カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 土曜日に色々と家の仕事をし、予報よりも早く朝から生憎の雨模様となった10月最後の日曜日。早々に農作業は諦めて、妹夫婦に薦められた木曽開田高原入り口(新開地籍)の評判のお蕎麦屋さんという『時香忘』(ジコボウ)へ行ってみることにしました。

 この「時香忘」は、飯山富倉集落が有名なオヤマボクチというヤマゴボウに似たキク科の山野草の葉脈を繋ぎに使った蕎麦で評判の店。2003年に開業し、木曽の山の中にありながら、評判が評判を呼んで行列が絶えないという人気店です。

 松本からですと、木曽へは中央道経由で伊那谷から中央アルプスを貫く権兵衛トンネルを抜けて行くのが時間距離は一番早いと思いますが、雨で一日空いたので、生憎の天気ではありますが、ゆっくりと紅葉の木曽路を走って行くことにしました。
我が家からは、奈良井川の堤防道路を走り、郷原、洗馬(せば)、本山(そば切り発祥の地)と宿場の風情の残る北国西街道(善光寺街道)から中山道へと至る旧街道を通って本山で19号へ合流するのが国道の渋滞を避けてのコースになります(一般道検索では、国道19号での所要時間予想2時間半が、休憩時間を除いて結果1時間半でした)。

 途中道の駅で休憩し、贄川、奈良井、日義と色付きの増した木曽路をゆっくりと走って、開田高原には11時前に到着しました。昔父と来た時は、木曽福島からはすれ違うのがやっとの狭い山岳路だったのが、拡張整備されて登坂車線も用意された快適な道路になっていました。
残念ながら霊峰御岳は雨雲の中。白樺林が黄色く紅葉していて、まさに高原の秋。ところが、開田高原周辺にはそれらしき店は見当たらず、妹からもらった店の小さなパンフレットの電話番号で検索すると、おぉ、ナビにちゃんと登録されているではありませんか。
結果、行過ぎていて目指す場所はるかに手前(もし新地蔵トンネルまで来たら行き過ぎです)。戻ること5㎞。到着が11:15。11時開店の筈ですが、駐車場には県外車がずらりと並び、店内も既に満席で名前を書いての順番待ち。幸い我々はまだ早かったので、15分待ち程度で座ることが出来ました。(お店の話だと、五月連休やこの紅葉の時期などの行楽シーズンを除けば、混み具合はそれ程でもないとのこと)

 時香忘のある場所は、木曽川支流の黒川沿い。
361号線の道沿いの清流と木立に囲まれた谷間(あい)に、お蕎麦屋さんとは思えないお洒落な山小屋風の片屋根の建物が佇んでいます。
しかも、店内はもっとオシャレで、元々はクラフト作家をされていたというご主人の創られた作品のプチギャラリーが設けられ、店内のインテリアや、奥様とお嬢さん方と思われる接客も含めて、むしろ例えば東京広尾にあってもおかしくないフレンチかリストランテと見紛うばかりです(田舎モノは少々落ち着きませんが、家内は気に入った様子)。座席数はカウンターと大小4卓での、合わせて28席。
 注文は、お目当てのオヤマボクチのもり蕎麦の普通盛り(1250円)と大盛り(+315円)。そして、珍しい焼きそばがき。焼き海苔を巻いて、醤油を付けていただきます。待つ間の蕎麦茶も香ばしくて美味。
パスタのように煉り込まず、茹でた蕎麦をイカ墨で和えるというイカスミ蕎麦には興味津々(次回のお楽しみ)。また、オヤマボクチは有名な富倉だけではなく、家内の知り合いの方(奈川のご出身)のお話では、奈川などの御岳山麓でも、小麦が栽培出来ない土地では昔から行なわれてきた製法とか。
そばの薬味には、刻みネギと生山葵をおろし金でその場で卸していただきます(松本の老舗「こばやし」が同様です)。江戸前ほど辛くはなく、信州ほど甘くもないソバツユも、たっぷりと供されます。
飯山に行った時に食べられなかったオヤマボクチを繋ぎに使った蕎麦は、驚くほどモチモチとした食感で独特のツルっとした喉越し。しかもこの時期ならではの新そばの香りが引き立ちます。少し粗引き気味でざらざらした粉が、却って蕎麦に香りと透明感を出しているのかもしれません。確かに旨い。
ご主人は、脱サラで名古屋からこちらに移住されて、地元の人に教えてもらいながら独学で修行をされたのだとか。
一枚1250円は高く感じるかもしれませんが、普通盛りでも量はかなりのボリューム(熊笹を敷いたザルの上に盛り付けられていて、まるでケーキのモンブランの様です。写真は大盛り)で、他の蕎麦屋さんの2枚分(例えば、翁だといつも2枚頼んで1500円です)ちかくあり、二人ともお腹一杯になりましたのでリーズナブルだと思いました。
そば湯もどろどろしていて、わざわざ蕎麦粉を溶いて別に作っているのだとか(松本のC Cubeが同様です)。どれもこれも店主の拘りが感じられます。しかも、オヤマボクチの採取量が減少していて、将来をふまえて山ブドウや或る木の樹皮なども繋ぎに使えるか試行錯誤で研究しているのだとか。

 時香忘は、安曇野・翁とはある意味対極的ですが、店の雰囲気も含め県外からのお客様をお連れするには良いかもしれません。信州らしい渓流沿いの木立の中と片や北アルプスの眺望と・・・。どちらが良いか迷うところです。(もし遠出せずに松本市内だったら、接客には野麦か佐々木辺りでしょうか?今度三城を試してみたいと思います)

 驚いたことに、出る頃はさらに順番待ちの人が増え、ちょうど昼時の12時だというのに、来たばかりのお客さんはナント90分待ちとのこと。
いやはや、たかが蕎麦、されど・・・。ウーン、時香忘恐るべし。
 帰路、もう一軒木曽福島の老舗のお蕎麦屋さん「くるまや」本店(高校時代に木曽福島出身の友人に連れて行ってもらって食べた蕎麦は旨かった!)に寄って食べ比べて行こうかと思いましたが、お腹も一杯ですし、時香忘の余韻を消さぬようにと今回は断念。
せっかく木曽路に来たので、“漆器の街”木曽平沢の「木曽くらしの工芸館」に立ち寄り、来客用に漆塗りの箸と箸置きを、それぞれ男女5膳分ずつ買って帰りました。

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