カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 リンゴ園の隅にある、父が植えた平種の渋柿2本。
毎年たくさんの実を付けるのですが、干し柿を母が作らなくなり、この5年くらいはそのまま剪定もせずにほったらかし。冬になると鳥のエサになっていました。
先日、ご近所の方から、もし採らないのなら干し柿用に欲しいと云われ、
「どうぞ、好きなだけ採ってください」
すると、それを聞いた奥さまが、
「じゃあ、私も今年はお母さん用に干し柿を作ろうかな・・・」との仰せ。
・・・んだば、と殆どの実が熟し始めて柔らかくなっていて些か収穫時期が遅きに失した感はありましたが、週末に出来るだけ固そうな柿を多めに収穫しました(柔らかくなった実は熟し柿にして、お正月用に使うとか)。
ヘタの部分の枝を剪定鋏でTの字に切り、皮を剥いた柿の実を紐に10個ほどずつ結わえて、風通しの良い軒先などに吊るします。
表面が乾いたら、数日毎に何度か軽く揉んで柔らかくします(そうしないとカチカチに固くなってしまいます)。
やがて、糖分が結晶化して、表面が白く粉(こ)が噴いたようになったら完成です(以上、“門前の小僧”的解説。良く祖母が夜なべ仕事で、炬燵に入ってたくさんの柿の実の皮を剥いていましたっけ)。

 ベランダの物干し竿に吊るされた干し柿。
昔ほどの数ではありませんが、「柿すだれ(簾)」の装い。昔は、どの農家でも一杯の干し柿が吊るされていて、正しく簾のような秋の風物詩でした。
それもその筈で、干し柿の生産量一位は長野県とか。特に、伊那谷の「市田柿」は全国的にも有名です。海無し県で冬の寒さ厳しい信州ですので、イナゴやハチノコが動物性タンパクの補給源だったのと同様に、干し柿も冬の保存食だったのでしょう。渋味(タンニン)が“抜けた”(注)干し柿の甘さは、砂糖の1.5倍とか(昔から、干し柿を餡に使う和菓子もあります)。
子供としては、チョコやキャラメルに比べて、然程美味しいおやつではありませんでしたが、他にお菓子が無かったのか、田舎では昔(昭和30年代)は結構食べていた記憶があります(そう言えば、「あられ」や「干し芋」も祖母のお手製、自家製だったなぁ・・・)
農作業が出来ない冬の間は、炬燵に当って(入って)、お茶受けには野沢菜漬けと干し柿・・・少なくとも四半世紀くらい前までは、信州の農家の定番でした。

 時々見ているNHK-BS「晴れときどきファーム」では、干し柿作りで、カビ防止対策として剥いた後に熱湯消毒をしていましたが、寒い信州では祖母もしたことがありませんでした。
しかし、このところ異常なほど暖かな日が続いています。今年は暖冬予想とか。例年なら雪が降ってもおかしくないのですが、また雨。カビが生えないと良いのですが、果たして出来は如何に?・・・。
【注記】
実際は渋が「抜けた」のではなく、生で食べた時に感じるタンニンの渋味が、干すことで不溶性に変わって、口に入れても溶けないために舌で感じなくなる。その上で、渋柿にも元々含まれていた糖分が、干すことで水分が減って糖度が増すのだとか。