カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 1月21日の朝刊に、二人の方の訃報が掲載されていました。
一人はクラウディオ・アバド。言わずと知れた世界の巨匠。帝王カラヤンの後の首席を託されて、機能的で民主的なオケに変貌させたBPOを始め、演奏者と聴衆双方から敬愛されたという名指揮者。
昨年ルツェルン祝祭管を率いて来日する予定が、体調不良でキャンセルされていました。病を患っていたとはいえ、まだ80歳でした。大好きなモーツァルトの20番で、彼が若い頃にVPOを振ってグルダと協演した録音は、何枚も持っている中での我が愛聴盤です。
       
 そして、もうひと方は詩人の吉野弘さん。これまで、本ブログの中でも「夕焼け」(第506話)や「祝婚歌」(第631話)を取り上げていました。父と同じ87歳だったとのこと。
思えば、高校時代初めて歌った合唱曲が高田三郎作曲の「心の四季」。この時は抜粋でしたが、大学時代に全曲を演奏会で歌い、その中で一番惹かれた詩が終曲の「真昼の星」でした。

   『真昼の星』  吉野弘     
 
  ひかえめな 素朴な星は
  真昼の空の 遥かな奥に
  きらめいている
  目立たぬように―

  はにかみがちな 綺麗な心が
  ほのかな光を 見せまいとしてとして
  明るい日向を
  包むように―

  かがやきを包もうとする星たちは
  真昼の空の 遥かな奥に
  きらめいている
                       ひそやかに 静かに―

 山形県酒田出身の吉野さん。東北人らしいと言えば語弊があるかもしれませんが、「真昼の星」に代表されるような控えめな優しさと、「夕焼け」に詠んだような、とりわけ敗者や弱者への限りなく優しい眼差しが好きでした。
乾いた大地に染み込む雨の如く、当時の、時に揺れ動く若者の心を優しく潤してくれた詩の数々・・・。ありがとうございました。
謹んでご冥福をお祈りいたします。 ― 合掌

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