カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
学生時代に生まれて初めて買ったLPがチャイコの5番で、彼の6曲の交響曲の中で一番好きな曲。学生時代はお金も無く、もし生を聴くくらいなら、その分でLPを何枚か買っていました(唯一の例外が、ノイマン指揮チェコ・フィル京都公演)。
シンガポールに赴任して、地元のシンガポール交響楽団(SSO。旧東欧圏や中国からの移民団員が多く、当時も日本の中堅プロオケに十分比肩しうる水準)の定期を、当時S席でも1000円くらいでした(S$15)ので、毎月のように聴きに行きました(しかも欧米流に夜8時開演で、オフィスから歩いて行けました)が、この5番は生で聴く機会が無く、初めて聴いたのが一昨年の佐渡裕指揮DSO(第549話)。そして、5番好きを知って娘がプレゼントしてくれた昨年のロジェヴェン指揮読響(第671話)。
先日、念願の十束さん指揮でのチャイコフスキー(4番ですが)の快演を聴いたばかり(第792話)ですし、もうチャイコフスキーは十分かな・・・と思っていたら、今回家内の知り合いの方から、「頂いたチケットですが、良かったらどうぞ」と譲って頂いたのが、11月9日のマチネでの長野市の県文(ホクト文化ホール)開館30周年記念としての、飯森範親指揮東京交響楽団特別演奏会。これが“オール・チャイコフスキー・プロ”で、メインがまた5番。有り難く聴かせていただくことにしました。芸術の秋の、思いがけないサプライズです。
しかし、こんなこともあるんですね。今一番生で聞きたいのはマーラーの1番(巨人)ですが、そんなことを言ったらバチが当たります。他に、ヴァイオリン協奏曲も(記念演奏会に相応しく、ソロは地元長野市出身の湯本亜美嬢とか)。東響正指揮者の飯森範親さん。生で聴くのは初めてですが、あの「のだめ」の千秋の指揮のトレーナーの筈。因みに東響は、先日のミューザ川崎がフランチャイズ。
開館30周年という長野県県民文化会館(ネーミングライツによりホクト文化ホール)は、若里公園にある最初の県立ホール(他に、伊那と松本)。広々した公園の木々も色付き、申し分の無い環境の中に、大中小の多目的ホールを持つ堂々たる建物。大ホールは、2173席とか(松本の県文は2000席ですが、同じ県立なのでホールの雰囲気は良く似ています)。
指揮者のプレトークから始まり、歌劇「エフゲニー・オネーギン」からポロネーズ、ヴァイオリン協奏曲。休憩を挟み、交響曲第5番というプログラムで、会場はほほ満席のようです。
湯本さんは、長野市出身の25歳。高校時代に日本音楽コンクール最年少第3位で、芸大を出て現在ドイツに留学中とか。地元での演奏のせいか、最初は緊張気味でしたが、音程のしっかりした伸びやかな音で、オケに挑むような気迫に満ちた演奏でした。もう少し柔らかさが出て来るとイイでしょうね。きっとVn.コンチェルトの大曲に集中した結果なのでしょう、せっかくの凱旋公演なのに、残念ながらアンコールはありませんでした。席の周囲の一群が休憩で居なくなりましたが、きっと応援に来られていたお知り合いの方々が楽屋に激励に行かれたのでしょう。
メインの交響曲第5番。第1・2楽章と第3・4楽章をそれぞれ続けて演奏された飯盛さんの指揮振りは、ゆったりと入りながらアッチェランドを効かせて、という感じの、かなりアゴーギクを強調した演奏。
東響の管楽器群は素晴らしく、第2楽章でのホルン・ソロも見事でしたし、特に第4楽章のコーダはまさにブラスの咆哮。ただ、ホールの音響や聴いた席の場所にも因るのかもしれませんが、管楽器に比べて弦楽器が負けていて(管楽器はソロでも手に取るように近くで鳴っているのに、弦はステージ上で篭って鳴っている感じで響いて来ない)、ややバランスを欠いた演奏でした。
最近はあまり耳にしませんが、「女性奏者が多いとパワーが無い」。第1Vn.は11名中7名、Va.に至っては10名中9名が女性奏者。最近では他にも女性が多いオケもありますが、この日に限っては久々にそんなことを思い出した次第。
演奏終了後はブラヴォーが掛かり、カーテンコールが繰り返された後のアンコールは、長野での記念公演に相応しく、県歌「信濃の国」。客席からは自然と手拍子もおきました。カーテンコールでは、きっと編曲者なのでしょう、第二ヴァイオリン奏者の女性の方を指揮者が立たせ、満場の拍手を受けられていました。
地元紙の報道に拠れば、県文の開館30周年記念行事として、キッズコンサートを定期的に開いている東響らしく(多分N響だったら、頼まれたってやらないでしょ!?)、前日も東北信地方の小学生を対象にした名曲コンサートや、団員の方々が各小学校を訪問して「楽器クリニック」なども行って指導いただいた由。プレトークで飯盛さんが、昨夜はオケのメンバーとフットサルでリフレッシュして来たと仰っていましたが、前日から長野に滞在されていたようで、大変お疲れ様でした。
SKFでも毎年小中学生を対象にして、小澤征爾音楽塾オーケストラによるオペラ(フンパーディンク「ヘンゼルとグレーテル」)や、今年は十束尚宏さん指揮での第九演奏会を松本だけではなくここ県文長野でも開催していましたが、今の県下の子供たちは幸せですね。都会でなくても、小学生の頃から生のオーケストラ演奏に触れられるのですから。いずれにしても、ありがたいことです。
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