カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 「おうおう、こちとら江戸っ子でぇ。・・・気が短けぇんだい!」
いくら、古典落語に登場する八つぁん、熊さんがせっかちな江戸っ子だとはいえ、ちょいと早過ぎませんかねぇ、尾瀬センセ!と言いたくなった「どうらく息子」が最終回!?
・・・ビッグコミック・オリジナルに2010年から連載されていた、落語家修行の噺家を描いた尾瀬あきら作「どうらく息子」が3月20日発売号を以って終了してしまいました。そして、5月末に最終第18巻を以ってビッグコミックスも完了。雑誌だと“かさ張る”ので、コミックスを生まれて初めて全巻購入しました。

 最終回では、6年前に銅楽師匠の独演会で「文七元結」を聞いて弟子入りを志願した銅ら治が、袖に居る師匠に聞いてもらいながら、その「文七元結」を自身の独演会で演じての最終回。「あや音と所帯持つって言うから言うけどサ、ホントは銅ら治のことが好きだったんだよ」と言いながら出囃子の太鼓を叩き、大ネタに挑む弟弟子を「行っといで!」と励ますように送り出す姐弟子の銅ら美。
 銅楽の「まだまだだな。」に、「はい。」と互いに相槌を打ちながら袖で聞く銅ら美とあや音。「5年したら、また聞いてやるか。」と銅ら治に花向けの言葉を贈る師匠の銅楽。
 最後はお久と文七が結ばれ、「元結屋」を開き大層繁盛したというお馴染の下げの中で、「このお久と文七がやがて夫婦となり、子をもうけ・・・」と授かった新しい命に触れたことに気付き、そっと頬を赤らめる袖のあや音。

 大団円とはいえ、銅ら治が真打に昇進するまで何としても続けて欲しかった!・・・という思いが拭えません。
かくなる上は、5年後に銅ら治が再演する「文七元結」を師匠銅楽が袖で聞く場面から再開して欲しい!

 社会人になって以来40年近く、毎月2回、ずっと購入し続けたビッグコミック・オリジナル。栄枯盛衰、終わりは必ずあるモノと想いつつも、これ程喪失感のある連載終了は初めてです。
お陰で、全く知らなかった古典落語の世界もゼロから勉強し、どっぷりとその深さにハマることが出来ました。そして、その影響で、市の図書館から志ん生、円生、小さんといった嘗ての名人たちのCDを借りて、作中で取り上げられた古典落語を本寸法で聞き、更に時々は松本で開催される寄席で生落語にも触れ、落語の世界の奥深さや面白さを知り、自分の世界が少し拡がった様な気がしました(特に「どうらく息子」で描かれている修行の世界を通じて、柳亭小痴楽さんなどイキの良い二ツ目さんたちに今惹かれています)。
 7年間の連載で、「どうらく息子」で取り上げられた古典落語は、下げ(落ち)だけが取り上げられていた噺(「宿屋の仇討ち」)も含め、ざっと数えて70話。
「寿限無」や「やかん」、「道灌」といった前座噺に始まり、「親子酒」、「狸賽」、「権助魚」、「初天神」といった滑稽話や、「子別れ」、「妾馬」といった人情噺や「天狗裁き」、「鰍沢」といった大根多まで。中でも良かったのは、銅楽師匠の演じた「文七元結」、夢六師匠の「芝浜」、銅ら治の「紺屋高尾」、あや音の「たちきり」・・・どれもみんな良かったなぁ。
 尾瀬あきら氏の、「夏子の酒」以上の傑作だったと確信しています。最初から最後の第168話まで落語監修を続けた柳家三三師匠にも感謝です。
あぁ、淋し・・・(グスン)。