カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
京都初日の夜。奥さまの意向は一切確認せず、私メだけの希望で場所を決めてありました。それは新京極にある「京極スタンド」です。昭和2年創業と云うレトロな食堂であり居酒屋でしょうか。元々は十銭食堂とか。店の存在そのものは知っていましたが、学生時代も何となく来たことはありませんでした。
まぁ、新京極自体がお土産購入目当ての修学旅行生の闊歩する(修学旅行生同士の小競り合いやケンカが当時は日常茶飯事だった様な)イメージですので、京都の学生が目的的にあまり来る様な場所では無かった気がします。
地下鉄を三条で降りて、河原町三条から新京極のアーケードに入って四条方面へゆっくりと歩いて向かいました。相変わらず、いや昔以上に混んでいる気がします。四条河原町に近い所に“スタンド”と書かれたお店がありました。両側に座る長机のカウンター席。ちょうど6時でしたが結構混んでいて、皆さん相席で和気あいあいと楽しんでおられます。客層も我々のような年配者だけではなく、若い女性だけグループや仕事帰りのサラリーマンと思しき方々などバラエティー豊かです。一人飲みのご老人もおられます。昔から変わっていないであろう、壁の品書きや、看板など昭和レトロな雰囲気一杯です。
オーダーは、京都なので湯豆腐、名物のコロッケ、鱧の天婦羅と揚げそば。はんなりでは無く関西風に元気の良いオバサンの店員さんから良く通る声で都度オーダーが通されます。
料理はどれも結構なボリュームですが、特に揚げそば(餡かけ固焼きそば)はどう見ても二人前の量でしょう。他にも名物のきずし(鯖寿司)やおでんも食べたかったのですが、生ビール2杯と月桂冠の樽酒も利いて既にお腹一杯。次回(今度来られるのが一体いつかは分かりませんが)に取っておくことにしました。きずしと言えば、先日の大原は若狭からの鯖街道にあります。松本の“年取り魚”である氷見鰤が、富山から飛騨を超えて松本まで来るのが鰤街道ならば、若狭で一塩振った鯖がちょうど美味しくなったのが京都とか。鯖街道と呼ばれ、京都の軟水故に押し寿司である鯖寿司が名物になった所以です。
オーダーの都度チェックして客の元に置いて行く独特の伝票。確か(戦前?)京大の数学科の教授センセが考案され、大変便利なので今でもそのまま使っておられると聞きました。外の看板や暖簾は「スタンド」でしたが、伝票は「ドンタス」と右側からの表記。どういう原理か分かりませんが、青字の数字の伝票に注文の度にこれまたレトロな赤鉛筆でマーキングがされていきます。これもまた京極スタンドの“名物”です。
お店は満席で、こちらのお腹も一杯になったので早めに席を空けることにしました。年代物の古びたレジスターも何とも良い雰囲気です。決して“はんなり”という様な京都らしい店では無いのかもしれませんが、古き良き昭和の雰囲気と、学生を“学生さん”と呼んで可愛がってくれた京都らしい優しさが残っているような、きっとこんな店だったら店員を怒鳴りつけて土下座を強要するようなクレーマーの様な客も生まれないだろう、そんな感じのするどこか暖かで居心地の良い“大衆食堂”でした。