カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 春の時期、田んぼの土手や畔などに雑草に交じってたくさんの野蒜(ノビル)が生えています。
松本地方(少なくとも我が家周辺)では「ネンボロ」と呼んでいます。家内の生まれ育った諏訪地方では「ネンビル」と呼んでいたとか。この方が野蒜に近い感じでしょうか。いずれにしても、日本中で生育し、古事記や万葉集にも登場するなど、古くから親しまれてきたネギ属の野草です。
そう言えば、最近読んだ「みをつくし料理帖」でも、「にゅうめん(入麺)」に載せる具材で、関西のネギ(青葱)と違って、江戸のネギは白い部分が多く(根深)、白髪ネギが白い麺とでは寒々しくて色味が合わないと思案する澪に、種市が「それなら野蒜を使ったらどうだい。野蒜なら野っ原にいくらでも生えてからよぅ!」と薦める件(くだり)がありました。
アサツキのような葉(茎?)は勿論、小さな玉葱のような根(鱗茎)も食べられますが、飽食の時代と言われて久しいので、最近の子供たちは食べたことも無いのかもしれませんね。少なくと、我が家の娘たちは無いと思います。
私が小さかった頃は、良く刻んでご飯に掛けて食べましたし、また祖母がヌタにして、祖父や父の晩酌の肴になっていました。
一年中見掛けますが、5月も中旬を過ぎると小さなネギ坊主のような花茎が伸びてきて、アサツキのような部分が強(こわ)くなるので、食用にする場合は春先の方が向いています。

 そんな子供の頃の記憶に刺激されるのか、年に一度、この時期になると無性に食べたくなり、週末のナナの散歩の途中(チロルは足腰も弱ったので、今では我が家周辺の散歩のみ)で5本ほど摘んで来て、夕食時に刻んで醤油を掛けてご飯に載せただけの“ぶっかけ飯”で食べました。ポン酢でも試してみましたが、やはりシンプルに醤油の方が良く合います(お好みで花鰹を加えて)。
私にとっては、懐かしくも野趣満点の“春の味”です。春の元気を、人間が分けていただいています。鱗茎は、夜エシャレットの様に生で味噌を付けて。これも、冷酒に良く合いました。今度食べたくなるのは、また来春でしょうか。
(美味しそうに見えないのは、写真のせいです)