カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 前話の“余里の一里花桃”を訪ねる前に、途中で昼食を取って行くことにしました。久し振りにナナも一緒のドライブだったので、可能なのは“ワンコ連れOK”の店しかありません。
長野県は“観光立県”を目指している筈ですが、そうした場所は犬連れの別荘族が多い軽井沢以外では殆ど無いに等しい程、実際は犬同伴可能なレストランが非常に少ないことに驚きます。
調べてみると、“信州の鎌倉”塩田平でも、テラス席OKという店が2軒、店内もOKという店は別所に僅か1軒しかありませんでした。幸い、その内の一件のカフェが武石地区だったので、そちらでランチを食べることにして、三才山峠を下った辺りで事前に連絡をしておきました。

 その店は、上武石地区にある「Café 和」(かのう)。
会社勤めを辞めて戻られた地元出身のご主人が、築百数十年の空き家を借りて自ら改装して始めた「古民家カフェ」だそうです。使う野菜や米もご自身で栽培される、謂わば自給自足。
武石口の交差点から美ヶ原高原へ向かう県道62号線に入り、途中行き過ぎたことが分かった(地図上「明治乳業武石工場」まで来たら行き過ぎ)ので、戻ってすぐに発見。道沿いから少し入ったところにある、赤いトタン屋根に覆われた古びた茅葺の家。道の反対側に駐車場があり、先客の若いカップルが一組。我々は犬連れなので、庭先にテラス席を設けて日除けのパラソルを挿してくれてありました。
ランチメニューは、この日はパスタプレートの1種類のみ(通常はカレープレートとの二種類で、どちらも1000円。ドリンクセットで1300円)。
自家製の有機栽培の野菜やハーブを使っているそうで、この日のパスタのトマトソースも、ご自分で育てたトマトとイタリアントマト(多分ホールトマト缶)をブレンドした自家製ソースとか。くどさがなく、酸味が効いてサッパリとした素朴な味わい。写真では分り辛いですが、山型に盛られた細麺のパスタ(所謂スパゲッティ)も見た目以上のボリュームです。角切り野菜がたっぷり入ったポトフ風のカップスープも、優しい味付けでした。
私がセットで頼んだストレートコーヒー(単品だと450円)はグァテマラ。抽出する水は、ご主人が山の湧水「福寿水」を汲んで来たのだとか。
 「自分が酸味のあるコーヒーは苦手なので・・・」
ご夫婦でやってらっしゃるのか、専らサーブはご主人。話好きの様で、余里への道順や武石地区のことなど、自ら色々と教えてくださいました。
 道を挟んで目の前には、柔らかな新緑の中に所々山桜が白く点描された里山が拡がっています。入口に掛けられた昔懐かしい掛け時計が、低くボーンと午後1時を報せてくれました。
 「何だか、ノンビリ出来るね。」
とは奥さま。傍らでは、ナナもノンビリと日向ぼっこです。
日常の喧騒を離れ、素朴な里山を亘って行く春風に乗って、時間もノンビリと流れて行くようでした。
個人的には(タイムスリップして)子供の頃見慣れた風景(例えば、“厠”が独立して庭先にもあるのは、農作業から休憩に戻って、地下足袋を脱がずに使えるための生活の知恵)ですが、“都会人”の皆さんなら、もっとノンビリまったりと過ごせるかもしれません。