の方々には何組か会いましたが、外国人観光客の方々には殆ど会わず。日本史の知識の無いであろう彼等にとって、興味の無い単なる杉並木なのかもしれません(杉だけならヨセミテのセコイアの方が遥かに巨大でしょうから)。
杉並木を抜けると恩賜箱根公園があり、その先には箱根関所跡が。往時の面影が復元され資料館もありましたが、木曽谷にも中山道の福島関や贄川関が復元されていますので、信州人にとって江戸時代の関所は然程目新しくも無く、何より十分な見学時間が無さそうでしたので見学せず。
相変わらず国道は渋滞のノロノロ運転でしたので、(今度は国道の歩道を歩いて)元箱根に戻り、箱根湯本行きのバスに乗り宮ノ下で下車。
 行き先は現在改修工事中の富士屋ホテル。ホテルは休業中で中に入ることは出来ませんが、お目当ては併設されている富士屋ホテル直営のベーカリー&スイーツの「ピコット」。そこで、奥さまのために、“話のネタ”としてクラシック・カレーパンと朝食用食パンを購入。さすがに老舗ホテルの人気店。混んでいました。購入後、宮ノ下から登山電車で待ち合わせの強羅駅へ。日曜日でもあって、駅はケーブルカーから乗り替えのお客さんも含めて観光客でごった返しています。
 奥さまの参加されている第2期登山教室の、強羅駅での解散予定時刻が夕刻4時。
 「毎回多少余裕を見ているので、早ければ3時半頃には解散かも・・・?」
という事前の家内の話に、念のため15:15に強羅駅に到着しました。
考えて見れば、まだ昼食を取っていませんでしたので、強羅駅の周辺を探して少し歩いてみましたが、殆どの店がもう昼の営業を終了していて、開いていたのはカツ丼で有名という「田むら銀かつ亭」とお蕎麦屋さんくらい。トンカツ屋さんは3時過ぎても行列の順番待ちで、一体どのくらい時間が掛かるか分かりませんでしたし、一方わざわざ信州から箱根まで来て蕎麦(繋ぎに自然薯という山イモを使用した“自然薯蕎麦”が箱根の名物らしいのですが)というのもイマイチ・・・。結局、探す時間も無くなり、駅でそのまま家内を待つことに。
しかし、早いどころか待つこと1時間。予定の4時を過ぎ、20分ほど遅れて(登山口から駅まで歩いて来たのだとか)、疲れ切ったご様子のややお年を召された“山ガール”集団が現れました。家内曰く、休憩時間も少なく、ひたすら歩き続けたので、これまでで一番疲れたのだとか。
ハイハイ、皆さまお疲れさまでした!そこで、結局早めに箱根湯本に戻ることにしました。

 日曜日の夕刻。箱根湯本に向かう登山電車は、帰る観光客で満員です。幸い、増発された臨時列車に座って乗ることが出来ました。登山教室に参加されたお仲間も何人か同じ車両に乗り合わせ、皆さんお互い労いの挨拶をされていました。
乗車中に、箱根湯本への到着時刻を踏まえて、念のために事前に予約してあったロマンスカーの座席を確定。車内を見ていると、螺旋状の鉄橋を登って行くので有名なスイスのレーティッシュ登山鉄道と、箱根登山鉄道は35年も前から“姉妹鉄道“提携をしているのだとか。箱根登山鉄道も、登山列車らしくスイッチバックを何回か繰り返して(急勾配を下り)箱根湯本駅に到着。奥さまは、急ぎお土産の蒲鉾を買いにお店へ向かいます。私メはコインロッカーに預けてあったスーツケースを取り出してから家内と合流。事前の娘からの情報で、駅伝の中継地点でも有名な「鈴廣」ではなく、地元のお友達のお薦めという「籠清」で、お好みの蒲鉾をお土産用に購入出来た様です。
そして、私メは食べ損ねたお昼の代わりに車内で食べるために鯵の箱寿司を購入。家内も登山中のランチ休憩が十分取れなかった様で、富士屋ホテルのパンを食べたいとのこと。
 箱根湯本を夕刻5時半発のロマンスカーは、2018年導入という展望車両のある最新型のGSE。オレンジ色の車体が鮮やかです。もう秋の夕暮れで、すっかり日も落ちているので、沿線の景色は眺められません。
往路のVSEは設備が無かったのですが、最新車両のGSEはコンセントが各座席にあり、奥さまは早速スマホの充電です。席の前後もゆったりしている様に感じます。
箱根湯本も都心に帰られるお客さんでごった返していて、我々の乗車した「はこね26号」も既に満席。もし事前にネットで購入せず、駅到着後に窓口に行っていたら乗れませんでした。
 知り合いから頂戴した株主優待券のお陰で、思いがけずに来ることにした三泊四日の箱根旅行。そして、往復乗車券もあったので特急券を購入して初めて乗れたロマンスカー。しかも往路は展望車のVSEで、復路は最新型のGSEに乗車。
都心からのアクセスの良さと、近間の低山でもそれなりに楽しめた絶景の富士を望む登山に、自然と温泉と色々な美術館巡り。更に歴史の旧東海道や今や国民的イベントとなった駅伝の要素も加わって、観光地としての箱根の人気も何となく理解出来たような様な気がします。
箱根を色々周るには車で行った方が便利(ホテルに車を停めて置いて、食事以外はフリーパスで移動するにしても)だとは思いましたが、憧れのロマンスカーに乗れたことも合わせて、大いに楽しめた初めての箱根旅行でした。