カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 夏野菜の代表である茄子(ナス)。
長ナスや水ナスなど、色々な種類がありますが、我が家を含め、昔から松本地方で良く栽培されているナスは長卵形のナス。野菜苗で売られている最近のナスで代表的なのは、「千両」というタキイ種苗の種類でしょうか。
漬け物に良し、油との相性も良いので揚げたり焼いたり煮たりと、色々な料理に使われています。そうした中で、信州では「ナスのお鉄火」と呼ばれる家庭料理、鉄火味噌のナス炒めがポピュラーです。そして、お焼きとしても、炒めた野沢菜(これは本来漬かり過ぎて酸っぱくなった野沢菜漬けを使うので、時期としては春先の具材)や切干大根などと並んで代表的な具材(「ナス味噌」との表記もあり)でしょう。

 ところが最近まで知らなかったのですが、長野などの北信地方と中信地方とでは、同じお焼きの「ナスの鉄火味噌(ナス味噌)」でも、ナスの種類が違うのです。最初は、そのお焼きのナス味噌が十分に炒めていない(炒め方が足りない)ものとばかり思っていたのですが、そうではなくて使われているナスそのものの種類が違うのだとか。松本などの中信地方では専ら冒頭でご紹介した「千両」に代表される様な長卵形の“普通”のナスのお鉄火ですが、長野などの北信では炒めモノには昔から専ら「丸ナス」が使われるのだとか。そしてこの丸ナスの最大の特徴は所謂“煮崩れ”しないこと。従って、お焼きの具の鉄火ナスも「炒め方が足りない」のではなく、「炒めても形が変わらない」結果だったのでした。
 奥さまのお友達から毎年頂くたくさんの野菜。その中の一つがその「丸ナス」です。これは、昔ご主人と長野県内をアチコチ転勤された際に、北信地域への赴任時に、やはり松本ご出身で知らなかった「丸ナス」の存在を知り、松本の自宅に戻られてからも、鉄火味噌など炒めたり揚げたりする料理での「丸ナス」の美味しさが忘れられず、農業をされている弟さんに頼んで。わざわざ毎年栽培してもらっているのだとか。その丸ナスを我が家でもお裾分けして頂いているのです。お鉄火に限らず、天婦羅でもそうですが、揚げたり焼いたりしても身が崩れず歯応えがある食感が素晴らしい。でも決して固いのでもありません。一方、漬け物などには「千両」などの“普通のナス”の方が向いていて、この丸ナスは向いていないと思います。
 松本市には一本ねぎがありますが、上田に通勤して初めて知った、坂城町のネズミ大根や上田市のみどり大根。そして、北信には小布施丸茄子に代表されるのでしょうか、丸ナス。そう云えば、信州を代表する野沢菜も江戸時代に野沢温泉の住職が京都から持ち帰った天王寺蕪が冷涼な信州では蕪が大きくならずに葉だけが伸びたモノとの言い伝えがありますし、狭い信州だけでも、各地に伝わる伝統野菜があるのは実に興味深いですね。

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