カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
春の番組改編に伴い、実に32年続いたという長寿番組『N響アワー』(NHK-Eテレ)が、3月末を以って静かにその幕を下ろしました。
記憶では、作曲家だった芥川也寸志さんの穏やかで知的な進行振りが個人的には一番好きでした。盟友でもあった黛敏郎さんの「題名の無い音楽会」での、ある種攻撃的な知的さとは対照的でもありました。
赴任時代とも少し重なりますが、中村紘子さんも司会をされていたとはあまり認識がありませんでした。
また、アナウンサーでは何と言っても後藤美代子さんでしょうか。その上品で知的な語り口は、「N響アワー」のみならずNHKのクラシック番組の顔であり“声”でもありました・・・と勝手にそう思っています。
最近でこそ大都市以外の地方にもプロオーケストラが増えましたが、ここ信州ではフル編成のオーケストラを生で聴くことが出来る機会は少なく、その意味で地方にいるクラシック音楽ファンにとっては、TVでその演奏に触れることの出来る唯一の定期番組でした。でも、やっぱり人気(視聴率)は無かったのでしょうね。
32年間が、3月の18、25日のたった2週で簡単に終わってしまった総集編を、しっかり録画もしてじっくりと見ました。
戦前、前身の新交響楽団の頃から、ローゼンストックに鍛えられたNHK交響楽団。昔懐かしいマタチッチおじさん、そしてどうしても「PLUTO」を連想してしまうホルストシュタインやスマートなサヴァリッシュなど往年の名指者の演奏を少しだけですが触れてみると、知識としては知っていたつもりでしたが、昔のN響って本当にドイツのオケを髣髴とさせるような重厚な響きだったんですね。とりわけ日本で愛されたマタチッチのブルックナー8番は終楽章の後半部分だけでしたが、派手なアクションも無いのに正に魂が揺さぶられるような演奏でした。ただ残念だったのは、スイトナーおじさんが「運命」の冒頭の比較でしか登場しなかったこと。彼のモーツァルトも聴きたかったなぁ。
マンネリ気味だったサウンドに輝きを与えたのは、確かにデュトワさんの功績大だとは思いますが、古い“3B”で育った世代としては、それはそれで懐かしくもありました。
そのサウンドを今も思い出させてくれるブロムシュテットおじさん。穏やかな笑顔とお歳を感じさせない瑞々しい音楽で、大好きだという日本の聴衆の前にいつまでも立って欲しいものです。
そして、総集編の最後は、リクエストが最も多かったというスヴェトラーノフのチャイコの5番からの第4楽章。彼の指揮振りを映像でも見るのは初めてでしたが、指揮棒を持たず、N響からロシア音楽の響きを正に掴み出すような迫力。いつものN響とは違う、重々しいロシアの響きが確かにそこにありました。意図した通りの演奏に満足したのか、金管の“運命の動機”のファンファーレの後を引き継いだ弦楽合奏では指揮をせず、暫くオケの自走(奏?)に任せていたのがとても印象的でした。
さて、こうなると、あとは毎週日曜日の朝6時からのBS-プレミアムでの「特選オーケストラ・ライブ」しか定期放送が無くなってしまいました。でも、早すぎて大音量で聴けないのが玉に瑕。
その週のクラシック番組を紹介してくれて重宝していた「クラシックガイド」も終わっちゃったしなぁ。「自分で、ネットでチェックしろ!」ってことなんでしょうかね。
少子高齢化の時代。バラエティ番組など若者向けの番組よりも、お年寄り向きの番組を作ったほうが、これからの視聴者人口は遥かに多い筈なんですが?・・・ネ!
さて、4月から始まった後番組の「らららクラシック」。
それなりに興味深い内容もあるのですが、番組中の演奏は、最近流行りの聞かせ所だけのエッセンスを集めたイイトコ取りのCDのようで、まだスタートしたばかりではありますが、何となくつまみ食いだけで満腹感が得られないのが残念です。
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