カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 2007年に市制100周年を記念して結成された古楽器アンサンブルである、小林道夫氏率いる松本バッハ祝祭アンサンブルの第4回公演が2月11日にマチネで行われました。しかも今年は、J.S.バッハの最高傑作とも云われる大作「ロ短調ミサ曲」の全曲演奏会。私は、初回の「管弦楽組曲」を除き、「ブランデンブルク協奏曲」、「フーガの技法」のそれぞれ全曲演奏会に続いて、今回で3回目の演奏会になります。
 この日は、先週の講演を用事で聞けなかった奥様も一緒にハーモニーホール(松本市音楽文化ホール。略称“音文”)へ。8日の大雪の影響もふまえ、早めに家を出ましたが、その雪の影響か、或いは些か近寄りがたいバッハの宗教曲というイメージのためか、両端に少し空席があったのが残念でした。
キリエ、グローリアが前半(拍手は無くても良いのでは・・・?)。休憩をはさみ、ニカイア信条(クレド)以降が後半。演奏中、歌詞が難解なラテン語の典礼文ゆえ、磯山先生の訳詞がステージ向かって右側の壁にプロジェクターで投影されていました(追記)。

 今回は指揮に専念された小林道夫氏率いる松本バッハ祝祭アンサンブルは、常設ではなく臨時オーケストラですが、東京芸大(バッハカンタータクラブ)のOBを中心に、今回はBCJなどでも活躍する古楽器奏者26名で編成され、コンサートマスターは長野市出身の才能教育で学んだバロックバイオリンの第一人者と云われる桐山建志さん。音文事務局によれば、今回の編成も彼を中心に選抜された由。また、磯山先生同様に早朝のNHK‐FM「古楽の楽しみ」でお馴染みの大塚直哉さんが今回オルガンを担当されましたが、大塚さんは確か年末恒例の“藝大メサイア”では指揮もされた筈。
 合唱は、各アリアの独唱者9名を含めた(コンチェルティスト方式)27名で構成。サンクトゥスが6声、オザンナから最後は8声という難曲ですが、さすがはプロの声楽家の皆さん。人数以上の声量で、見事な合唱でした。それにしてもオーボエ・ダモーレなどのバロックの木管の柔らかな響きと、如何にも演奏が難しそうな、バルブの無いトランペットやホルンのバロックの金管楽器の輝くような響きが印象的。
また、アニュスデイ(神の子羊)に代表されるアリアや各合唱も荘厳且つ透明な響きで、合唱曲では子音が礼拝堂内の残響のように残る終わり方も効果的。
北アルプスと大きなヒマラヤ杉に囲まれて、ヨーロッパの教会の尖塔を思わせるハーモニーホールの佇まいと音響はミサ曲に相応しく、敬虔な祈りに満ちた感動的な演奏でした。全27曲、2時間の演奏があっという間で、クリスチャンならずとも途中何度も目頭が熱くなりました。臨時編成とはいえ、この素晴らしい「ロ短調ミサ」が一回限りとは・・・。何とも勿体ないほどの素晴らしい演奏でした。

 演奏終了後、暫し静寂に包まれて、指揮者の手がおろされ客席に振り向くまで拍手が起きず、そして静かに、やがて盛大な拍手に包まれたのもミサ曲演奏会らしくて良かったと思います。
客席からはブラヴォーの声も掛かる中で、後ろから「グローリア」という声も掛かりましたが、ベートーヴェンの“ミサソレ”を歌ったり、レクイエムの演奏会を聴いたりした中で、今まで「グローリア」という掛け声は聞いたこともない初めての経験でした。もしかすると、J.S.バッハが宗教曲の最後に必ず記したという“Soli Deo gloria”「神のみに栄光あれ」というサインと何か関係があるのかとも思いましたが?・・・(磯山先生にお聞きしたところ、先生も過去に聞かれた経験が無いとのことでした)。

 鳴り止まぬ拍手にカーテンコールが何度も繰り返され、最後一礼されて袖に下がる団員の皆さん。合唱団の最後のお一人が退出されるまで、ずっと暖かな拍手が続いていました。私事ながら、四十九日の法要が終わったばかりということも手伝い、本当に心洗われたコンサートでした。松本でこんな素敵なバッハが聴けるなんて・・・。関係された皆さんに深謝でありました。  
【追記】
歌唱に沿って投影されたミサの訳詞。行きつ戻りつしながら何度も同じ歌詞が繰り返されますので、曲の進行(スコア)を知らないと大変ですが、都度しっかりと切り替えられていました(掲載した開演前のステージ写真の右の側壁に、縦書きで「バッハ ロ短調ミサ」と投影されているのが見えます)。
後で分ったこと。歌詞投影は急遽決まったたらしく、準備が間に合わずぶっつけ本番となったため、何と訳された磯山先生がホール後方の最上部の小部屋に周囲の反対を押し切って梯子を昇られて、ご自身でPC操作をされていたのだとか。そりゃあ、完璧の筈です。
レクチャーの時に、「私も、演奏会当日は聴きに参ります」とは仰っておられましたが、まさか裏方までされて天井部屋で聴かれていたとは。いやはや何ともご苦労さまでした。

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