カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 居酒屋に関する我がバイブルとも言える、『ニッポン居酒屋放浪記』(第505話他参照)の著者は、松本市出身の居酒屋評論家(本業はグラフィックデザイナー)の太田和彦氏。高校の大先輩でもあります。
その太田さんが出演されている『ふらり旅~いい酒、いい肴~』(第742話参照)という番組が、この4月からBS11で放送されています。
初回が倉敷、2回目が尾道と、瀬戸内地方から始まり、その後小田原、鎌倉、松山、高知、会津若松などが放送され、第10回目となる8月13日に松本が登場しました。 “塩イカに望郷つのり”と題して故郷松本を取り上げた「居酒屋放浪記 立志編」での「まさか塩イカじゃなぁ・・・」などと思いつつ、当日楽しみに放送を拝見しました。

 “豊饒なる山の恵みを味わう”と題し、本の内容同様に、松本城や、母校深志高校などと共に、城下町に残る狭い路地や蔵作りの建物などの街並みを紹介されながら、日が落ちてから今回訪問されたのは、本でも取り上げられていた割烹「きく蔵」と最近の“バーの街松本”を代表する「メインバー・コート」でした。
 「昔は、理屈っぽいだけの故郷信州がイヤでイヤでしょうが無かったんですが・・・」と、前置きで言われた大田さんの気持ちも、この年になると良く分かる気もします(多分勝手に想像するに、若者の真っすぐな意見をすぐに屁理屈で否定したがる、という意味ではないかと思います)。
また、「SKFや串田和美さん、平成中村座のお陰で松本が魅力的な街になった」とも仰っておられましたが、そこの私自身の見解は些か趣を異にします(これも、理屈っぽいと言われればそれまでですが・・・)。
嘗て、井伏鱒二が『信州では、山の中の馬子でも、馬を曳きながら中央公論を読んでいる』と揶揄したように多少理屈っぽくも、(公権力ではなく、住民からの寄付を集めて)市民が建てた開智学校や市民が守った天守閣など、昔から進取の精神のある松本だからこそ、民芸運動も、旧制高校も、スズキメソードもこの地に根付き育まれ、その結果文化的な香りがする田舎町が醸成されたのではないでしょうか。そして、その下地があったからこその、ボランティアに支えられるSKFや一般市民も参加した平成中村座であろうと思います。
しかし、外から故郷松本を見ると、しかもデザイナーという芸術家(謂わばプロデューサー)である太田さんの視点(仕掛け人の重要性)からはそう見えるのかもしれませんが・・・。
 太田さんが、嘗て「松本には塩イカしかない」と口では卑下しながらも、行間に見え隠れする「好きでたまらない」と想えた「居酒屋放浪記」での記述同様に、番組でも「故郷松本の良さをどう伝えようかと、いつも以上に緊張しますね」と照れくさそうにぼそっと言われていたのが、「あぁ、やっぱりこの人も、結局は松本が大好きな信州人なんだなぁ・・・」と、地元民ならではの感想(というよりも感慨?)を持ちました。

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