カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 12月14日と15日。ザ・ハーモニーホール(松本市音楽文化ホール。略称音文)の小ホールにて、二夜連続でバッハの『無伴奏チェロ組曲全曲演奏会』が開かれました。昔から大好きな曲ですので、何としても生で聴きたくてチケットを購入し、満を持して出掛けました。
 二夜の組み合わせは、初日が1・4・5番、二日目が2・3・6番。ソリストは、ジャン=ギアン・ケラス。カナダ出身のフランス人の人気チェリスト。音文には、彼の率いるアルカン・カルテットで過去2回来演しているのだそうです。しかも、今回は改修中の大ホールが使えないため、僅か190席の小ホールという、聴く側からすれば本当に申し訳ないような何とも贅沢なコンサートです。音文の事務局の方によれば、彼もこんな小さなホールで演奏するのは初めてだと言っていたそうですが、そうでしょうね。恐縮です。

 二夜共、さすがに完売だったそうです。
静寂の中に組曲第一番の耳に馴染んだプレリュードが流れて・・・。途中何の電気信号も介さず空気の振動だけで、本当に生で聴いているんだと思うと目頭が熱くなるような気がしました。
その感慨だけで個人的にはもう充分で、演奏自体のことをとやかく言う必要はないと思いますが、初日よりも二日目の方が遥かに良かったと思います。
初日は繊細でナイーブなバッハではありましたが、淡々と弾いているようで、「生の無伴奏チェロ組曲を聴いた」という感想。むしろ、弾き慣れたであろうアンコール曲の方が良かったと感じました。どちらかと言えば、大好きなマイスキーの“浪花節”的なバッハではなく、エスプリの効いたフルニエ風のバッハでしょうか。
ところが二日目は、何故か音量も別人のように大きく聞こえ、朗々と鳴るチェロは、特に最後の第6番のメロディアスなフレーズなど歌心も十分で、たった190人の聴衆ですが大きな拍手に包まれ、前夜よりも多かったカーテンコールにもそれが表れていたように思います。キレや勢いもあり、また力強さも感じられて実に感動的な演奏でした。ギアン・ケラスは、正に貴公子然としていて、これなら女性ファンも多いのだろうと思われます。事実、“追っかけ”のファンの方なのか、後ろから「王子ホールでも聴いたんですけど・・・」と話す声が聞こえてきました。

 因みにアンコール曲は、初日がクルターグ作曲「信仰」とデュポール作曲「練習曲第7番」。二日目は、クルターグ「影」とピアッティ作曲「カプリース第7番」。メモを見ながら、たどたどしくも日本語で曲目を紹介する姿勢に好感を持ちました。

 どうしても生で聴きたかった、念願のバッハの無伴奏チェロ組曲全曲を実際に聴くことが出来て、特に感動的な第二夜の演奏に大満足の演奏会でした。その夜唯一欠けていたもの。それは、片手のグラスでしょうか・・・。      

 一足早い、素敵なXマスプレゼントになりました。