カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 上京するため朝慌しくてiPodを忘れ、留守録音も出来ず、聴けなかった7月21日放送のNHK-FM「きらクラ」。
翌月曜朝の通勤時に、再放送を小一時間だけ車の中で聞くことができました。この日のお目当ては、ゲストのピアニスト小菅優さん。
内田光子以来日本人で二人目となるリサイタルを、2006年のザルツブルグ音楽祭の本番で行い、2010年同音楽祭ではヘレヴェッへ指揮カメラータ・ザルツブルグの演奏会に(それも、あのイーヴォ・ポゴレリチの)急遽代役として協演し現地で絶賛を浴びたという注目の若手ピアニスト。何年か前にはSKFへも出演している筈です。

 昨秋のカメラータ・ザルツブルグ日本公演でのソリスト(モーツァルトのピアノ協奏曲後半8曲を連続演奏)も務めたのですが、残念ながら松本公演には地元縁の演奏家登場で、彼女は同行しませんでした。

 ふかわさんと、ザルツブルグ留学時以来の友人という遠藤さんとのやり取りを聞きながら、一語一語択ぶように考えて話す小菅さんの誠実な人柄に惹かれつつ、最初に流れた彼女のCDからのベートーヴェンのピアノソナタ第14番「月光」第3楽章。
最初の、ジャ、ジャーンという和音に、まるで雷に打たれたような感じで、何故か涙が込み上げてきました。
その後も、何とも形容できない演奏に、視界が曇り、慌ててメガネを外して涙を拭いながら運転を続けました。
演奏が終わり、溜息をつきながら「これまで“月光”は色んな演奏家で聴いていますが、素人が偉そうな言い方で失礼ですが・・・」と前置きをされての「凄いです!」と言ったふかわさんの感想が、個人的にも、まさに正鵠を得ていたように思います。

 「一体何なんだろう?・・・。」
これまで、日本やシンガポールでも、ミッシェル・ベロフやダン・タイ・ソンを始め著名ピアニストの生演奏を、そしてLPやCDでもリヒテルやルビンシュタイン、ホロヴィッツ、バックハウス(古い人ばかりですが)、そしてグルダや内田光子、ペライア(3人共全てモーツアルトの20番)などの有名ピアニストの演奏も聴いている筈ですが、感動はしても、こんな感覚は、恐らくシンガポールで聴いたロシア人女流ピアニスト(お名前失念)のアンコール曲の演奏以来。

 上手く説明できないのですが、巨匠然とした訳でもなく、超絶技巧に感嘆した訳でもなく、でも痛い程の曲への彼女の一途な想いが込められた、その一音一音に魂が揺さぶられるほどに感動した、とでも表現すれば良いのでしょうか?・・・。

 僅か10歳の“女の子”が自らの意志でドイツに留学し、コンクール優勝暦という肩書きも無しに、現地での地道な演奏会活動を通じて日本よりも先ず欧州で認められ、まだ弱冠30歳という若さながら、何とも凄いピアニストがいるんだなぁ!・・・と、暫し感嘆符が頭の中から消えませんでした。機会があれば、生演奏をいつか絶対に聴いてみたい、そんなピアニストのお一人です(他に聞いてみたいのは、上原彩子・菊池洋子さん。このお三方、日本人の若手女流ピアニストの“三羽烏”でしょうか?後は、やはりドイツを拠点とする河村尚子さん、そしてもう一人、FMでリサイタルを聴いた小林愛美さんの将来に興味津々・・・。こうして見ると、女性が元気ですね)。
 ・・・ということで、全くの偶然ながら、何と来月(9月21日マチネー)、家内の実家のある茅野市の茅野市民館にリサイタルで小菅優さんが登場します。それも彼女が今一番惹かれているというベートーヴェンの、「悲愴」と「熱情」にシューマンの「幻想曲」というプログラム。“作曲家の心と出逢うピアノの調べ”と題されたリサイタルですが、「きらクラ」の放送を聴いて、まさにそんな気がしました。僅か300席のホールでという、何とも贅沢なコンサートを(家内の実家へも久し振りの挨拶がてら)聴きに行く予定です。

【追記】
“ムジカ・タテシナVol.6”と題された今回の小菅優リサイタル。
地域のプロモーター名か茅野市民館のコンサート企画名かどうか分かりませんが、これまでにも、僅か年1回?程度とはいえ、同じく若手実力派ピアニストの上原彩子(ピアノ分門での、女性初、且つ日本人初のチャイコフスキー・コンクール優勝者)、ギタリストの鈴木大介、(バロック)フルートの有田正広など、蓼科の別荘族を抱える茅野市ではありますが、ハーモニーホール(音文)とも共通するような結構唸らされる(≒玄人受けしそうな)コンサートを主催していました。たった300席のホールなのにと、感心しました。

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