カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 八方池周辺までのコースは、本来森林限界を超える2500m以上のでないと見ることが出来ないハイマツ帯が続くこともあって、北アルプスを間近に臨む山岳気分を手軽に味わうことが出来るコースです。これは、この辺りまでは蛇紋岩の地層が続くために低木のハイマツの方が繁殖し易いのだそうで、八方池を過ぎると花崗岩の地層に代わるため、ハイマツ帯の上にダケカンバの林が現れるという珍しい植生の逆転現象が見られます。

 2060mの八方池まではトレッキングですが、ここから先は登山。本格的な登山のための装備が必要との登山道脇の看板の注意書きに、思わず気を引き締めます。
第3ケルンを過ぎて、すぐにゴツゴツした岩場が始まります。暫く稜線の登山道を登って行くと、確かに逆転現象でダケカンバの樹林帯が現れました。中には丸抱えするほどの巨木もあって、木々の間から白馬三山が見え隠れする緑のトンネルが続きます。
樹林帯の途中で「扇雪渓」の看板が。知りませんでしたが、唐松岳にも雪渓があるようです。日本最大の白馬岳大雪渓には比べるべくもないのでしょうが、例え小さくとも登山初心者にとってはそれなりに感激する光景です。そこで、雪渓脇に(ロープが張られていて雪渓内には立ち入り禁止)荷物と腰を下ろし、水と行動食も採って少し休憩。ここまで八方池の第3ケルンからほぼ1時間です。
樹林帯上部が2350mとのことで、そこからガレ場を登って30分掛かって2430mの丸山ケルンへ到着。ここで絶景を楽しみながらの休憩です。ここまで登って来ても、目指す唐松岳山頂は急な稜線に遮られてまだ山頂を望むことは出来ませんが、丸山ケルンからは、唐松岳から続く「日本三大キレット」という上級者のみに許される不帰ノ嶮Ⅲ峰からⅠ峰と、更にそこから右に連なる白馬三山の絶景が目に前に拡がります。
左側の手前から2903mの白馬鑓ヶ岳、真ん中に2812mの杓子岳、そしてその奥に2932mの名峰白馬岳。一方、唐松岳の稜線の左側に目を転じると、五竜岳と鹿島槍ヶ岳が連なっています。暫し、ここまで登って来た者だけに許される眼前の絶景に感激していると、やはり中高年のグループの方からシャッターを頼まれ、そのお礼にと我々も絶景をバックにケルンと一緒の記念写真を撮っていただきました。それにしても雲一つない快晴で、県内のローカルTVのロケで4回八方池を訪れた番組パーソナリティーの方が「一度も白馬三山の絶景を拝めていない」と、先日の「山の日」に合わせた放送で嘆いていましたので、この日の絶景は我々夫婦への又と無いバースデイプレゼントでした。
 唐松岳山荘を目指していざ出発。見上げる稜線の登山道には、まるで蟻の行列の様に人並みが続いています。夏休みの週末とはいえ、さすが初心者にも人気の登山コースです。
この夏列島は猛暑日が続いていますが、この日は雲一つ無い快晴ということもあって、2000mを超える山岳路は紫外線のきつい直射日光で想像以上に暑く、汗ダラダラ。それにしても想像以上の発汗で、2ℓ近く持ってきた水をここまでで半分以上飲んでしまいました。
山荘へもう少しの地点。そこまで来た時に、急にクラクラと立ちくらみの様に眩暈がしたので、思わず座って休息することにしました。すれ違う登山者の方の中には、私メの顔色が悪かったらしく
 「大丈夫ですか?もうすぐ山荘ですよ!」
と励ましてくれる方もおられ、家内も一瞬どうしようかと大層不安(≒まさか救助のヘリを呼ばないといけない???と思ったとか)だったとのこと(実際のケースでは、すぐ近くに山小屋があるので、山小屋に救助要請すれば良いのでしょうが・・・)。
その間5分程だったでしょうか?・・・。塩飴を舐めて水分補給をすると、不思議な事にスーッと体が楽になりました。立ち上がっても今度は全くフラフラしません。汗をかき過ぎての貧血だったのか、或いは脱水症状だったのか?・・・。
 「ねぇ、本当に大丈夫なの?諦めて戻った方が良くない?」
と随分心配してくれましたが、本当にまるで嘘の様に体に生気が戻りました。立って少し体を動かしてみて、ちゃんと歩ける事を確認して眼前の岩場を登ることにしました。
本来は急登を避けて、崖に沿って狭い木道が掛けられた山荘への迂回路があるのですが、途中崩れているのか迂回路は通行止めになっていて、急登を行くしかありません。上り下り一方通行で、どちらかがその列が過ぎるまで待機していないといけません。順番を待って一歩一歩と登り切ると、ちょうど小高い丘の様になっていて、目の前には今まで見えなかった唐松岳が初めてその姿を現しました。眼下には赤い山荘が見えたので、少し下って標高2610mという唐松岳山荘到着です。山荘直前で体調不良で休憩したこともあり、八方池第3ケルンからは3時間。予定より30分余計に掛かって12時半の山荘到着でした。
 山荘は夏山シーズン最盛期。登山客で溢れていて、案内曰く、この日は超満員で、ナント四畳分のスペースに10~12名とのこと。山荘下の谷間のスペースには10張ほどのテントが張られていましたが、登山上級者である家内のピラティスの先生は専らテント利用だそうで、それも納得です。登山者の方曰く、イビキ防止は早く寝たモノ勝ちだそうですが、四畳に12名ではおそらく寝返りも打てないでしょう。なお、テント一張り1000円だそうです。因みに、山荘のトイレは有料で300円。家内は利用しましたが、私メは、持ってきた2ℓ近い水を飲んだにもかかわらず、全て汗で出てしまったのかトイレに行く必要はありませんでした。やはり、脱水症状だったのかもしれません。持参した水を登りで殆ど消費してしまったので、帰路の下りのために、山荘で経口保水液(300円)とミネラルウォーター(200円)のペットボトルを二人で併せて3本補充しました。
 “山小屋の定番”カレーなどの山荘の食事や持参したお弁当、或いはガスバーナーで沸かしたお湯でのカップラーメンやリゾットなどなど、皆さん思い思いに昼食を採られています。我々も山小屋の西側のベンチに座って、早速麓のコンビニで買って来たオニギリ等で昼食です。
目の前に拡がる北アルプスの山並みが何よりのご馳走。深く切れ込んだ谷間の向こうには、新田次郎「点ノ記」の剣岳を盟主とする立山連峰の山並みが聳えていました。松本側からは眺めることの出来ない、眼前に拡がる北アルプス立山連峰の絶景です。
 30分ほど昼食休憩をしてから、この日の目的である2696mの唐松岳の山頂を目指します。山荘から唐松岳へは20分とのこと。山荘から登山道を行くと、すぐに“高山植物の女王”コマクサの群落が両側に現れます。
想えば、中学三年春の学校登山で登った燕岳以来のコマクサです。北アルプス三大急登と云われる燕岳合戦小屋。その大変さからか(最近の若い先生は登山経験が無いことも手伝い)、中信地区(松本平)の中学の学校登山で定番だった燕岳から、もっと登り易い別の山に変更する学校も多いのだとか(因みに、私も娘たちも燕岳でした。諏訪出身の奥さまは八ヶ岳の主峰赤岳だそうです。45年以上経った今でも、白い花崗岩に覆われた優美な燕岳と可憐なコマクサを覚えています)。その燕岳に代わって選ばれている山が、乗鞍岳やこの唐松岳なのだとか。確かに日帰り可能な唐松岳ですので、リフトを乗り継げば1830mからの登山開始で、中房から登る燕岳よりも遥かに楽。その上、学校登山ならその日は山荘に宿泊でしょうし・・・。
登ること20分。2696mの唐松岳山頂に無事登頂。記念写真を撮り、下山は15分でした。山荘を経由し、午後1時45分に八方池山荘を目指して下山開始。今度は岩場の急登を下る処で、山荘のスタッフの方が、団体が登って来られるようで(相互通行の指示をされるために)監視をされていました。お聞きすると、八方池山荘からのこの日の最終リフトは16:40分とのこと。
 「今からなら、十分余裕で到着出来ますよ!」
との声に励まされ、下山します。途中すれ違ったのは、何とクラブツーリズムのツアー2団体。それぞれ、我々より年配の男女20~30人程度のグループで、山岳ガイドの方に先導されていましたが、かなりきつそうにお見受けしました。
ガレ場を下り、途中扇雪渓を望みながら樹林帯を越え、帰路も丸山ケルンで少し休息。朝に比べ白馬三山に少し雲が掛かっています。そこから暫く稜線を下って行くと、漸く眼下に八方池が小さく見えて来ました。
水分補給のために第3ケルンで休憩し、すぐに出発。帰路も登山道を下りました。ゴツゴツした岩場で下りは結構歩きづらい感じです。足を取られて家内がコケましたし、途中泣きの入った小学生くらいの男の子もいましたが、多少距離が長くとも今日の様な快晴なら滑らないので、帰路はむしろ木道を歩いた方が楽かもしれません。
午後3時20分に八方池山荘に無事到着。急がず普通に歩いて来たつもりでしたが、唐松岳山荘から八方池山荘まで2時間半で下って来たことになります。ここで奥さまが、疲れた体を甘味で癒すべくソフトクリームをご所望し、休憩の後リフトに搭乗しました。
 快晴の唐松岳登山。初登山としては、暑くて汗だくでの唐松岳日帰り登山は些か無謀だったのかもしれません。反省としては、もう少し早く(夏季のゴンドラ運航は朝6時半から)出発した方が良かったかもしれません。
でも、お陰さまでナントカ無事に下山することが出来ましたし、雄大な北アルプスを満喫した日帰りでの山旅でした。またいつか、今度は混んでいない時期に、ゆっくり山小屋一泊で唐松岳に再チャレンジしてみたいと思います。
家内からは、
 「もうちょっと鍛えなくちゃっネ!」
 「はぁ~、ご尤も・・・」
【注記】
樹林帯の写真は下山時。山荘の写真は唐松岳より撮影したものです。

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