カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
先日の日経新聞に載っていた通販広告(日経社通販歳時記)を見て驚きました。
それは、“ずっと使える自分好みのサインを手に入れる”と題して「Myサイン作成キット」なるものの広告でした。値段は19,440円(税抜18000円)とのこと。例示として、「木村太郎」という名前のサインが6種類掲載されていました。専門の(サイン)デザイナーが作成した、英字、漢字の2種類で、それぞれ実用・速写・個性型の3種類(計6種類)をベースに、その中から更に購入者の希望を反映しながら校正・修正を加え完成させていくのだとか。完成後は、「サイン練習キット」が送られて来て、練習して自分のモノにしていく由。ナルホド・・・。
「こんなモノがあるんだ!。しかも通販で・・・。」と、暫し絶句。
でも、30年近く前なら自分も購入していたかもしれません。
シンガポールの販売子会社にアドミ担当で赴任して、前任者との引継ぎが終わったその日からのサイン業務。域内のディストリビューターや島内のディーラーへのインボイスの山・・・。その前に、銀行取引等でサインを各取引銀行などに会社のサイン権者として登録。
今では、日本でもカード類は自署のサインを求められますが、30年前の当時は、赴任するまでサインなどしたこともありませんでしたので、欧米系ならともかく、印鑑文化で育った我々日本人はサインが苦手。
現地でサインが必要なことは、赴任前研修等で聞いてはいたので、一応アルファベットでのサインを自分なりに工夫して考えてはありました。
以降、毎日数百枚というインボイスや、社内外への文書、銀行小切手(支払いだけではなく、会社入金時の裏書も)など、それこそ毎日千回以上のサインが必要となりました。
秘書や部下のスタッフは、「自署は大変なので、自署が不要の書類用にサインを彫ったスタンプを作った方が良い」と薦めてくれましたが、自分で書いた方が早く慣れるので、最初は自署でサインをしていました(結局6年間の赴任中、全て自署で通しました)。
そんなある日、秘書から「このサインでは落とせないので、銀行窓口まで出頭するように銀行から連絡があった」とのこと。
訝しく思いながら、銀行に行ってその旨を担当者に伝えると、
「この(小切手の裏書の)サインがあなたの自署かどうか疑わしい・・・」
「イヤ、そんな筈は無い。ちゃんと自分が書いたものだ」
と文句を言うと、担当者はニヤッと笑って、「では、ここにサインをしてください」とのこと。指示通りにサインすると、やおら登録してあるサインの記録を出して、
「これ、同じサインに見えますか?」との仰せに、見てみると・・・、
「ありっ!?・・・」
そこには、全く(と思える程に)違うサインがありました。
当初、慣れていない内に登録したサインと、その後毎日千回を自署した結果、こなれて流暢に書かれたサインとは全く違ったモノになっていたのです。
担当者曰く(サイン慣れしていない日本人赴任者には)良くあることだと、慰めて(?)くれましたが、「トホホ・・・」でありました。
ということで、このサインキットなるもの。初めて海外へ赴任する人にとってはイイかも・・・と思えました。
「ちゃんと個人が識別(区別)され、他人からは真似されにくく、海外でも通用し、しかも見栄えがして(カッコイイ)、そして何よりスピーディーに書き易い(例え何百枚の書類へのサインでも)」のであれば。
そうしたサインを作ってもらえるなら、自分のサイン(の“完成”まで)に苦労した経験からすると、大いに助かると思います。但し、果して価格がリーズナブルか、またどれ程のニーズがあるか(商売/商品として成り立つのか)は分りませんが。
【追記】
日常業務でのサインで重宝したのは、太字のクロス(CROSS)のボールペンでした。太字の方がサインは見栄えが良く(上手く)見えます(手紙などの日本語は、むしろ細字の方がキレイに見えますが)。
「そうか、そのために太字のボールペンて必要なんだ!」と納得した次第。帰任時に、替え芯を含め、何本も業務用にCROSSのボールペン(グレーより黒のボディーの方が好み)を買って持って来ましたが、日本では全く使われず・・・。
苦労の結果、個人的には結構“カッコイイ”サインが出来上がったと自負しています。
最近では、暗証番号入力の店舗も増えましたが、店によっては、カード支払いでサインしても、下手をするとカードの裏面のサインと照合すらしない店もありますから、「オイオイ、大丈夫かよ」と不安を覚えます(当時、海外ではどんな店でも必ず照合をしていましたから)。