カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 上田市武石地区(旧武石村)の余里(より)の里。
地元の「花咲じいさんクラブ」の方々が丹精込めて長年育ててこられたという約2000本の花桃(ハナモモ)が、“一里花桃”の名の通り、4キロメートルに亘って咲き誇るそうです。地元では“世界中で一番きれいな2週間”と云われているのだとか。
松本から上田へ毎日通勤していると、ハナモモに関しては上田エリアの方が庭木などで植えられているのを良く目にします。他に県内では、阿智村を中心とする伊那谷(木曽と結ぶ国道256号線は、別名“はなもも街道”とのこと)も有名です。
 因みに、桃と花桃。Wikipediaによると、どちらもバラ科ですが、桃はモモ属に対し花桃はサクラ属とか。中国原産で、多くは江戸時代に観賞用として品種改良されたものだそうです。
花の色もピンク一色ではなく、白から赤の間で、ピンクにも色々な濃さがあります。中には一本から三色咲かせている木もあり、更に樹形も垂れがあったりして実に華やかです。ある意味「豪華絢爛」で、山肌にひっそりと佇むように咲く山桜とは対照的です(例えて云えば、桃山文化と鎌倉文化の違いの様な・・・)。

 4月下旬。久し振りにナナを連れてのドライブがてら、一里のハナモモの咲く道をナナも一緒に歩いてみることにしました。松本からは、国道254号線で三才山峠を越えて上田市内の丸子を経由して武石まで1時間ちょっとのドライブです。
途中で先に昼食を取ってから、余里地区へ向かいました。美ヶ原高原を挟んで松本とは反対側に位置する武石地区でも、かなり奥まった山間にある余里地区。4㎞程の道沿いに3ヶ所ほど空き地を利用した無料駐車場が設けられていました。我々は一番下の花桃の里入口の「一万歩駐車場」に車を停め、歩いて行くことにしました。結構駐車していて県外車もチラホラ。
 この駐車場のすぐ脇の余里川沿いに600メートルに亘ってハナモモが植えられていて(Mapによると「宮前コース」とのこと)、今年は開花が早そうで、既に満開を過ぎようとしていました。そこから車道に戻り、川沿いに緩い坂を上りながら終点を目指します。途中、神社や茅葺(但しトタン屋根)の民家、また山の斜面等、所々にハナモモが植えられています。但し、並木風に連続していたのは最初の「宮前コース」のみ。集落一番奥の「本家桃」の手前に地元の方々の運営する売店等があり、そこまで途中「あと三千歩、あと二千歩」という手作りの案内標識が用意されています。途中、道沿いの田畑では地元の方々が農作業をされていて、観光地というよりも、向井潤吉画伯の描く様な“農村の日常風景”の中に、この時期ハナモモが咲いているという雰囲気。
 因みに、この地区のハナモモの親木とも云える「本家桃」は、5年前の強風で折れてしまったのだとか。今は亡き“本家”のお婆ちゃんが、熟して落ちたハナモモの実から育てた苗木をご近所の家々に配ったのが“花桃の里”の始まりとか。その後、地区の皆さんが「花咲じいさんクラブ」と名付けて集まり、皆で苗木を育て、空き地や川沿いの土手などに少しずつハナモモを植えてきたのが、この「余里の一里花桃」なのだそうです。
県内ではもう一ヶ所有名な伊那谷阿智のハナモモは、実に5000本だそうですが、こちらも、何も無い辺鄙な場所に嫁いで来られたお嫁さんを慰めるために植えられたのが元々の始まりとか(田舎はどこも優しいですね)。
「花咲じいさんクラブ」では今でも苗木を育てているそうですので、余里も頑張って、いつの日か入口から最上部の本家桃までハナモモ並木を繋げて欲しモノです。
 洒落たレストランやカフェは勿論、売店も何も無い山間の集落。途中、朽ち果てつつある茅葺の空き家を何軒も見掛けました。恐らく、ハナモモが無ければ誰も見向きもしないであろう、辺鄙で過疎の山村の見事な“村起こし”です。
コースの終点には、地元の方々が、花桃の苗や山菜、飲み物などを販売している売店(テント)があり、家内が「くるみ餅」を買ったら、「一番下から歩いて来られたご苦労さん代」で50円値引きしてくれたのだとか。一方私メは、ノンアルコールビールを買ったら、店番のお婆さんたちはお客さんへの山菜の調理法の説明で忙しく、お爺さんが確認しても見向きもしてくれないため、
 「幾らか分らねえで、イイわ、タダで持って行きましょ!」
 「イヤ、そりゃマズイっす。ケースの外に150円って貼ってありますから」
と言って200円を渡すと、お爺さんは、
 「つり銭ねぇで、100円でイイわ」
と、100円玉一つしか受け取ってくれませんでした。
二人で、近くの休憩用の椅子に座って、お餅と飲み物で暫し休憩です。
 「いやぁ、イイ加減だけど、何だか素朴でイイなぁ・・・。」
儲け云々というより、余里の集落にとっては一年で二週間だけの大切なおもてなし行事であり、地区のお祭りみたいなものなのでしょうね。
 個人的には、確かにキレイではありますが、この素朴な山里に華やか過ぎるハナモモが似合うかどうか、些か疑問を感じました。むしろ、もっと侘び寂びを感じるような、山桜や菜の花やコブシの方が似合うのではないか・・・とも思いました。
でも、都会や“町場”の人間には分らない、辺鄙だからこそ少しは山間の集落を華やかに飾りたい、そんな気持ちがあるのかもしれません。
そして、例え誇大広告にせよ、“世界で一番きれいな二週間”だと地元の方々が胸を張って、山間の集落を訪れてくれた人たちを素朴ながらも暖かくもてなす時間が、“一年の中でのたった二週間”位あってもイイじゃないか・・・そんな気持ちを抱いて、何だかホンワカ、ホッコリした気分で余里の山里を後にしました。

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