カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
3月16日。朝暗い内にチロルとナナの散歩を済ませ、京都市交響楽団の東京公演を聴くために、日帰りで6時台の高速バスに乗り新宿へ向かいました。
奥さまは午前中別件があるので、私は一人上野へ。
東京都美術館で、ちょうど日本美術院再興100年を記念した特別展が開かれていて、3月1日からの後期展示で、教科書でもお馴染みの狩野芳崖「悲母観音」(東京藝大所蔵の重要文化財)などが公開されています。
1月25日から開催されている「世紀の日本画」と題された特別展。
前後期入れ替えで、3月1日から4月1日までの後期展示の中で、岡倉天心や盟友橋本雅邦と共に東京美術学校開設に尽力しながら、開校前に亡くなった狩野芳崖の代表作「悲母観音」が公開されています。
教科書などで見たイメージではもっと大きいのかと思いましたが、それでも高さ2m弱でしょうか。幼子に注ぐ、何とも言えぬ慈愛に満ちた表情。どこかラファエロの聖母子像に通ずる優しさを感じます。完成させて僅か4日後に死去したという、芳崖の絶筆でもあります。
他にも、同じく重要文化財の橋本雅邦「龍虎図屏風」(東京静嘉堂文庫美術館蔵)、横山大観の「無我」(東京国立博物館蔵)と「屈原」(厳島神社蔵)などが後期展示されていました。東京美術学校を追われた恩師岡倉天心に重ねたという「屈原」。嵐の中に前を向いて立つ屈原に、気概と勇気をもらいました。思いの外館内は混んでもおらず、近くから十分に絵を堪能することが出来ました。ただ、日本美術院創設にも関わり、当時、大観、観山、同郷春草と共に、“雅邦門下の四天王”と謳われた西郷孤月の名も作品も全く無かったのが残念でした。
展示の中で一番感動したのは、北海道出身の日本画家という岩橋英遠の「道産子追憶之巻」(北海道立近代美術館蔵)。8面30m近くにも及ぶ大作に圧倒されました。
北海道の大自然の四季の移ろいを、朝昼晩にも併せながら、冬春夏秋冬に掛けての自然と動物、屯田兵などの人の営みを絵巻物のように描いていて、その自然の雄大さと静寂に包まれた描写が実に感動的でした。北の大地に生まれ、そこで四季の日々を過ごして育った人でないと描けない世界でしょうか。そして、北海道でこそ所蔵されるべき作品です。
信州の四季にも通じ、肌で感じられる自然の風景。
真っ白な大地から、早春のコブシや一面のリンゴの白い花。カラマツの若葉、無数の赤とんぼなどなど・・・。まさに息を飲むような圧巻の絵巻でした。いつかまた、北海道で再会する日を念じて・・・。
コンサート前の駆け足での鑑賞でしたが、久し振りの名画の数々に癒されました。最後にもう一度、「悲母観音」と「屈原」を拝観し、その優しさと強さを脳裏にしっかりと刻み込み、何とも満ち足りた気分で上野の森を後にしました。
それにしても、名画鑑賞をしてから名曲鑑賞へ。
田舎との文化“密度”(濃度?)の違い(まだ、市立のハーモニーホールや、芸術館と美術館、更にはJ2山雅のある松本は、地方都市の中では随分恵まれている方かもしれませんが・・・。大事にしないと)とはいえ、いいなぁ都会は・・・。時間とお財布に余裕があれば、ハシゴ出来ちゃいますものね。