カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
上田市武石地区(旧武石村)の余里(より)の里。
地元の「花咲じいさんクラブ」の方々が丹精込めて長年育ててこられたという約2000本の花桃(ハナモモ)が、“一里花桃”の名の通り、4キロメートルに亘って咲き誇るそうです。地元では“世界中で一番きれいな2週間”と云われているのだとか。
松本から上田へ毎日通勤していると、ハナモモに関しては上田エリアの方が庭木などで植えられているのを良く目にします。他に県内では、阿智村を中心とする伊那谷(木曽と結ぶ国道256号線は、別名“はなもも街道”とのこと)も有名です。
因みに、桃と花桃。Wikipediaによると、どちらもバラ科ですが、桃はモモ属に対し花桃はサクラ属とか。中国原産で、多くは江戸時代に観賞用として品種改良されたものだそうです。
花の色もピンク一色ではなく、白から赤の間で、ピンクにも色々な濃さがあります。中には一本から三色咲かせている木もあり、更に樹形も垂れがあったりして実に華やかです。ある意味「豪華絢爛」で、山肌にひっそりと佇むように咲く山桜とは対照的です(例えて云えば、桃山文化と鎌倉文化の違いの様な・・・)。
途中で先に昼食を取ってから、余里地区へ向かいました。美ヶ原高原を挟んで松本とは反対側に位置する武石地区でも、かなり奥まった山間にある余里地区。4㎞程の道沿いに3ヶ所ほど空き地を利用した無料駐車場が設けられていました。我々は一番下の花桃の里入口の「一万歩駐車場」に車を停め、歩いて行くことにしました。結構駐車していて県外車もチラホラ。
県内ではもう一ヶ所有名な伊那谷阿智のハナモモは、実に5000本だそうですが、こちらも、何も無い辺鄙な場所に嫁いで来られたお嫁さんを慰めるために植えられたのが元々の始まりとか(田舎はどこも優しいですね)。
「花咲じいさんクラブ」では今でも苗木を育てているそうですので、余里も頑張って、いつの日か入口から最上部の本家桃までハナモモ並木を繋げて欲しモノです。
コースの終点には、地元の方々が、花桃の苗や山菜、飲み物などを販売している売店(テント)があり、家内が「くるみ餅」を買ったら、「一番下から歩いて来られたご苦労さん代」で50円値引きしてくれたのだとか。一方私メは、ノンアルコールビールを買ったら、店番のお婆さんたちはお客さんへの山菜の調理法の説明で忙しく、お爺さんが確認しても見向きもしてくれないため、
「幾らか分らねえで、イイわ、タダで持って行きましょ!」
「イヤ、そりゃマズイっす。ケースの外に150円って貼ってありますから」
と言って200円を渡すと、お爺さんは、
「つり銭ねぇで、100円でイイわ」
と、100円玉一つしか受け取ってくれませんでした。
二人で、近くの休憩用の椅子に座って、お餅と飲み物で暫し休憩です。
「いやぁ、イイ加減だけど、何だか素朴でイイなぁ・・・。」
儲け云々というより、余里の集落にとっては一年で二週間だけの大切なおもてなし行事であり、地区のお祭りみたいなものなのでしょうね。
でも、都会や“町場”の人間には分らない、辺鄙だからこそ少しは山間の集落を華やかに飾りたい、そんな気持ちがあるのかもしれません。
そして、例え誇大広告にせよ、“世界で一番きれいな二週間”だと地元の方々が胸を張って、山間の集落を訪れてくれた人たちを素朴ながらも暖かくもてなす時間が、“一年の中でのたった二週間”位あってもイイじゃないか・・・そんな気持ちを抱いて、何だかホンワカ、ホッコリした気分で余里の山里を後にしました。